第十一話:騎士と名乗りし義賊
すまない…… 投稿が遅れて本当にすまない……
あと大した前書きのネタも浮かばなくてすまない……
あとなんか……某CV諏訪部○一の竜殺しの英雄みたいな口調ですまない……
せめてもの誠意を見せようとしたらこんな口調になってしまっただけで、別にリスペクトした訳ではないんだ
すまない……
時刻二〇〇〇。
信濃 作戦会議室。
この部屋に、様々な役職の班長が着席する。
操舵士を兼任する航海長の航はCIC操舵士席からのオンライン出席となるが、それ以外は全員集まった。
艦長 神山 絆像。
船務長 舟守 勉。
砲雷長 棚田 進。
対潜長 米倉 孝。
機関長 渋丸 源次。
応急修理班長 香坂 狼牙。
艦載機航空隊隊長 有本 僚。
艦載機整備班班長 吹野 深雪。
オペレーターの桂木 優里も記録係と随伴艦への伝達係として参加している。優里がアマテラスを起動したのか、彼女のすぐ近くに信濃の姿も見えた。
「艦同士ならアマテラスを経由して情報共有されているから、我々が話している内容は他の艦にも伝わる」
絆像がそう言うと僚は「え、他の艦にも搭載されているんですか?」と尋ねた。すると「え?」という反応を絆像が返し、それに対し僚も「え?」と返した。
何故か既視感を覚える応対である。
「日本海軍の戦艦、空母系統は大体装備しているぞ?」
そう言われ僚は「あっ、はい」と返した。
「それじゃ、会議を始めようか」
絆像はそう付け足す様に言った。
そして、会議が始まる。
会議題 『ソマリア周辺海域海賊・ゲリラ部隊鎮圧作戦に関する作戦会議』
「我々はこれより、海賊及びゲリラを鎮圧する為にソマリアに向かっている。
明日〇八〇〇にはソマリア周辺海域に突入する予定だ」
真面目な表情と口調で絆像は切り出した。
「作戦名通り、内容は海域内の海賊とゲリラの鎮圧だ」
そう言った彼に対し、僚が手を挙げ「質問よろしいですか?」と問う。絆像が「どうぞ」と返すと、僚は立ち上がり、聞いた。
「鎮圧と言いますと、可能な限り相手を傷付けない様に、ですか?」
「……そうだ。
可能な限り相手は殺さず、可能なら全員捕縛、拘束しろ。
これは殲滅作戦ではなく、鎮圧作戦だからな、と……特に何も無ければ言おうと思ってたんだが、先を越されたな」
「……すみません。
以後、気を付けます」
席に着く僚。それを見届けると絆像は「それじゃ次に作戦の概要を説明するが、他に質問がある者は?」と尋ねる。
五秒間、誰も何も言わない様だった為、絆像は次に進むことにした。
彼は自身の席の背後にあるスクリーンを起動させ、パワーポイントを操作する。
「まず、信濃の航空隊から少数の隊員で強行偵察隊を編成し、同部隊による索敵を行う。
発見次第、強行偵察隊は警告、もしくは威嚇。
何らかの反応があり次第、軽空母 祥鳳・瑞鳳・龍鳳らから艦戦隊を発艦し追撃。
艦砲射撃は可能なら行わないつもりだが、やむを得ない場合は射撃を許可する」
説明を聞きながらスクリーンを見るのだが何がどう書いてあるのか分からず、正直聞いている方が分かりやすかった。
「パワポ使用した意味無い様な……」
そう呟く僚に対し、深雪が小声で話す。
「……まぁ、この人はこういう人だから」
そう聞いて僚はどこか納得するのだった。
会議が終わり、時刻二一三〇。
信濃艦載機格納庫にて。
僚は航空隊員を集め、作戦の説明をした。
それの最後の頃、
「この作戦に於いて、二班、三班だけ防衛隊として陣営内に残って貰います」
僚がそう言うと「隊長さん、ちょっと質問よろしいかしら?」と聞いてきた。三班班長 桃山 縁だ。
「どうして、私達は前衛に出さないのかしら?」
「こないだの戦闘を覚えてますかね?
