従軍記者の日記 136
「君は強いんだな」
ジェナンはそう言うと下を向いた。ライラが心配そうに彼に寄り添うように立つ。
「いいわねえ、ジェナン君には彼女が居て。あーあ私も素敵な彼氏が欲しいなあ」
「私では駄目なのかね?ルーラ君」
レムはそう言いながらルーラの顔に手を伸ばそうとする。ルーラはその手を払いのけた。
「何をやっているんだか……」
「そう言うセニアはどうなのよ。やっぱり隆志君一筋?」
「俺がどうかしましたか?」
悪いタイミングで仕様書から目を上げた御子神。全員の視線が彼に集中する。
「何でしょうか?」
「ニブチン!」
「最低!」
レムとルーラにけなされて、何のことかわからずに首をかしげる御子神。そこに入ってきたのはシンだった。彼は微妙な控え室の空気を観察しながらクリスに目で訪ねてきた。
「ジェナン君が何の為に戦っているのかって話題を出したんですよ」
「なるほど、ジェナンらしいな。俺は信念のために戦っているな。モスレムの同胞の苦しみ、ゴンザレスの圧制への人々の叫び。それに俺なりに出来ることがあると思って東モスレムにやってきた」
シンはそう言い切るとセニアと御子神を見た。
「ブリフィス大尉、御子神中尉。嵯峨隊長がお呼びだ。南部基地攻略作戦の会議だ。急ぐように」
そう言うとシンはすぐに去っていく。
「動きが早いな。さすがに百戦錬磨の指揮官ではないというところだろうな」
ジェナンはそう言いながら爪を噛んだ。すぐさまライラの右手が飛んだ。
「ジェナン!その癖みっともないわよ」
「それじゃあ行って来るわ」
「僕も……」
立ち上がったセニア、仕様書を机に投げて後を追う御子神。
「お熱いわねえ。そう思いませんか?ホプキンスの旦那」
ニヤニヤと笑いながらレムがクリスに話しかけてきた。