従軍記者の日記 39
「ブリフィスの。大丈夫か?」
嵯峨はいきなりセニアへの通信画面を開いた、驚いたような顔をするセニア。
「いきなり通信入れないでください!」
声は驚いているようだったが表情にその面影は無かった。クリスはやはり彼女が作られた存在であることを確認する。
「悪かったねえ。本隊はどうした?」
嵯峨は戦闘中だというのにまたタバコを取り出して口にくわえた。
「本隊は現在拠点予定の村の下にある保養所跡に本部を建設中です」
「そうか、ならいい。敵さんも狙いは良いんだが!」
そう言うと嵯峨はパルスエンジンを全開にして機体を飛び上がらせる。隠密侵攻中であった敵の胡州からの輸入アサルト・モジュール一式は完全に裏をかかれる形になり、レールガンの掃射の煙の中に飲み込まれて火を噴いた。
「隊長!俺達の分も取っといてくださいよ!」
「柴崎。お前なあ、一機でも敵を倒してからその台詞吐けよ!」
地図の上の御子神の機体が敵編隊の左翼に接触したのを示している。嵯峨に気づいた御子神の表情が変わった。それを合図に柴崎とセニアも緊張したような表情を浮かべていた。
「ホプキンスさん。これからちょっと無茶しますんで!」
そう言って着地した嵯峨の四式。一気に一番近い二機の一式への攻撃を開始する。強襲型の装備を積んでいるらしく、ミサイルの雨が降り注いだ。
「それは織り込み済みだ!」
嵯峨は制動をかけると、いったん森の中に引いた。
「火力で押す?それにしてはさっきのミサイルの使用は命取りだったな」
爆炎で見失った嵯峨を確認しようと飛び上がった一式の強襲仕様。しかし、嵯峨のレールガンはそのコックピットに照準をつけていた。
「さよならだ!」
次第に赤みを帯びていく空に閃光が走る。一式のコックピットが貫かれて、そのまま大地に墜落していった。後ろに回り込もうとホバリングして森を走る標準装備の一式。嵯峨はそのままレールガンの銃口を向け、そのわき腹にレールガンを叩き込んだ。一式はエンジンを破壊されて炎に包まれる。
「隊長!支援お願いします!御子神が!」
「セニア、そんなに焦りなさんな。まだ後方に一機動いていないのがいる、それをやれ」
そう指示を出すと、三機の敵機に苦戦している御子神と柴崎の援護に回った。