決心:踏み台勇者に俺はなる!
大まかなストーリーが決定。
・野望成就のために、『踏み台勇者』が主人公(成り上がり)をわっしょいするお話。
勘違い要素が少し出てくるため勘違いタグを追加予定。
※注意※しょうもない小ネタが所々に挟んでいます。
窮屈な日常から開放された新たな人生の始まり。
もう誰にも束縛されない。これからは自分の好きなように生きられる。俺にとって、第二の人生はとても素晴らしいものになるだろう。召喚された時の俺は本気でそう信じていた。
だがしかし、召喚後の人生が必ずしも素晴らしいものであるとは限らない。小説の主人公達の中にも、いきなり魔物が蠢く森の中へ召喚された者がいた。暗い森の中で一人寂しく過ごし、凶悪な魔物に怯えながら生きる日々。死と隣り合わせの日常が、主人公の心を徐々に疲弊させていく。
しかし、主人公は負けなかった。生存本能に従い強く生き抜いた主人公は本物の強者となる。まだ見ぬ可能性を信じ続けた主人公の心の強さは賞賛に値するものだ。
『踏み台勇者』という最悪なポジションについてしまったが、なってしまったものは仕方がない。俺も小説の主人公を見習い心を強く持とう。
気持ちを新たに、俺は新しい朝を迎えた。
「すげえ!羽追の奴すげえ!」
「でも、羽追君がやると全然普通に見えるんだよねー」
「あー分かる。羽追君ってどんなことでもできちゃいそうだもん」
「流石は羽追様です!」
歴戦の主人公達よ、俺はもうダメかもしれない。いくら心を強く持っても、この状況にはとても耐えられない。
現在、俺達は城の訓練場で戦いの訓練を受けている。召喚後に城で訓練。これもお約束展開の一つだ。俺達も例に漏れず、召喚された翌日から早速訓練が開始された。
皆最初は戸惑っていたが、数日経過した今ではコツを掴んだ一部の人間が頭角を現し始めている。まあ、この頭角を現し始めた一部の人間というのもお約束のメンバーだ。
緒方の幼馴染である西条茜。西条の親友である島田真奈美。大川真二率いる不良一派。そして、俺だ。
緒方はステータスの低さから戦闘参加は不可能と判断され、今は裏方として皆のフォローに回っている。
西条と島田からは気遣われたり、大川達からは必要以上にこき使われたりと栄光の主人公街道を順調に進む緒方。片や俺は周囲から絶賛の嵐と、断崖絶壁がゴールの噛ませ犬路線を進行中。
ほとんどの小説ではフェードアウトが定石だったが、一部では凶悪な魔物の噛ませ犬として惨めに無残に殺されたり主人公に直接蹂躙されるというものもあった。
プロットが存在しない以上『この物語』では先の展開がまったく読めない。どの結末にもたどり着く可能性は十分にある。
ああ、憂鬱だ。これから先、自分がどれだけ頑張っても先に待っているのは『踏み台勇者』という結末。
一体誰だったか。「報われない努力は無い」などと言ったのは。腹いせとして謝罪と賠償を請求してやりたい。
「では、本日の訓練を終了とする!一同、解散!」
日が西に傾き始めた頃、騎士団長から訓練の終了が宣言された。
訓練を受けていた者達は緒方と他五名のクラスメイトで構成された裏方組から水やらタオルやらを受け取る。
訓練場でしばらく休憩した後、俺は自室割り当てられた部屋へと向かった。外を散歩したり、城を探索することもしない。当ても無く外をふらつくと『勇敢系踏み台勇者』特有の『不特定多数の異性から話しかけられる』の法則が発動してしまい、心が休まらないからだ。
誰も気遣うことなく、心の底からリラックスできる空間。自室は俺の聖域だ。謎の素材で作られたふかふかのベッドが、俺の荒んだ心を癒してくれる。
部屋の入り口まで到着した俺は、扉の取っ手へと手をかけた。
「誰だ」
