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従軍記者の日記 51

 シャムが身に着けているのは黒い布に赤と緑の刺繍を施した服とスカート。それにこちらも黒い布と金の刺繍で飾られた帽子の縁からは緑の糸が五月雨のように垂れ下がっている典型的なこの地方の民族衣装だった。こうして見ればシャムはありふれた遼南山岳部族の少女に見えた。

「凄いんだよ!隊長。上からお湯が一杯降ってきて、あっという間にきれいになるの。それにあぶくがでるときれいになる石があって、それで……」 

「あのなあ、言いたいことなら頭でまとめてから言えよ。おい、キーラ。酒保に行ってアンパン二つ持って来いや」 

 それを聞いて敬礼を残し走り去るキーラ。嵯峨は吸いかけのタバコをもみ消して立ち上がる。

「クリスさんも疲れたでしょう。相方も戻ってきたみたいですよ」 

 嵯峨のその言葉に表を見れば、到着したばかりのホバーから兵員が降車しているのが見える。

「シャムはそこで待ってろ。キーラがアンパン持ってくるからな」 

「アンパン?」 

 その言葉にシャムと熊太郎は首をひねった。

「ああ、お前さんはパンも知らないんだろうな。小麦粉は知ってるか?」 

「うん。水で溶かして焼くと美味しいんだよ」 

「何が美味しいんですか?」 

 そう言いながら本部に入ってきたのはハワードだった。彼は目の前のシャムを見つけるといかにも興奮した様子で民族衣装を着た姿にシャッターを切った。シャムは不思議そうにカメラを構えるハワードを見ている。彼の黒い肌、そしてクリスの金色の髪の毛と青い瞳を見て、シャムは納得したように頷いた。

「もしかして外人さん?」 

 シャムの言葉に思わずハワードが噴出した。クリスは嵯峨を見つめる。こちらも腹を抱えて笑いを必死にこらえていた。

「そうだな、外人だな。……ホプキンスさん、外人らしく英語でしゃべってみたらどうですか?」

 そんなことまで言い出す嵯峨に頭を抱えるクリス。

「どうしたのみんな笑って?」 

 キーラはアンパンを持って現れる。そして今度はシャムがキーラを指差した。

「あ!キーラも外人だった!」 

 叫ぶシャムの言葉の意味がわからずに呆然と立ち尽くすキーラ。

「おい、シャム。それ以前にお前は宇宙人なんだぞ、地球の人から見たら」 

 ようやく笑いをこらえることに成功した嵯峨がそう言った。その意味がわからず呆然としているシャムに、キーラはアンパンの袋を二つ手渡した。

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