従軍記者の日記 134
「あのー静かにしてくれないかな?」
そう言ったのは一人二式の仕様書を読み続けていた御子神だった。ジェナンとライラと言えば、呆然と人造人間と明華、シャムのやり取りを見つめていた。
「はい!入ったわよ」
そう言うとキーラは明華、クリス、レム、ルーラ、御子神、ジェナン、ライラそして自分のカップを並べた。
「私のココアは?」
「だから無いんだって!」
しょんぼりと下を向くシャム。
「すみませんねえ」
ジェナンはそう言うとコーヒーをすすった。
「あの……」
ライラはカップを握ったまま不思議そうにキーラを見つめた。
「そう言えば東モスレムにはあまり私達みたいなのはいないらしいわね」
キーラのその言葉にレム、ルーラ、そしてセニアがライラに視線をあわせる。
「確かにあまり見ないですし、もっと感情に起伏が無いとか言われていて……」
「酷いわねえライラちゃん。私達だって人間なのよ。うれしいことがあれば喜ぶし、悲しいことがあれば泣くし、まずいコーヒーを飲めば入れた人間に文句を言うし……」
「レム。文句があるならもう入れないわよ」
カップを置いてキーラがレムをにらみつける。
「レムさんの言うとおりだ。ライラ。偏見で人を見るのはいけないな」
ジェナンはそう言うと静かにコーヒーをすする。
「いいこと言うじゃないの、ジェナン君。それに良く見ると結構かっこいいし……」
「色目を使うなレム!」
「なに?ルーラちゃんも目をつけてたの?」
「そう言う問題じゃない!」
「あのーもう少し静かにしてもらえませんか?」
レムとルーラのやり取りとそれにかみつくタイミングを計っているライラの間に挟まれた御子神が懇願するように言った。
「無駄じゃないの。こんなことはいつものことじゃないの」
平然と機体の整備状況のチェックシートをめくりながら明華はコーヒーをすすっていた。