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国王と七音の旋律 ~ムジーク王国記~  作者: 卯月慧
第七話 国王と幼姫の慕情
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国王と幼姫の慕情(5)

 ムジーク王宮の裏手にある山の中腹、美しい花畑の中にスラーは佇んでいた。

 ここに来ること自体は初めてではない。

 先代のムジーク国王夫妻が崩御した際、トーンたち兄弟の手によってこの場所に小さな墓標が立てられる場面に立ち会っていた。

 スラーが七歳の時のことなので、記憶は鮮明に焼き付いている。

 ただ、一人で来たことは今までなかった。

 スラーが外出する時は常にソファラがついていてくれたからだ。

 散歩に誘ってくれたのに置いてきてしまったことを、今更ながら反省して心の中で謝罪した。きっと心配しているだろう。

 それでもスラーはどうしても、今は一人になりたかったのだ。

「……オクトさま、ノーテさま」

 花に埋もれるようにして鎮座している二つの石。

 新しい花束が供えられていることから、昨日今日で他の誰かもここへ来たのだろう。

 正面に膝をついて声をかける。

 耳を震わせる返事は聞こえなくとも、敬愛する二人の声が心の中で優しく響いた気がした。


 この国に来た当時のことは、スラーは正直覚えていない。

 何せまだ齢二歳だったから。

 それでも、あって当然のものと信じて疑わなかった家族を失い、故郷から遠く離れた気候も習慣も違う土地で暮らすことになったという違和感は肌で感じていたのだろう。

 あの頃のスラーは無表情なことが多く、言葉を話し始めるのも遅かったと、追従してきた者たちから聞いている。

 そんなスラーに、ムジーク前国王オクターヴ=スケール=ムジークと、その妻である王妃ノーテ=ムジークはとても優しく接してくれた。

 祖国の生みの親に義理立てしたのか、最後まで父、母と呼ばせてはくれなかったが、スラーにとってはオクターヴ・ノーテ夫妻も本当の父と母であると心の底から強く思っている。

 落ち込んでいる時、オクターヴの大きな手が頭を撫でてくれて、スラーは嬉しい気持ちでいっぱいになった。

 スラーが泣いていると、ノーテが温かな両腕で包み込んでくれて、涙はたちまち乾いていった。

 二人はきっとスラーの心を癒す魔法を持っている。

 スラーはそんな二人が大好きだった。


 今、ここに来た理由は――破裂しそうなほど苦しく痛むこの胸に、もう一度魔法をかけてもらいたくて。

 風がスラーの髪をさらう。

 ざぁっ、と草花の揺れる音に、小さな嗚咽が混じる。

「……だめ……」

 スラーは両肩を抱きすくめてその場にうずくまった。

 何度目を閉じても、眼裏に浮かぶ男女のシルエットは前国王夫妻のそれではなかった。

 先程見たばかりの、トーンとフィーネが楽しそうに笑い合う姿。

 トーンの隣に立つのは自分ではないと思い知らされて、さらに胸が痛む。

 小さな墓石を抱えるように額をつけた。

 涙が次々にこぼれ落ちて、ぽつりぽつりと染みを作っていく。

「オクトさま、ノーテさま……どうして死んでしまったの……?」

 問いに答えてくれる者はいない。


 二年前、中央広場に立つ『精霊の樹』が一晩で急に枯れたのをスラーも見た。

 王気を吸って成長する『精霊の樹』はムジーク国王と密に繋がっていて、国王の心身に何かあれば影響がすぐ目に見えて現れる。

 急速に枯れてしまうことは即ち、王気の消滅――つまり国王オクターヴの崩御を意味していた。

 死因は外遊中の事故。王妃と共に乗っていた馬車ごと谷底に落ちたという。

 悲しみに暮れる兄弟たちのそばで、スラーもまた泣いた。

 こんなにも人はあっけなくいなくなってしまう。残される側に何の心の準備もさせずに。


 二人なら、どんな答えをくれただろう。

 分不相応な恋はやめなさいと言うだろうか。

 逆に背中を押してくれるだろうか。

 それとも何か他の方法を見つけてくれるだろうか。

 全ての解は想像でしかない。

 突き付けられるのは、癒しの魔法をかけてくれる人たちはもういないのだという現実。

 恋焦がれる痛みと、冷たい喪失感とで、スラーの胸は張り裂けそうになっていた。

 