訓練場から誰かが背後にいることは気付いていた。おそらく部屋が同じ方向なのだろうと思っていたが、俺が部屋の前で立ち止まると同時に相手の動きも止まった。どうやら、相手は俺のあとをつけていたようだ。
俺の呼びかけから数秒後、廊下の柱から一人の男が姿を現した。
「フッ、俺の隠形を見破るとは。流石は最強の勇者だ」
「佐竹」
姿を現したのはクラスメイトの『佐竹裕也』だった。
俺は満足げな表情で近づいてきた佐竹に対し用件を聞く。佐竹は元気な声で答えた。
「そりゃお前、物語の主要人物の顔を拝みに来たんだよ」
「!!」
なるほど、大体分かった。
どうやらコイツは俺と同じ知識を有しているらしい。俺も主人公(緒方)が気になって近づいたからな。気持ちは良く分かる。
ただ、出会いがしらに「主要人物」とか言葉に出すのは止めたほうがいいと思う。十中八九、相手に変な奴と認定されるだろうからな。
俺は佐竹が反応するであろう言葉をあえて選び、返事を返した。
「そうだな。俺の称号は無駄に豪勢で、ステータス値は無駄に高く、スキルの数も無駄に多いからな」
「ッ!!…………イケメンでなおかつ文武両道でもあるし」
「そしてクラスのリーダー的存在でもある」
「んで、女にもモテモテだ」
珍しく仕事をした俺の表情筋が、俺の口角を僅かに吊り上げた。佐竹も小さく笑みを浮かべる。
お互い、これ以上の言葉は要らなかった。俺は佐竹を部屋へと招きいれた。
「驚いたぜ、まさか羽追に通じるなんて思ってなかった」
「まあな。昔から自由に外出も出来なかったし、出来ることは限られていたんだ」
「……お前、苦労してんだな」
少ししんみりとした空気になったが、話題はすぐに切り替わる。もちろん、異世界召喚についてだ。
佐竹も俺と同じ小説サイトを利用しており、話は思っていた以上に弾んだ。
佐竹も異世界召喚に憧れていたこと、クラスの構成が異世界召喚される面子に溢れていて驚いたこと、異世界でやりたいこと。気がつけば、外は茜色に染まっていた。
「で、羽追。お前はこれからどうすんだ?」
そして、会話はいよいよ俺の話題へと移った。俺の『踏み台勇者』としての今後についてだ。
佐竹は俺に『踏み台勇者』らしい振る舞いをするべきだと熱弁する。しかし、あの気が違っているとしか思えない行動を実行するにはかなりの勇気が必要だ。
俺は「僕は正義だ!」と初見でためらいも無く生き物を惨殺出来てしまうような屈強な精神力を持ち合わせてはいない。
出会って間もない女性の手をとって、キメ顔で「君は僕が守るから」などと恥ずかしい台詞を言ったりはできない。
あれはフィクションの世界の住人だからこそ出来る所業であり、現実を生きる人間には到底真似できるようなものではないと思う。
俺は佐竹にそう返すが、佐竹は頑として意見を曲げない。
「お前だってずっと待ってたんだろ?異世界に召喚されて、異世界を冒険する、そんなお約束とテンプレに満ち溢れた最高な展開を!」
「まあ、そうだけど」
「楽しみにしていたんだろ、今の状況を!お前には力がある、お前にしか出来ないことがあるんだ!他の何者でもない、テメェがその手で『この物語』を作るんだよ!」
「お、おう」
「お前は物語の登場人物じゃねえ!お前は『この物語』の書き手になるんだ!」
書き手?出会い頭に俺の事を「物語の主要人物」と言ったのはどこの誰だったか、覚えていないのだろうか。
「これはお前の物語だ!」
「わ、わかった。分かったから少し落ち着け」
佐竹が異世界召喚にかける情熱は俺以上のようだ。あまりの熱気に思わず気圧されてしまった。
だが、佐竹の言うことも一理ある。どうせ最後は踏み台にされると暗いことばかり考えて過ごすよりは、自分が物語を作っているんだと考えたほうが幾分か気が楽になるかもしれない。
