表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
157/183

従軍記者の日記 157

「寝付けなかったんですか?」 

 本部に入るクリスの顔を覗き込むようにしてキーラが声をかけてきた。

「君こそ夕べは徹夜だったみたいじゃないか」 

 まだ日は昇らない深夜一時。ハンガーは煌々と明かりが照らされている。

「私達の任務はこれからしばらくは待機ですから。それよりシャムちゃんの後部座席に乗るんじゃないですか?結構あの子、無茶するかもしれませんよ」 

 そう言ってキーラは笑った。本部のビルは出撃前と言うこともあり、引き締まった表情の隊員が行き来している。その中から御子神を先頭にパイロット達が姿を現した。軽く会釈をするだけで、彼らの表情はどこか固まっていた。その最後尾におまけのようについてきたシャム。相変わらずの黒い民族衣装のまま、入り口の隣で彼女を待っていた熊太郎が駆け寄るのをどこかぼんやりとしたように眺めている。

「ああ、ホプキンスさん」 

 クリスにかける声もどこか頼りない。キーラはつなぎのそでで顔についていたオイルを拭うと、シャムの被っている帽子を直してやる。

「大丈夫?眠れなかったの?」 

「違うの」 

 シャムは頭を振りながら焦点が定まらないような瞳でクリスを見上げた。

「本当に大丈夫かい?」 

 クリスが声をかけるが、シャムはそのままハンガーへ向けて歩いていく。心配そうな唸り声を上げて見守る熊太郎。

「元気出せよ!」 

 シャムの被っている帽子を叩いたのはライラだった。

「ライラちゃん……」 

 驚いたように帽子を被りなおすシャム。その様子をジェナンとシンが笑顔で見つめている。

「昨日の元気はどうしたんだよ」 

 ライラは上機嫌だった。だが、彼女の額に浮かんでいる脂汗をクリスは見逃さなかった。戦場に立つ恐怖を紛らわす為にわざと明るく振舞って見せているのは間違いなかった

「うん大丈夫だよ。ホプキンスさんも安心していいから」 

 そう言うとキーラにつれられてシャムはハンガーへと歩き始めた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