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紅蓮の艦隊 -the Great Battleship of Scarlet Fleet-  作者: OH‐
第一章:240年前の未来
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第零話:プロローグ

二〇三三年 三月

日本のとある町の川辺にて。


「嫌だ嫌だぁ!」

 とある少女が泣いていた。

 今住んでいるこの町を、親の都合で離れることになった為だ。

 それに対し、

「良いじゃない。

あの街、ここからじゃ行こうって言って行けるとこじゃないんだよ?」

 少女の隣にいた少年が、彼女に言った。

「そうだけど……」

「……ほら、涙拭いて」

 そう言って、少年は少女の目元に溜まった涙を拭う。

 そっぽを向きながら呟く様に「……ありがと」と礼をいう彼女に「良いよ」と応える彼。

 暫しの沈黙。

 その後、他愛もない話をし合った。

 彼にとっても、彼女との別れはとても辛いことだから。

 そして、別れの時───。

 彼女が「バイバイ」と言い、車に乗った。彼女はその目に涙を浮かべている。

 泣かないでよ、泣きたいのはこっちもだってのに……。

 そう思った少年は、

「また、いつか会おうね」

 本心からそう言った。

「───!」

 言われた少女は、満面の笑みを浮かべ、

「……うん!

絶対だからね!約束よ!」

 窓から顔を出してそう叫んだ。

「うん!約束するよ───」

 そう言って少年は、笑顔で彼女を見送った。彼女の名を呼んで。


「───ふ……うぅ、ぃ…………」

自分の言いかけた寝言で少年は目覚めた。

「……あれ?」


二〇四一年 四月


 電車の中。窓から外を見ると、乗っていた電車が市街地を走っているのが分かる。

 見ていた夢の余韻に浸りながら、少年は溜め息をついた。

 夢の中の光景は、彼がまだ九歳だった頃の記憶だ。

何故今さら───?

 彼がそう思ったその時、車内でアナウンスが響く。

『まもなく、横須賀、横須賀。

御出口は───』

あぁ、そうか。


 少年───有本(ありもと) (りょう)は、走る電車の窓から空を見上げた。




一九三一年 九月十八日

南満州鉄道が爆破されたとして関東軍 (満州に在来していた大日本帝国軍) が奉天、南満州を占領する《満州事変》が起きる。


一九三二年 一月三日

錦州占領。


中国側は日本軍の軍事行動を侵略行為として国際連盟に提訴し、一九三二年 三月、リットン調査団が派遣され、十月二日に日本の主張を認めない報告を発表する。


一九三三年 二月二十四日

国連はリットン調査団の報告を採択、日本は三月二十七日に国際連盟からの脱退を通告した。


その後、一九三五年。

満州占領。


その後、日中間で小競り合いや睨み合いが起きる中、一九三七年 二月から一九四一年 七月にかけて、日本は南方・北方に海軍戦力を投入。


戦闘こそ無かったが、占領に近い行為を行い、『もし、太平洋で大規模な戦争が起きた場合、ここを護れれば安泰だろう。だが、ここを護れず獲られれば、日本は敗れるであろう』とする───東はサイパン、西は台湾、南はトラック、北はキスカの四島を基点とする───《絶対国防圏》を構築。


そして、

一九四一年 十二月某日。


 天皇陛下が、国連より招いた世界各国の記者団の元で会見を開き、そこで演説を行った。

『───本日を以て、我々皇族は政権から離脱する。

今までの帝国主義の考えを捨て、民主主義、共和主義を掲げ、そして何よりも、今まで植民地化させていた領土を含む全ての領土とそこに住む国民に自由と権利を与える。

そして、連邦制を採用、制定する。

これにより、《大日本帝国》改め《大日本共和国連邦》の制定とし、来年一月より執行とする!』

天皇陛下の演説により、日本は帝国制の廃止と共和化、連邦制制定が決まり、《大日本共和国連邦》となった。

それまで《絶対国防圏》としていた領域を正式な領土とし、その地域にいた住民を本土民と平等に扱い国民として参画させる、ということだ。

それは、簡単に成し遂げられることではないはずだった。当時、一九三九年九月一日にて、ドイツ軍がポーランドへ侵攻したことによって第二次世界大戦が勃発しており、世界は酷く醜く、混沌としていた。実際、建国早々の一九四二年 二月にはソビエト連邦が宣戦布告し、満州に侵攻してきたことにより《日ソ戦争》が勃発、さらに中華民国が参戦し《極東亜細亜戦争》にまで発展。物量では明らかに負けていたし、限りなく劣勢だった。

辛うじて敗北しなかった理由、初めて日本が勝利した《覇一号作戦》。

戦艦《長門》を旗艦とする第一部隊が物量攻めの中国艦隊と戦闘する《第二次黄海海戦》と、戦艦《大和》を旗艦とする第二部隊がソ連艦隊と戦闘する《第二次日本海海戦》の、二面同時作戦。甚大な被害を出しながらも両軍を殲滅した。

そこからの、戦艦《長門》《日向》《榛名》《大和》の四隻と、当時最新鋭だった高雄型を始めとする重巡八隻による陸上敵要塞への集中砲撃。

その寸刻前、それに続いて舞鶴港に待機していた後発隊が出撃。正規空母、第一航空戦隊所属《赤城》《加賀》、第二航空戦隊所属《蒼龍》《飛龍》、第五航空戦隊所属《瑞鶴》《翔鶴》《大鳳》の艦載機による空襲、と続いた波状攻撃。

この戦闘が与えた影響は大きかった。

新しく登場した航空母艦という新艦種の有用性が証明され、さらには、“破壊だけが取り柄の無用物”という、悪くなりつつあった戦艦に対する評価を“祖国を護る女神”というものへと変えた。

追記するならこの頃、日本海軍が誇る《大和型戦艦》、《大鳳型航空母艦》には動力に原子炉を搭載していた。少量の核燃料で、無限に在らずとも無限に等しい量のエネルギーを生み出すこれの搭載により、戦艦や空母の最大の欠点であった『運用に当たって相当量の燃料を消費する』という、いわば燃費の問題が大幅に改善された。これも、日本軍の勝利に貢献した要因の一つだろうし、戦艦や空母の評価や利用価値を上げた最大の要因の一つでもあろう。

これにより劣勢を覆したのだが、結局のところ全体的には劣勢なことには変わらず《極東亜細亜戦争》は「アメリカ、イギリスが仲介のもとでの和平交渉」により、勝ちとも負けとも取れぬ結果に終わった───ちなみにソ連はこの戦争の後に《東ロシア帝国》と《ソビエト超国家主義社会国》に、中国も《新清(しん)》を始めとする複数の国家に分裂してしまう。

それでも日本は、イギリスやアメリカの援助などもあり結果的に上手くまとまり国家として安定していった。


そしてそのまま、百年近くの歳月が経とうとしていた───。



───だが、世界というものはそう単純ではない。


一九九〇年、湾岸戦争にて。

多国籍軍として入ったアメリカ陸軍のとある部隊が、当時はまだ試作段階の兵器であった有人単座操縦式人型機動戦闘車両《騎甲戦車》を実戦に導入し、その戦いの終結に貢献した。

それ以来、各先進国で《騎甲戦車》が配備される。

戦車から派生したこの人型機動兵器の登場により、人類は戦史に新たな頁を開いてしまう。

皮肉にも、古より伝わりし『歩兵による白兵戦』というカテゴリによって───。




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