海賊の騎甲戦車が艦を直接襲ってきました。
どれほどの巨大戦艦でも、肉薄されてしまっては蟻の一噛みなんとやらです。
陥落は時間の問題となるでしょう」
「……なるほど、意図は承知したわ。
でも、それならなぜ私達?」
「貴女の班にいる陸駆 雷花さんは射撃の名手です。それに、貴女自身も射撃が得意と聞いています。
ですので、防衛向きかと考えてこの配置にしました」
「成る程、了解したわ」
納得する様に、縁は切り上げた。
その時、僚が付け足した。
「それと、若干班員の変更をします。
一班所属景浦さんを防衛隊に、それから二班所属火野さんと、三班所属電子さんを強行偵察隊にそれぞれ変更し、航空隊予備兵のクラリッサを四班の指揮下とします」
それを聞いた周りがざわつき始める。
そんな中、幽は「了解」と応えるが、一方の電子は「えっ!!?わ、私ですか!!!?」と焦りだす始末。
ちなみにこの場にいないクラリッサ・能美・ドラグノフには僚が前以て話を付けていた。
「電子さんは近接が得意なので、この配置にしました。
自軍艦上よりも空中や敵艦上の方が真価を発揮しそう、ということです。
それと、景浦さんは相手の死角を取るのが得意です。こないだの戦闘でもそれを生かしていました。
攻撃にも使えますが、防衛戦用としても良い戦力となると思い、そうしました」
僚がそう言うと、
「……了解です」
渋々とだが、電子は引き受けた。
「それでは、これでミーティングを終わりにします。
出撃予定時刻は明日〇七三〇。
〇五〇〇には起床、〇七〇〇までには機体のチェックを済ませる様に。
以上」
僚がそう言い終えると、一同は「了解!」と返事し、ミーティングが終わる。
次の日、時刻〇四三〇。
電子は早めに起きた、というかほとんど寝れなかった為に一人で機体チェックをし始めた。すると「電子さん?」と後ろから声を掛けられ、
「はにゃっ!!?」
いきなりのことに驚いてしまう。
振り向くとそこには僚がいた。
「僚さん、起きてたのですか?」
「物音がしたから今起きたところだよ」
そう返され「え?」と首を傾げる。すると僚は「いや、コクピットで寝てたから」と返した。
そう言っていると「僚さん……」と不安そうな口調で電子は尋ねる。
「僚さんは、怖かったり、不安だったりしますか?」
そう聞くと僚は「……まぁ、多少はね」と答える。「多少、なのですか……」と返してしまう電子。
「電子さんは、って。まぁ、怖いよね」
「……はい」
そう電子が答えた後、僚は彼女にとあることを続けて言った。
時刻 〇七〇〇。
全員の出撃準備が整う。
後は、出撃の指令が来るまで待機。当初の予定通りなら、〇七三〇までには出撃命令が出るだろう。
各機のコクピット内にいる航空隊員達は誰もが緊張しているだろう。
その時、CICから通信が入った。
『まもなく作戦開始時刻です。航空隊各員、スタンバイ願います』
桂木 優里からそう伝えられ、僚は「了解」と返す。
超電磁投射艦載機発進器《天之梯子》に搭載され、待機中となっている試作三号機。現在この機体の後部───兵士形態時に左脚を形成するユニットの側面にやや大きめの装甲の様なものが装備されている。
試製四一式空戦騎用防盾。
懸架されているこれは、兵士形態時に手で保持して扱う様の盾型の追加装甲だ。
『天之梯子 左舷側、リニアボルテージ上昇!
試作三号機、出撃準備……コントロール権をCSA-03へ移行』
「了解、出撃準備完了!」
そして、
「有本 僚!