 どのくらいそうしていただろう。

 時の経過を実感しないまま顔を上げると、ふと近くの木の根元に人影があることに気がついた。

 こちらからは死角で見えなかったとはいえ、こんな近くで子供っぽく泣いていたなんて恥ずかしい、とスラーは頬が熱くなるのを感じた。

 その人影は動かない。どうやら眠っているようだ。

 王宮の裏手であるこの場所に立ち入ることのできる人間はそう多くない。

 恐る恐る近づくと、やはりスラーの見知った顔がそこにあった。

「……シャープ兄さま?」

 小さく呟き、ホッと息を吐く。安堵の理由は二つあった。

 一つは、家族同然で育ったムジーク兄弟のひとりであること。

 もう一つは、シャープが眠っていることだった。

 スラーはムジーク兄弟のことが大好きだが、それでも苦手なものはあった。

 それが次男シャープの瞳だ。

 トーンと同じ色のはずなのに、狼のような鋭い眼光で射竦められると、言葉が何も出てこなくなってしまう。

 常に睨まれるので、嫌われているのではないかと錯覚するほど。

 元々あんなカオだから気にしなくていいのよ、とレミーは言うし、きっとその通りなのだろうが。

 今は目を閉じているから、不思議と怖くない。

 春になったとはいえ、まだまだ肌寒い。

 風邪を引いてはいけないと、スラーはシャープに近づいてしゃがみ込み、自分のストールをかけてやろうとした、その時。

「……ん?」

「ひゃっ」

 シャープが急に目を開けたので、スラーは驚いて喉から変な声が出た。

 至近距離で瞳を覗き込んでしまい、身体が硬直する。

「あっ、あのっ……起こしてしまってすみません」

 慌てて視線を逸らし、謝罪する。

 シャープは眠そうにぐぐっと伸びをしながら、

「気にすンな」

 と、一言だけ返してきた。

 続く言葉もなく、二人の間に気まずい沈黙が流れる。

 ここで立ち去るのも不自然だし、何か話さなくては……と気ばかり焦るスラーだが、思いに反してなかなか口が動いてくれない。

 まごまごしていると、シャープが先に立ち上がって無言で手を差し伸べてきた。

「あ……ありがとう、ございます」

 スラーはその手を取り、立ち上がらせてもらう。

 衣服についた草を払っている時、再びシャープが口を開いた。

「ソファラは?」

 その言葉に、スラーはびくっと肩を震わせた。一人で来たのか、と言外に問うている。

 怒られるのを覚悟しながら、正直に言うしかない。

「えっと……ちょっと一人になりたくて。あ、あとで謝りに行きます……」

 委縮するスラー。

 次に向けられたのは叱責ではなく、困ったような苦笑だった。

「いやまァ、アイツに謝る必要はねェけどよ。オレの立場的には、あんま無茶すンな、とだけ言わせてもらうか」

 ぽん、と軽く叩かれる肩。

「邪魔して悪かったな」

 そう言って、シャープはこの場を去ろうとする。

「あ……」

 スラーは一人になりたくて、前国王夫妻が眠るこの場所に来たのだ。

 それはもしかしたら、シャープも同じだったのではないだろうか。

 死者を悼むように置かれた新しい花束がそれを物語っている。

「ま、待ってください!」

 スラーは思わず後ろ姿を呼び止めた。

「あの、シャープ兄さまも、オクトさまとノーテさまのお墓参りに来たんですよね。ごめんなさい、スラーのほうこそお邪魔してしまって」

 シャープが振り返る。

「……別に。花置いたのオレじゃねェし」

 苛立たしさを含んだ視線を向けられて身が竦んだ。

 この眼差しが苦手なのだと改めて認識し、場を取り繕おうとして不自然な早口になってしまう。

「スラーも、もう一度お二人に会いたくなったんです。ここに来れば会えるかなって――」


「会えるワケねェだろ」


 低く、冷たい声。

 存外に鋭く飛んできた言葉に、スラーは一瞬で凍りついた。

「親父とお袋は死んだんだ。会えるなんてことは、もうねェんだよ」

 怒りを押し殺すように呟かれた言葉は、シャープ自身に言い聞かせているようにも聞こえた。

「なんでこんなところに前国王の墓があるか、知ってるか」

「…………」

 スラーは声を出せずにただ首を横に振る。

 王宮の裏手にひっそりと佇む墓。

 本来、国王の埋葬ともなれば立派な墓があるはずで、滅多に参る者もいないこんな場所にある理由など、スラーは考えたこともなかった。

 オクターヴとノーテが、よくこの場所で余暇を過ごしていたのは何となく覚えているが。

「歴代の王墓に、親父たちの墓はない。遺体もなけりゃ、墓標にするはずの『精霊の樹』も枯れちまったからな。当然、そこの墓だってただの石だ、下には何も埋まってねェ。ムジーク国王オクターヴと王妃ノーテは、歴史として書物には残るが、存在はこの国から消えてなくなった。……精霊としても、だ」

