従軍記者の日記 165
「大丈夫いけるよ!」
クリスの問いに答えずにそう言ってシャムは機体をジャンプさせた。クリスは止めようと手を伸ばしたが、シャムの頭に手が届くこともなかった。シャムのクロームナイトのレールガンは、正確に重装甲ホバーの上面装甲を撃ち抜いていく。
「まだいるよ。今度はおっきいの!」
着地してすぐにシャムは機体を崖の下に進めた。すぐさま彼女が着地した地点に火砲が集中しているのが見える。
「見つけた!」
シャムはかすかに光る森の中の一群に地対地ミサイルを撃ち込んだ。そしてすぐに移動を開始する。崖に沿って続く舗装の壊れかけた道を進んでいたかと思うと、次の瞬間には河原に機体を着地させる。今度は移動する敵からの掃射を浴びるが、そのことは想定しているように対岸の森に機体を進めている。
「アサルト・モジュールだ!」
クリスの声を受けて振り向くシャムは大きく頷いた。
「こっちだってやられてばかりじゃないんだ!」
そう言うとM5の改良型と思われる機体にレールガンを撃ち込む。しかし、敵の動きは早くむなしく火線は森の中に消えていく。
「動きが早い、吉田の手持ち部隊か?」
クリスの言葉を待つまでもなく、シャムは相手の機体の速度に合わせて森の中を抜け、河原を越えて対岸の道路にたどり着く。敵のパイロットもそれを読んでいたようにレールガンを放つが、シャムが微妙に速度を先ほどよりも上げていたのでそれは渓谷の街道の路肩をえぐるだけだった。
「もう一機の気配がするんだけど……」
シャムは周りを見渡す。夜間対応のコックピットのモニターが緑色に染まった周囲の森を浮かび上がらせる。彼女をつけまわしていた機体は河原に降りてシャムを誘っているように見える。シャムはそれに乗せられず、そのままそれを無視して再び対岸を目指した。
「そこ!」
誘いをかけている機体の火線軸上に隠れていたM5の上半身が、シャムの抜き切りのサーベルの一撃で両断された。そのまま炎に包まれる敵から、誘いをかけていた敵機に目を向けるシャム。その姿に怯えたように後退する敵機にシャムはパルスエンジンをふかして急接近した。
「これで終わり!」
そう叫んだシャムの言葉の通り、クロームナイトのサーベルがM5のコックピットに突きたてられた。