試作三号機、行きます!」
信濃の後部飛行甲板上にあるカタパルト『天之梯子』より、白い零式艦上空戦騎が飛び立つ。
「双里さん、以下強行偵察班。
続いてください」
彼の姿とその言葉に続いて、
「了解、出撃準備完了。
双里 真尋、行きますよ」
天之梯子 二番(右舷側)に懸架された二一型 双里機が発進する。
そして先程僚が飛び立った天之梯子 一番には物部機が射出態勢になり、二番は今景浦機が準備を始めている。
「も、物部 悠美……出撃します!」
さらにもう一ヶ所。
飛行甲板 《《二段目》》
天之梯子の下の階層にも、発進口はあった。
「武士之門 一番二番共にリニアボルテージ上昇、発進可能」
兵士形態限定でのみ、そこからは発進することができる。
直立発進式超電磁投射発進器出撃口『武士之門』。
「火野 龍弥!
二一型、行くでぇっ!」
「陸駆 電子!
試作十一号機、出ます!」
それの一番発進口から龍弥の二一型、二番からは電子の試作十一号機が、それぞれ発艦していく。
『強行偵察部隊、発進完了。
続きまして艦隊防衛部隊、発進どうぞ』
優里がそう伝えると、
「城ヶ崎小太郎、発進する!」
城ヶ崎機と、
「桃山 縁、参ります!」
桃山機がそれぞれ発進し、滞空する。
そして、
「クラリッサ・能美・ドラグノフ!
T-34改、出る!」
「陸駆 雷華!
試作七号機、出るわ!」
本来なら緊急発進用として使われる垂直カタパルトから白銀色のT-34、及び深紅色の空戦騎が高速で射出された。
空中へと躍り出る、白銀と深紅の機体。
特に試作七号機の姿は出航前とだいぶ異なる印象となっている。
まず目立つ変化は、肥大化した様に巨大になった翼。これは本来なら弐〇式電磁投射砲が備わる位置に、外側に可動型のバインダーを備えた巨大なブースターが備わっており、元々備わっていた空挺機動翼を機体から外して装備されたそれの可動型バインダーに一度外した空挺機動翼を再度取り付けた、という代物だ。
これが、追加兵装プランの一つ、高機動型追加兵装『始祖鳥装備』だ。
これにより通常《追加兵装未装備》状態と比べ最大で約三倍もの速度が出せる様になるが、彼女の機体の場合はいくつかリミッターが備えられ本来の始祖鳥の性能の三分の二程度まで落とされている。
その上でさらに、この機体には外から見るもの目を引くであろうもう一つの特徴がある。
電磁投射砲を失ったことで、手に握られて運用されることになった新たな得物───全長10.5mという機体の身の丈よりさらに長大な、艦砲をそのまま転用した様にすら見える狙撃銃。
四一式120.0mm対物“電磁加速”狙撃砲『大弩』
かつて改二大和型超戦艦級の主砲用に開発された《電磁加速》の技術を転用したこの兵装は、最良条件下で最大出力で砲撃すれば11kmもの距離を約0.5秒以内というタイムラグなどほぼ存在しないといえる速度で直線射撃が可能だという。
とはいえ、あくまでそれはシュミレーション上での話であり、実際に戦場で最大出力を出そうものならまず零の比較的ではあるが脆弱なフレームが銃から発生する反動に耐えられず、またバッテリー残量が即行で尽きるであろうというのが現状であるが。
それら二機共、甲板上に着地。
もう既に見えなくなる所だった試作三号機の姿の方角の空を、クラリッサは睨んだ。
インド洋 ソマリア沖 東南東 約2000km
その上空。
『まもなく作戦海域に到達します。
これより、強行偵察班《我々》は索敵任務を開始する』
僚の指揮に対し、真尋は『了解』と答える。
その時である。
『物部一等兵殿』
不意に呼ばれ「は、ひゃい!!?」とすっとんきょうな声で反応してしまう。
声の主は陸駆 電子だ。彼女の機体も悠美の二一型に並走する様に飛行している。
『緊張しますね』
通信機越しに電子が悠美にそう言うと、悠美は「はっ、はい……」と返した。
自分でも、かなり緊張しているとわかる。ハッキリ言えば、それ以上に恐怖していた。
またあんな目に合うのではないか、と。
『でも、頑張りましょう。