 言われて、思い出す。

 ムジーク王国における死者の弔いについては、過去にレミーから教わった。

 残された者が捧げた祈りによって死者は精霊となり、新たな生命を育むのだという。

 墓森に連れていってもらった時は、その清浄な空気に触れたスラーも心を打たれたものだ。

 そして、一般国民は葬式で初めて苗を用意するのに対し、国王は存命中から『精霊の樹』を王気で育てているため、死後は『精霊の樹』が枯れる前に墓碑に加工し、儀式をもって精霊となり、墓森ではなく歴代王墓に埋葬されるのだった。国王を支える王妃も然りだ。

 遺体が見つからなかった前国王夫妻。

 それは、精霊になるための弔いが満足にできなかったということ。――墓に触れても、会えないということ。

 シャープの視線はスラーを通り越して、奥の小さな墓碑を見つめていた。

「それでもここに墓を作ったのは……親父とお袋が存在した証であるオレたち兄弟が悲しみを癒すためだ」

「……!」

 スラーはそれを聞いて、胸に激しい痛みを感じた。

 まるで、スラーには悲しむ権利などないとでも言うような。

 祖国を追われたスラーが逃げてきたこの国で、ムジーク王家の人々に温かく出迎えてもらって初めての――明確な拒絶。

 再び、シャープはスラーに背を向ける。拳は固く握られていた。

「本当に谷に落ちただけだったら、生きていようが死んでいようが全力で捜し出して連れ帰ってる。……何も知らねェくせに、軽々しく『会いたい』なんて言うな」

 怒りと悲しみをないまぜにして去っていく後ろ姿。

 それを呆然と見送って、スラーはその場に立ち尽くしていた。

 シャープの言葉を反芻し噛み砕いて、信じたくない気持ちに抗って理解するまでに、だいぶ時間がかかった。

 そしてその理解から新たに生まれる疑問。

――事故じゃない。なら、どうして?

 国王夫妻の死に、公にされていない真実がある。

 事故が起きた際の外遊先はどこだったかと、スラーは記憶の糸をたぐる。

 あの時、馬車に乗り込んだのはオクターヴとノーテ、王子として付き従うトーンとシャープ。

 残る兄弟と共にそれを見送って、帰国を出迎えた時には馬車の箱は失われていた。

 直接現場に居合わせたシャープが事故でないと言うのならば、事故として処理するしかない何かが起きたのか。

 グランディオ――スラーの祖国、旧フェルマータの地で。

 この二年間、まったくそうと匂わせずに笑顔で接してくれたトーンたち兄弟の気持ちを考えると、それを知る権利すら、スラーにはないのかもしれない。

 そこにある配慮は『子供だから』という範囲を超えている。

 『スラーだから』、話してくれないのだろうか。

 トーンの隣にいたいという願いから、たった一日でずいぶん遠くなってしまった気がする。

 スラーはいつだって――むしろ最初から、部外者なのだから。


   * * *

 

 フラットは、花の中に佇む少女の顔を見て、かけるべき言葉を失った。

 真っ赤な瞳と涙の跡が痛々しい。

 だが既に水源が枯れてしまったかのように乾いていて、その眼差しは、明るい光が躍る花畑に似つかわしくないほど昏い。

 彼女がこうなるに至った原因を、フラットは使い魔を通して見守っていたので知っている。

 ただその距離が災いして、心を傷つける前に止めることは叶わなかった。

 下手に触れると壊れてしまいそうなガラス細工のような少女。

 目の前に立つフラットの姿をも映さぬ瞳。

 どうしたらいいかと逡巡していると、耳が小さな小さな声を捉えた。

「スラーは……ここにいてはいけないんですね」

 フラットは、はっと息を呑んだ。

 否定して慰めるのは簡単だ。

 ただ、それは自分の役目ではない気がした。

 閉ざされた扉の奥にある心に、フラットの声ではきっと届かない。

「……少なくとも私は」

 それでも、完全に離れてしまう前に。

「スラーが父と母のことを忘れないでいてくれて、嬉しく思っていますよ」

 本来役目を果たすべき者へと繋ぎ止めておくために、そっと言葉を紡ぐ。

 戻りましょう、と取った小さな手は小刻みに震えていた。

 スラーのふらつく足取りを支えながら、王宮への小道を歩き出す。

 俯く少女の表情は窺えなかったが、再び零れ落ちたひと雫。

 心が完全に凍ってしまったわけではないことを示す涙に、フラットは少しだけほっとした。

 


