従軍記者の日記 161
「邀撃機上がった!三機……まだ増える!」
セニアの声がコックピットに響いた。
「ちょっと揺れるけど我慢してね」
シャムはそう言うとさらに加速をかける。クロームナイトの重力制御コックピットにより、マイルドに緩和されたGがクリスの全身を襲う。
「シャム!そのまま無視して突っ込め!吉田が出てくるはずだ」
セニアの指示に頷くシャム。モニタの中の点のように見えた共和軍のM5が急激に大きくなる。朝焼けの光の中、そのいくつかが火を放った。次の瞬間、振動がクリスを襲う。
「直撃?」
「違うよ!」
そのままシャムは速度を落とすことなく、滞空しているM5をかわして突き進む。
「敵機、さらに五機出てきた!御子神とレム、ルーラはシャムに続け!私と飯岡と明華で先発隊は落とす」
「じゃあ私達は御子神中尉についていきますよ」
指示を出すセニア。その言葉に続いて進む東モスレム三派のシン少尉、ライラ、ジェナン。
「クリスさん。また揺れるよ」
そう言うと同じように五つの豆粒が急激に拡大し、そこから発せられた光の槍をかわすようにしてクロームナイトは進む。クリスはただ敵基地を目指し突き進むシャムの背中を見ながら黙り込んでいた。
「一気に落とすよ!」
シャムはそう言うと再び視界のかなたに現れた五つの点に向けて加速をかける。抜いた熱式サーベルを翳して、そのまま制動をかける。シャムの急激な動きについていけない敵のM5の頭部が、そのサーベルの一撃で砕かれた。
「邪魔しないでよ!」
クロームナイトの左腕に仕込まれたレールガンの一撃が、モニターを失い途方にくれる敵機のコックピットに吸い込まれた。そして爆炎がその後ろからライフルを構える二機目のM5の視界の前に広がった。
「もらうよ!」
シャムは視界にさえぎられて慌てて飛び出した二機目のM5の胴体にサーベルをつきたてる。そしてそのままパルスエンジンでフル加速をかけ、串刺しにされたM5を中心にして一回転した。クロームナイトの背中に張り付いていた敵のM5の大口径レールガンの火線はシャムの機体ではなく、友軍のM5のバックパックに命中して火を噴いた。