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従軍記者の日記 147

「それなんですが、楠木さんが隊長の方について行っちゃったので……」 

 そこまで言って御子神がはっとした顔になる。

「別にそのくらい予想がついてますから。バルガス・エスコバルとその直下のバレンシア機関潰しですね」

 そう言うクリスに曖昧な笑みを浮かべる御子神。クリスは黙って部屋を見回す。そこには出撃前の割には緊張感が欠けているようにも見えた。

「遅いっすよ!御子神の旦那!」 

 そう言いながら和風ハンバーグステーキを食べているのはレムだった。明華は静かにラーメンの汁をすすっている。隣のルーラとセニアは餃子定食を食べていた。

「じゃあ僕はカレーにするかな……」 

 そう言う御子神の向こう側に一人ライスに卵スープをかけたものを食べているシンがいた。

「何を食べているんですか?」 

 呆れたように尋ねる御子神をにらみつけるシン。

「ムハマンドの預言書で決められたもの以外口にできるか」 

 吐きすてるようにそう言うと、シンは味が薄いのかテーブルの上の醤油をご飯にかける。

「シン少尉は敬虔なイスラム教徒なので……」 

 隣でカツカレーを食べているジェナンが言葉を添える。隣でボルシチをスプーンで救いながらライラが頷く。

「でも卵スープ……」

「私はこれが好きなんです!」 

 突っ込むクリスにシンはそう言い切った。

「いいじゃないか何を食べようが。俺がクリスの前に組んでたライターはユダヤ教徒だったけど、せっかく潜入した九州の右翼民兵組織のキャンプで出されたカニ料理にぼろくそ言ってそのままアメリカ兵に突き出されたこともあるぞ」 

 ハワードはそう言いながら受付でカレーうどんの食券を買う。

「俺はビーフシチュー……」 

 クリスは食券売りの事務官の女性に声をかけた。

「それはダミーです」 

 受付の若い女性事務官が答える。

「じゃあミートソーススパゲティー……」

「それもダミーです」

 クリスは唖然とした。

「じゃあ何でこんなにメニューがあるんですか?」 

「隊長の指示でダミーのメニューをつけたほうがなんとなくカッコいいということで……」 

 そう言う事務官に肩を落とすクリス。

「じゃあ卓袱うどんで」 

 そう言う御子神から遼北元を受け取ると事務官はプラスチックの食券を渡した。

「なんでそんなのがあるんですか!」 

 クリスの言葉に事務官はもう答えるのをやめたと言うように無視を決め込んだ。

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