作戦が成功して皆で帰還できれば、きっとみんな喜んでくれますよ』
電子は、そんな悠美のことを励ました。
「あ……ありがとう、ございます……」
彼女の気は、それだけで幾分か楽になる。
すると、
『珍しいこともあるんだね』
通信に割り込みが入る。真尋だ。
『いつもなら隊長と話すのに。
何かあったのかな?』
割り込むなり、問いかける真尋に対し『特にないですよ』と答える電子。
『なら良いけど』
返答を聞いた真尋は、そう返して通信を閉じた。
若干時間が遡る。
早朝のこと。
「僚さんは、怖かったり、不安だったりしますか?」
電子は僚にそう尋ねた。少なくとも、自分は不安だったから。
それに対し僚は「……まぁ、多少はね」と答える。「多少なのですか……」と返してしまう電子。
「電子さんは、って。まぁ、怖いよね」
そう聞かれ、電子は「……はい」と素直に答えた。
すると、僚は彼女に対してこう言った。
「今回、君を一班に入れた理由なんだけど……」
それについては、電子も確かに気になっていた。
「偵察班の女性隊員が物部さんだけで、彼女に悪いかなって気がしてさ。
もう一人でも他に女性隊員がいると少しは彼女も気が楽になるかなと思って。
電子さん、温和な性格だし」
「僚さん……」
彼女へのそういう配慮も含めた上で、僚は班員を変更していた。
(僚さん、優しいです。
やっぱり、変わってないのですね)
そう思った電子は、
(私が守ります、皆を)
そう決意した。
その時である。
『……ん───?』
僚が何かに反応する。直後、
『───あれ!!?』
「───どうしました!!?」
すっとんきょうな声を上げた。
反応すると、続けてレーダーに反応が発生する。
後方から接近する、友軍機の反応
A6M2-A12SH
A6M2-A13SH
A6M2-A14SH
「これは……」
『A6M2-A**』とは二一型の型式番号だ。これのうちA以降に振られた番号が01~11のものは信濃が配備・管理している。そして『SH』は祥鳳航空隊所属を示す記号だった。
『……まさか───』
その時である。
『おうおう!』
何者かの声が通信に割り込んできた。
『荒野ぁー!
ったく、勝手に出るなっての!』
荒野 健介 鳥海 雅美 河守 達也。さらに彼らが率いる小隊の隊員達だった。
信濃 CIC。
神山 絆像以下十数名のCIC要員が艦載機の発艦を見守っていた。
「艦長。航空隊、全機発艦しました」
優里が絆像に対し、そう伝える。
「ついでに、祥鳳航空隊より二一型三機並びに九六艦戦六機が勝手に発進し強行偵察班と合流した模様です」
「了解。管制、続けてくれ」
そう答えた絆像は、艦長席ではなく主砲砲手席にいた。
「何故、艦長がその席に座っているのですか?」
優里が尋ねると「撃たなきゃいけない時、誰もいなければ撃てないだろ」と自信満々に返す絆像。その横では正規砲手 織原 駆が「あはは……」と苦笑いを浮かべている。
「はぁ……」
優里は腹を押さえる。
(うぅ……)
無茶しやすい僚と深雪、砲戦ロマン主義な武彦と噴進弾至高主義の統花、普段フリーダムで戦闘指揮に於いて博打打ちな絆像、さらには先日かなり酷いドジをやらかした悠美など色々個性的な搭乗員に悩まされ、遂に胃薬を持ち歩く様になった。一応飲んではいたが、少々胃が痛くなってきた。
インド洋 上空。高度4000m。
その高度を強行偵察部隊は飛行していた。
『隊長!
海賊に襲われとる船があるで!』
その時、龍弥から通信が入る。報告に対し短く「場所は?」と聞き返す。
『方角、現時点より北北東!
距離、推測やが約11kmや!』
「了解、信濃の班で向かいます!
えぇと……それでは、鳥海さんは信濃への報告と別動隊への警戒と索敵を!」
『了解!』
「真尋さん以下各員、続いてください!」
『了解』
『は、はい!』
『了解です!』
『おう』
十五機の編隊のうち、四機が離脱し高度を下げていった。
信濃 CIC。
「艦長、二一型鳥海機より入電!
強行偵察部隊、目標を発見!
