表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
100/183

従軍記者の日記 100

 突然、嵯峨の執務机の上の端末が鳴った。

「はいはーい。でますよー」 

 嵯峨はめんどくさそうに立ち上がると受話器を上げる。別所は瓶の中のキノコを取り上げて口に入れた。

「意外といけますよ」 

 さすが民派の有力者の懐刀と呼ばれるだけの喰えない男だとクリスは思った。自分の仕事がすべて終わったような顔をしている別所を眺めていた。次々と別所がつまむビンの中の野草にクリスは恐る恐る手を伸ばして口に運んだ。そのえぐい味に思わず顔をしかめた。

「ああ、別所君。ちょっと」 

 嵯峨は受話器を置くと別所の肩に手を置いた。

「君、軍医でしょ?」 

「まあそうですけど……」 

 待ってましたと言うような嵯峨の笑みに、別所は少したじろいだ。

「あのね、難民の移送の先発隊で重症の患者を運んでいたVTOLが到着したそうなんでねえ……」 

 嵯峨はそう言って別所を立ち上がらせる。

「仕事はきっちり頼むわけですか」 

「なあに、医者の技量を持つ人間の宿命って奴ですよ。まあ俺は弁護士の資格は持ってはいるがあんまり役に立たなくてねえ」 

 そう言いながら別所を立たせて執務室を後にした。クリスも酒に未練があるものの、二人を追ってまた管理部門の続く廊下に出る。大型の東和の国籍章のついた輸送機がハンガーの前に着陸しようとしているのが見える。その両脇には東モスレム三派のアサルト・モジュールが護衛をするように立っている。

「また食いつかれるだろうねえ」 

 嵯峨は苦笑いを浮かべながらエレベータに乗り込んだ。

「当然、あの二人は今回の民兵掃討戦のことを……」 

「シンの旦那は間抜けじゃないっすよ。おそらくライラは額から湯気でも出してるかも……」 

 嵯峨はそう言いながら開いたエレベータから降りようとしたが、パイロットスーツを着たライラは拳銃を突きつけながら嵯峨を押し倒した。

「おい!この卑怯者!恥って言葉の意味!お前は知らないんじゃないのか!」 

 怒鳴り込んできたライラを周りにいたゲリラ達が押しとどめる。

「ライラ!止めろ!」 

 ジェナンに羽交い絞めにされてようやくライラは静かになった。ゲリラ達は銃の安全装置を外している。静かにライラと嵯峨はにらみ合っていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