言うなれば演劇と一緒だ。俺が脚本と役者を同時に担当していると考えれば、後の踏み台展開も全て俺の考えた筋書き通りで、俺が踏み台にされるのも『やらせ』と割り切ることが出来る。
よくよく考えてみれば、悪い考えではないのかもしれない。
「とりあえず、出来るところまではやってみるよ」
「本当か!?」
「あぁ」
佐竹は俺の言葉を聞いて両手を強く握った。
「そうかそうか!よかった!俺は影から応援しているぞ!」
「手助けはしてくれないのか……人事だと思って」
この世界は現実でフィクションではない。不測の事態は避けられないし、遊び半分の気持ちでやっていけるほど勇者というのは簡単なものではないと思う。
だが、ずっと思い詰めているよりはいい。踏み台の宿命、周囲の期待、人類の未来、沢山の重たい荷物を背負って生きていくことになる。押しつぶされないようにするための工夫も必要だ。
俺は佐竹に右手を差し伸べた。佐竹は俺の手を握り、硬い握手が交わされた。
「それじゃあ、改めてよろしく。佐竹」
「ああ!よろしくな羽追!んじゃ、早速ステータス公開とスキルの確認といこうじゃないか!」
「えっ」
握手を終えた瞬間、佐竹は目を輝かせ俺にそう言った。
スキルの確認。異世界に来たばかりの主人公が自分のスキルを初めて確認した時、スキルのあまりにも強力すぎる効果を見て「インチキ効果もいい加減にしろ!」と自分自身にツッコミを入れる。これもお約束の一つだ。
「でも、そういうのは緒方(主人公)のやるだろ。俺には関係の無い事じゃ……」
「違う違う!お約束とかそういうの関係無しに、ただ単純に俺が気になるってだけの話だから」
「ああ、そういうことか」
「そゆこと。ほら、早く見せてくれよ」
俺はステータスカードを取り出し佐竹に渡した。
だが、佐竹は俺のステータスカードをすぐに返す。一体何故、と思っていると、佐竹の方から説明を始めた。どうやら、スキルの詳細表示はカードの持ち主にしか出来ないらしい。
「こんな感じだ」
佐竹は自分のステータスカードを取り出し、俺の目の前に掲げた。
名前 :佐竹裕也
レベル:3
称号 :勇者 隠を行く者
種族 :人間
体力 :110
魔力 :90
攻撃 :85
防御 :85
敏捷 :190
スキル:【体術 Lv1】
・肉体を駆使した戦闘術を学んだ証。
攻撃、防御のステータス上昇(小)
【静動 Lv2】
・スキル発動中のみ無音での行動が可能。
敏捷のステータス上昇(中)
【気配遮断Lv1】
・一時の間、気配を完全に絶つ。
佐竹の説明によれば、見たいスキルに意識を集中させれば自然と浮かび上がるそうだ。俺は佐竹にステータスを公開した。
名前 :羽追圭吾
レベル:Lv1
称号 :光の加護を受けし最強の勇者 覇道を極め伝説を塗り替える者
種族 :人間
体力 :22412
魔力 :34525
攻撃 :55667
防御 :54453
敏捷 :56485
スキル:【剣術 Lv1】【体術 Lv1】【槍術 Lv1】【弓術 Lv1】【棒術 Lv1】
【騎乗術 Lv1】【魔術 Lv1】【精霊術 Lv1】【召喚術 Lv1】
【錬金術 Lv1】【威圧 Lv1】【雷光 Lv1】【夢幻 Lv1】
【強化 Lv1】【加速 Lv1】【解析 Lv1】【天運 Lv1】【直感 Lv1】
【探知 Lv1】【魅了 Lv3】【調合 Lv1】【威厳 Lv1】【龍気 Lv1】
【気配遮断Lv1】【自動回復 Lv1】【全属性強化 Lv1】
【全属性耐性 Lv1】【状態異常耐性 Lv1】【覇撃 LvXX】
【光の加護 LvXX】【真実の瞳 LvXX】【限界突破LvXX】
【アギトLvXX】【ファイ LvXX】
「テンプレすぎだろ」と引き笑いを浮かべる佐竹。自分で見たいと言っておきながらその反応はひどいと思う。