一班が交戦準備に入りました!」
優里が絆像に伝えた。
「いよいよ会敵か。予想より早い」
軽口の様にそう言った絆像は、次の瞬間には真面目な表情で前を睨んだ。
「総員、第一種戦闘配備!
優里、他の艦へも伝えろ!」
「了解」
応じた優里は、所属艦全てに『第一種戦闘配備』と伝えた。
航空母艦 祥鳳 瑞鳳 龍鳳の甲板上に、艦載機が姿を現す。
九六式噴進艦上戦闘機。
それが小隊単位の編成で、飛び立とうとしていた。
その時、突如として何かが祥鳳に向かって飛翔し、甲板上の戦闘機小隊三個分は空いた隙間の空間を穿ち、盛大に炸裂した。
突如、その時は訪れた。
『祥鳳、被弾!
さらに甲板に火災発生、炎上!』
その報が、防衛部隊の元に伝わる。
『こちら桃山機!!
一体何があったの!!?』
「こちら城ヶ崎機……わからない!!
砲撃されたみたいだが、全方位を探してもどこにも何もいないぞ!!」
縁からの通信に答える小太郎。
城ヶ崎班は艦隊を、桃山班は信濃をそれぞれ護衛していた。
砲弾らしきものが放たれたとされる空間には、レーダーではおろか目視ですら何も見えない。いきなり何もない空間から何かが飛んできて祥鳳に直撃した。そうとしか言い様がない状況だった。
その時、
『小太郎さん!』
三班の班員、菅野 花梨が通信を開いてきた。小太郎が「どうした、花梨?」と聞くと、
『あの辺、なんか……陽炎……みたいなものが立ち込めてませんか!?』
そう言われ「何んだって!!?」と言いながら、その方向を見た。
艦隊の遥か後方に、確かに陽炎か蜃気楼の様なもやもやした歪みが発生している。
「本当だ……何だあれは……!?」
それに気付いた小太郎がそう呟いたのと同時に、誰かがそれに向けて発砲する。甲板上に着陸していた試作七号機とT-34改───雷華とクラリッサだ。それぞれ『大弩』『石弓』を構え、揺らめく空間へと砲弾を放ったのだ。
「あいつら、何を───」
直後、何もない空間が裂け、小さくだが爆発が発生する。
「───なっ!!?」
『何これっ!!?』
そこから、大量の艦艇が現れる。
一隻が超弩級戦艦クラス。その前楼艦橋の前には二門の大口径砲を備えた砲塔が二基装備され、それらの二門がこちらを向きながら黒煙を砲口から吹き上げていた。
その他は魚雷艇、フリゲート、コルベットクラスが多数。
『あれ、海賊の艦隊だとでも言うの!?』
「戦艦クラスを保持して光学迷彩使ってる海賊がいてたまるか───って!!」
そう言い合っているその時、
「来るぞ!!」
戦艦クラスの砲が火を吹いた。
第一遊撃部隊が攻撃を受けたという報は、強行偵察部隊にも届いていた。
『お姉ちゃん!!?』
報を聞いた電子は既に“兵士形態”となっている機体で信濃に戻ろうとした。
だが、それを僚は制する。
「いけませんよ電子さん!!」
『でもそれじゃお姉ちゃんが!!!』
「祥鳳航空隊の方々に行って貰います。
いくら君だろうと一人で行かせる訳にはいきません。
“兵士形態”より“戦闘機形態”の方が速度は上だし」
『……分かりました、了解です!』
電子がそう返すと、僚は鳥海機に通信を入れた。
「鳥海さん、祥鳳の部隊で防衛部隊の援護に向かってください」
『……了解した!