 フラットはすぐに末の妹を呼び、何も聞かずにスラーのそばにいてやってほしいと頼んで任せた。

 困惑しながらも、ソファラは力強く頷いてくれた。

 力なく腰掛ける少女を抱きしめる姿に安堵し、スラーの部屋を後にする。

 トーンはまだ身体が空かないだろう。執務が終わり次第話がある、と小間使いに言伝を頼み、急ぎ自分たちの私室へと足を向ける。

 彼は明日からの国境遠征に備えて今日を休暇としているはずだが、休暇ゆえにどこかへ行ってしまう可能性もある。フラットの足は自然と速まった。

 扉を開ける。視界の中に、窓際でコーヒーカップを手に外を見ている双子の兄の姿が映った。

「……シャープ……!」

 我知らず、言葉に怒気が乗る。

 大股で歩み寄り、気づいたときには胸倉を掴んでいた。

「!?」

 普段温厚なフラットらしからぬ行動に虚を衝かれたシャープの手から、カップが滑り落ちる。

 がちゃんと無残に割れる音と、フラットが叫ぶのはほぼ同時だった。

「貴方は、何てことを!」

「ちょ、ちょっと待て、何の話だよ」

 事態が飲み込めず狼狽する兄を、キッと睨みつける。

「あんなこと、今言う必要はなかったでしょう」

「は?」

「スラーの気持ちを踏みにじる権利が、貴方にあるんですか!?」

「……あぁ」

 やっと原因に思い至った様子で、シャープが舌打ちした。

「盗み聞きかよ。趣味悪ィな」

「……っ」

 怯んだフラットの腕が払われる。

「スラーが未だに何も知らねェのが悪い」

「それは、秘密にしておくと兄さんが決めたことで、貴方も同意したはずです」

「いつかは話すって条件だったろ。それが今になったってだけだ」

「貴方の独断で、しかもあんな形で知らされるスラーの気持ちを考えてください! あの子は悩みがあって、誰かに慰めてもらいたくて、純粋に父さんと母さんに会いたいと思っただけなのに――」

「それがウゼェって言ってンだよ!!」

 シャープの怒声に、思わず肩を竦めるフラット。

「純粋だったら何を言っても許されるってのか? 子供だから、悪気はないからってウジウジと悲劇のヒロインぶって、人の心に土足で踏み込んで気安く触られるこっちの身にもなってみろよ!」

「それでも、順序と言い方ってものがあるでしょう!」

「そんなトコまで気ィ回してられなかったンだよ! 会いたくても会えねェって事実に、あの時の自分の無力さを嫌でも思い知らされて……直接見てねェフラットに何が分かるってンだ!」

 その言葉にガツンと頭を殴られたような衝撃を受けて、フラットはよろめきながら一歩後退りした。


 父と母が命を落としたその外遊に、フラットは同行を許可されなかった。

 次期国王として見識を深めるため随従する第一王子トーンと、その護衛についた第二王子シャープ。

 王位継承権を持つ王子全員が国を空けるのは良くないと説得されて、第三王子のフラットはそれを渋々承諾し、両親と兄二人の後ろ姿をただ黙って見送るしかなかった。

 やがて国に戻った兄たちが持ち帰ってきたのは、両親の死の事実を伝える言葉のみだったのだ。


 俯き、握った拳を震わせる。

 確かにシャープの気持ちは分からないが、シャープだってフラットの気持ちは分かり得ないのだから。

「私だって……貴方たちと一緒に行きたかったのに……!」

 どうしようもない過去への悔しさに、視界が歪む。

 シャープがはっと息を呑む音が聞こえた。

「……悪ィ、言い過ぎた」

 謝る兄の声に、首を横に振ってみせる。

 きっと、両親の死の瞬間に立ち会ってしまったのも、立ち会えなかったのも、同じくらい不幸なことなのだろう。

 どちらがより辛いかなど、比べるだけ無意味だ。

「こちらこそ、すみません。ちょっと頭に血がのぼっていました」

 指で目元を拭って、シャープに向き直る。

「潮時、なのでしょうね。二年という期間が長いのか短いのか、私には判断できませんが、今伝えなければスラーは心を閉ざしてしまう……そんな気がします」

「…………」

「兄さんに、きちんと話してあげてほしいと伝えましょう」

「……なぁ」

 フラットの提案に肯定も否定もしないシャープが、ぽつりとこぼす。

「真実を知ったスラーが、ここを出ていきたいって言ったら……兄貴はどうするんだろうな」

 その表情からは、後悔と不安が見て取れた。

 いつか迎える瞬間だったとはいえ、それを迂闊に進めてしまった責任と、その結果最悪の未来が訪れるかもしれない恐怖。

 フラットの中には、その問いに対する答えはない。

「分かりません。でも、兄さんは私たちの言葉をちゃんと聞いてくれる人ですから。その時の最善を、皆で一緒に考えましょう」

 そう言って、少しだけ笑ってみせた。

 ここに来て初めて作った笑顔は筋肉の強張りを感じたが、シャープはそれでも幾分ホッとしたようだった。

「……ごめん、フラット」

「いいえ。コーヒー、淹れ直しましょうか」

 二人で、床に散ったカップを片付ける。

 トーンが執務を終えて戻ったという報せを受けるまで、二人は敢えてこの話題に触れぬよう他愛もない会話をして過ごした。

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