俺の心が沈んだことを察したのか、佐竹はあからさまに声を張り上げ話題の切り替えを図った。次はスキルの詳細確認を行うことになった。
【剣術 Lv1】・剣を駆使した戦闘術を学んだ証。
攻撃、防御のステータス上昇(小)
【体術 Lv1】・肉体を駆使した戦闘術を学んだ証。
攻撃、防御のステータス上昇(小)
【槍術 Lv1】・槍を駆使した戦闘術を学んだ証。
攻撃、防御のステータス上昇(小)
【弓術 Lv1】・弓を駆使した戦闘術を学んだ証。
攻撃、防御のステータス上昇(小)
【棒術 Lv1】・棒を駆使した戦闘術を学んだ証。
攻撃、防御のステータス上昇(小)
【騎乗術 Lv1】・乗物をうまく扱うことが出来る。
乗物操縦時のみ発動。
【魔術 Lv1】・魔力を用いた術の発動を可能とする。
魔力のステータス上昇(中)
【精霊術 Lv1】・精霊の力を用いた術の発動を可能とする。
魔力のステータス上昇(中)
【召喚術 Lv1】・契約を交わした者をその場に召喚できる。
魔力のステータス上昇(中)
【錬金術 Lv1】・物体を掛け合わせ別の物体を精製することが可能となる。
魔力のステータス上昇(小)
【威圧 Lv1】・自分の存在感を増加し相手を萎縮させる。
【雷光 Lv1】・魔力を元に雷を発生させる。
勇者にのみ発現するスキル。
【夢幻 Lv1】・分身を生み出す。
分身の数はスキルレベルによって変化。
【強化 Lv1】・物体に魔力を流し込み強度の底上げを行う。
【加速 Lv1】・一時の間、自身の速度を上昇させる。
敏捷のステータス上昇(小)
【解析 Lv1】・触れたモノの情報を入手できる。
【天運 Lv1】・神に愛されし者。スキルによるステータス補正値上昇。
全ステータス上昇(特大)ステータス補正値上昇(大)
【直感 Lv1】・身に迫る危険を察知する。
【探知 Lv1】・一定範囲内の魔力を探知する。
【魅了 Lv3】・一時の間、相手の意識を自分に向ける。
【調合 Lv1】・複数の植物を掛け合わせ薬品を精製することが可能となる。
【威厳 Lv1】・周囲からの信頼を得やすくなる。
【龍気 Lv1】・『ドラゴンナイト』の素質を秘めた者にのみ発現するスキル。
【気配遮断Lv1】・一時の間、気配を完全に絶つ。
【自動回復 Lv1】・自然回復の回復度が上昇。
回復度はスキルレベルによって変化。
【全属性強化 Lv1】・属性攻撃の攻撃力が一段階上昇。
【全属性耐性 Lv1】・属性攻撃に対する防御力が一段階上昇。
【状態異常耐性 Lv1】・状態異常の発生率を下げる。
発生率はスキルレベルによって変化。
【覇撃 LvXX】・相手の防御を貫通する攻撃を放つ。最強の証。
攻撃と敏捷のステータス上昇(特大)/レベルレススキル
【光の加護 LvXX】・下位攻撃魔法及び呪術無効化。
意図的に剣を煌かせることが出来る。
防御のステータス上昇(特大)/レベルレススキル
【真実の瞳 LvXX】・隠された真実を暴く。見通し。
体力のステータス上昇(特大)/レベルレススキル
【限界突破LvXX】・レベルアップ時のステータス上昇値増加。
レベル上限値開放。
レベルアップ時のステータス上昇値補正(極大)
必要経験値増加(特大)/レベルレススキル
【アギトLvXX】・進化の可能性を秘めた鍵。目覚めろ、その魂。
スキル熟練度上昇値補正(大)/レベルレススキル
【ファイ LvXX】・離れた相手との会話が可能。いわゆる念話。
魔力のステータス上昇(特大)/レベルレススキル
自分で言うのも何だが、これはないと思う。
お約束要素の一つである『チート』と言えばそれまでだが、それでも言わせて欲しい。このスキルはおかしい。異常だ。