健闘を祈るよ、隊長さん』
通信を切った鳥海機が、八機の編隊から離れ、後の機体のうち三機も彼の機体に連れて編隊を離脱した。
その後「……仕方ない」と小声で吐き捨てた僚は、班員の機体全てに通信を開く。
「作戦の変更を通達」
一度挟み、
「強行偵察班で目標を殲滅し終わり次第、第一遊撃部隊防衛部隊に加戦します。
目標捕縛任務は、最悪、目標自爆により失敗と報告します」
“兵士形態”に変形させた僚は、試作三号機の弐〇式電磁投射砲の銃口を目標に向け引金を引いた。
試作三号機が電磁投射砲を発砲した。放たれた弾丸は密接する被害を受けている船と海賊のものとされるフリゲートクラスの左右ずれた海面に着弾する。
「───ファー……警告も無しに撃っちまいやがった!!」
突然僚がとった行動に対し驚愕しながらも、龍弥は目標に接近しようとする。
ところが、僚が手を動かしてそれを制する。そして、龍弥が「なんでや」と返すまもなく、
『我々は大日本共和国連邦海軍横須賀司令部 第一国土防衛師団艦隊所属 第一遊撃部隊!』
『海賊及びゲリラ鎮圧の任務を通達され、派遣されました!』
『海賊行為及び戦闘行為を行う、貴艦に対し警告します!』
『今の射撃は威嚇です!
これ以上の戦闘行為を中止し、投降してください!
繰り返します───!』
オープンチャンネルですらない、拡声器を用いて、僚は警告を放った。
レールガンを撃ったかと思えば突然警告を発する僚。その彼の考えを龍弥はまだ察することができない。
「隊長、何して───?」
その時、フリゲートクラスの艦が主砲らしき小口径単装砲で射撃を開始する。僚はその射撃を軽やかに回避───しきれずに被弾し試作三号機の白い機体が爆煙に呑み込まれる。
「隊長!!?」
だが、爆煙の中から出てきた白い機体は若干煤けている気がするがほとんど無傷だった。とはいえ左手に保持されていた手持ち式の試製小型防盾はボロボロになり、脱落したのか落下していったが。
『一応、警告はしましたよ』
そう言って試作三号機は電磁投射砲で単装砲を撃った。砲口から弾丸を受け入れ内部から爆発四散する単装砲。
続いて、近接防御システムも破壊し無効化した。
そこへ、対物ナイフを保持した陸駆の妹が駆る機体が後部甲板に舞い降り、甲板へと斬撃を与えた。
そこで龍弥は察した。
一応の警告を発し、無視《攻撃》したら殲滅する。最初からそういうつもりだったのだ。
「どうなっても知らんからな!」
言いながらも、龍弥は敵艦に向けて発砲を開始した。
その頃。
《信濃》CIC。
「───艦長!強行偵察部隊が攻撃を始めました!」
優里が叫ぶが、それに対し絆像は「それがどうした」という様な表情で言う。
「何か緊急事態があったら攻撃しろ、と前以て言ってあるぞ」
「えぇ!!?」
驚愕の反応を返す優里を他所に「さてと、我々も彼等に続くかな!」と言うなり、
「航海長!サイドキック小、面舵!
武彦!右舷副砲、全門《零式弾》装填!
日沖!VLS、右舷一番にトマホーク、三番にハープーン、各種装填!」
吼える様な勢いで指示を促した。
「了解、面舵!」
復唱し、航は舵を右に切り出す。
「右舷副砲一番から五番!
《零式弾》装填完了!」
「各VLS装填完了!
こっちも行けますぜ!」
菊地 武彦も、日沖統花も、それぞれ兵装の準備が整ったことを伝えた。
「さぁて、開幕にでかい花火を打ち上げてやろうか!
優里、各艦に通信『第一種戦闘配備、攻撃用意』!
それと《第十三水雷戦隊》に通信『空母《祥鳳》の救援と曳航を求む』!」
そう言い放った絆像に「了解しました」と返す優里。
すると、
「右舷副砲、砲戦用意!
VLS、副砲斉射と同時にトマホーク、ハープーンを同時発射!
目標、敵戦艦級!照準合わせ!」
そう命じ、直後「撃てぇっ!!!」と吼えた。
戦艦《信濃》右舷副砲が、謎の艦隊に向け斉射される。
《零式呂号気化弾》───弾頭部が気化爆弾となっている汎用弾。それが十五発、時限信管により艦隊のすぐ上で破裂し、その空間にトマホークが飛んできた。
直後盛大な爆発が起こり、艦隊を業火が包んだ。
《信濃》CIC。
「敵艦隊コルベット級七隻、フリゲート級三隻、沈黙!」
優里が報告。
「右舷副砲、全門《一式弾》装填!
