従軍記者の日記 41
「中佐!弾が切れました!」
柴崎の声が響く、思わず頭に手をやる嵯峨。
「お前、バカスカ撃ち過ぎなんだよ!もっと狙って撃て。御子神、援護しろ!敵さんも疲れてきているはずだ」
嵯峨はようやく捉えた敵の一式を追う。森の色と同じ色の二式が、灰色の一式に火線をあわせた。
「馬鹿!正面から食らわしても無駄だ!動いて側面を取れ!」
嵯峨の言葉に不器用に反応する御子神の二式。
「セニア・ブリフィス!敵機狙撃ポイントを確保しました!」
「よし!喰っちまえ!」
嵯峨の言葉と共に、嵯峨から逃げることで精一杯の一式の背中をロングレンジでのレールガンの火線が貫いた。火に包まれる僚機を見て背を見せて逃げ出す一式。
「追いますか?」
「御子神の。お前の目は飾りか何かか?レーダーを見ろ」
クリスも地図に目を移す。そこには北兼軍以外の所属を示すランプが点滅していた。
「残存戦力?」
クリスの言葉に嵯峨が振り返り笑みを浮かべた。
「ホプキンスさん。共和軍もこの森には手を出していないという報告は受けてるんですよ」
殺気の消えた嵯峨の顔がにやりと笑みを浮かべてクリスの前にあった。
「柴崎!お前が一番近い。確認しろ。それとセニアと御子神はバックアップにまわれ。俺はそのまま距離をとって追走する」
嵯峨の言葉に不承不承従う柴崎。
「どこかの工作部隊ですか?」
「アサルト・モジュールで潜入作戦ですか?アステロイドベルトならいざ知らず、ここは地上ですよ。それに偵察のためだけの俺達の目に触れないでの高高度降下なんて突飛過ぎますよ。上を警戒飛行している東和軍の偵察機や攻撃機もそれほど無能ぞろいじゃないでしょう……」
「うわ!」
嵯峨の言葉が終わらないうちに、柴崎の悲鳴が四式のコックピットに響いた。
「柴崎!」
「御子神焦るな!柴崎、状況を報告しろ!」
地図の上で所属不明機と柴崎の二式が重なっている。嵯峨はすぐさま加速をかけた。
「食いつかれました!この馬鹿力!コックピットを潰す気か!」
森のはずれ、二式が見たことも無い白いアサルト・モジュールに組み付かれている様がクリスの目に飛び込んできた。
「中佐!助けてくだ……うわ!」
柴崎の二式の右腕がねじ切られる。不明機の左手は二色のコックピットの装甲版を打ち破ろうとしていた。
「御子神!組み付け!」
嵯峨はそう言うとさらに白いアサルト・モジュールへと接近した。