果たして、緒方はこの反則染みたステータスとスキルを持つ俺を超えられるのだろうか。緒方の普段のイメージからして、彼が俺を超える光景がまったく思い浮かばない。
もし緒方が力に目覚めなかったら、緒方が俺の力を超えられなかったら、俺はこの先どうすればいいのだろうか。
「決まってんだろ。羽追が主人公になって異世界無双すればいい」
俺の問いに対し、佐竹はあっけらかんと答えた。曰く、俺が最強なのであれば『踏み台勇者』あらため『最強万能型勇者』として異世界に革命の嵐を巻き起こせばいいらしい。佐竹は読み手の立場から動くつもりはないようだ。
なるほど、それもまたお約束の一つ。異世界召喚にお熱な佐竹らしい答えだ。しかし、佐竹の思い描いく未来と俺の思い描く未来はまったく別物。
俺が異世界でやりたいのは自由気ままに異世界を旅すること。勇者として迫り来る強敵達と戦うことではない。
「ていうか、そっちの方がお前的にもよくね?お前、このままいけば死ぬかもしれないんだぞ?」
「縁起の悪いことをいうな。本当に死んだらどうする」
考えないようにしていたのに。まったく、余計なことを思い出させてくれたな。
「いやいや、ここまでテンプレ尽くしなんだからありえる話だぜ。死んだら王女様とか悲しむんじゃね?ああ、私のケイゴ様……どうしてっ、てさ」
「だから、縁起の悪い話はやめ……」
いや、待てよ。逆に考えるんだ。むしろ死んだほうが、俺にとっては都合がいいじゃないか。
佐竹の言葉と、歴代の異世界召喚主人公達から学んだ知識が、俺にたった一つの冴えたやり方を教えてくれた。
自分の死を偽装する。
いじめっ子達の策にかかった主人公は王宮で死亡扱いされ、行く当てもない主人公は異世界を放浪し、出会った仲間達と共に自由気ままな日々を送る。
これも見慣れたお約束パターンだが、これを『踏み台勇者』の転落過程の途中に組み込むとどうなるか。大まかな流れはこうだ。
ある日、ダンジョン攻略に勤しんでいた俺達の前に凶悪なモンスターが姿を現す。なんという強さだ。こいつは俺達では勝てない。焦る俺は「緒方を呼べ!」と仲間に叫ぶ。
そして、最後にこの台詞だ。
「ここは俺が引き受ける!お前達は緒方を呼んできてくれ、頼んだぞ!」
『踏み台勇者』らしくはないが、主人公を立てるという意味合いでは十分『踏み台勇者』としての役割を果たしていると思う。
仲間がいなくなった後、戦場に服の切れ端や武器をばら撒けば偽装は完成だ。
フェードアウトでは意味がない。ステータスを知られてしまった以上、国王は俺の勇者としての力を簡単に手放したりはしないはず。出ていきたいと言って、それが了承される可能性は低い。
となれば、残された手段は死亡扱いしかない。時間は少しかかってしまうが、力による恐喝や強行脱出などといった後に危険を伴うやり方よりはずっと確実だ。
「ま、多分緒方はチートに目覚めるだろうけどな。見たか?アイツのステータス」
「ああ。まさに主人公だった」
まだまだ計画には穴がある。それは追々埋めていくとして、今考えるべきことは緒方の事だ。この計画は緒方が覚醒していることを前提としているため、緒方には何が何でも覚醒してもらわなければならない。ここで俺に出来ることはお約束の発動を祈るのみだ。
また、力を手に入れた緒方が今後どういった行動に出るかも重要だ。彼の性格を把握できていないため判断に困るが、彼の行動次第で計画も大きく変わってくる。一応、複数の案を考えておこう。
他にも、計画が進むにつれて危険に晒される頻度が多くなるクラスメイト達のフォローも必要だ。やること多い。
「……よし」
全ては俺の自由のために。こうして、俺の野望成就に向けた『踏み台勇者』の日々が幕を開けた。