完了次第、射撃態勢!」
絆像の指揮に対し「了解!」と吼える様に返す武彦。
その時、
「艦長!敵戦艦級より、砲撃来ます!」
優里が警告を発した。
「優里、CIWS起動!」
「了解!」
コンソールを操作し、CIWS (近接防御火器システム) を起動する優里。
起動した20mmガトリングCIWS “ファランクス” 二十基が弾幕を展開し、砲弾から艦を護る。
「日沖!VLSの状況は?」
「ハープーンが残り二十、トマホーク残り十一、シースパロー残り十八!」
「ハープーン三発、シースパロー五発装填し射撃態勢」
「了解!」
「副砲《一式弾》、装填完了!」
「右舷副砲、撃───!」
その時。
『貴艦に告ぐ』
何物かからの通信が入る。
声質としてはまだ若いが、それなりに年期が入っているかと思える口調だった。
音声のみの通信だったが、それが誰からのものだったのかは簡単に察せた。
『我々の名は、《真紅の騎士団》』
そう、敵は名乗った。
「《真紅の騎士団》?」
その名前に、絆像は聞き覚えがあった。
「あの有名な義賊か、その名を騙るパチものか?」
中東、東アフリカ周辺にて猛威を振るう義賊の組織名だったはずだ。海賊とは聞いていない。
『宣戦布告をしておいて、こう言うのもどうかと思うが、停戦しては頂けないだろうか。
《大日本共和国連邦海軍 第一遊撃部隊》殿』
「何故我々の隊名を───?」
『彼等が話していたのでな』
「彼等……まさか───!!!」
画面に映像が映った。
艦内食堂の様な場所。アングルからして、おそらく映像を撮影しているのは監視カメラだろう。そこに映っているのは───《信濃》航空隊強行偵察部隊のメンバー八人の姿だった。
「お前等……」
全員が全員「どうしてこうなった」とでも言いたげな複雑な心境そうな表情をしていたが、あまり悪い待遇はされていなかった様である。現に、各員の目の前にはスープらしきものが入った皿とパンと缶詰めが用意されていた。もっとも、口にしているものは誰も居なかったが。
《真紅の騎士団》所属の《ジブリール》級フリゲート三番艦の艦内にて。
「どうしてこうなった」という様な表情を見せる八人。
気まずかったということもあり、僚は匙を持ち「いただきます」と言ってスープをいただくことにした。
海老が入った赤いスープ。
隣に座る電子が止めようとするが「食べなきゃ誰が食べるんだ」と訳のわからないがごもっともなことを言いながらスープを口に運んだ。
「───ッ!!?」
激辛。そして酸っぱい。
熱かったのもあっておもいっきり咽せる。
「はわっ、僚さん!!?」
慌てた電子に「だ、大丈夫。咽せただけだから」と言って僚は落ち着かせた。
その場に、一人の男性が近づいてきて言った。
「皆さん、トムヤムクンはお嫌いかな?」
日本人の様な外見の男。
「トムヤムクン?」と聞き返す僚。
「辛味と酸味の利いた魚介と山菜のスープだ。もし口に合わなかったら申し訳ない」
そう言って男は、サラダを持ってきた。
「え?あ、いえ、大丈夫です。
でも、すみません。こんな───」
そう言ったその時「おい、隊長」と、龍弥に小声で呼ばれた。
「俺等、なしてこうなったん?
まるで意味がわからんぞ」
そう小声で言われる。
それに対し、
「うーん……どうして、こうなったんだろう……」
一人愚痴る僚だった。
次回予告
なんやかんやで停戦した深紅の騎士団と第一遊撃部隊
彼らの事情を知った第一遊撃部隊は彼らの処遇について悶着しかける
だが、そこに忍び寄る影が……?
次回、紅蓮の艦隊 -the Great Battleship of Scarlet Fleet-
第十二話:果敢に進む彼等
仮初めの平和―――少年はこの世界に、何を見るのか




