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雨季  作者: 秋雨 玲翔
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雨上がり

「…あはは。静花、酷いことをするね。後でお仕置きだね。」

そう言いながら悲しそうな目をして俯く。

「どうしてほしい?2人とも。前回はね、記憶を消して済ませたの。今回もそうする?」

「前……回?」

何を言っている?前回?

「梅雨の時はこんなことなかったのに。」

「私たち……会ったこと……あるの?」

雫雨も困惑している。僕も整理がつかない。

「私は雨と呼ばれる存在。昔はね、干ばつや豪雨に無力だったの。何十世紀も前の話だけどね。その頃は私のような神や空想のものに頼ってた。そして生贄を捧げるようになっていたの。そして、私はその生贄の中の1人の女の子の体を使って今の私みたいに動けるようにしたの。もちろん、女の子の許可は取ったよ。」

「「……。」」

話が広大過ぎてついていけなかった。でも、理解しようと雫雨と僕は黙って聞いていた。

「最近の人たちは雨を嫌うの。都合良く雨降ってほしいとか。私はとても悲しかった。でもそんな中、梅雨の時期に私は街を歩いているとある男の子が傘もささないで歩いていたの。で、その子はこう言ったの。『雨は好きだな。僕みたいで。』って。珍しくて、不思議な男の子で興味を持った。で、話しかけて好きになった。考え方、行動。全部。その後に女の子にも会ったの。そして、話したり遊んだり。楽しかった。でも、私は期限があるから。私はもともと前線って存在なの。」

「停滞前線か。」

梅雨前線とかってことだな。

「そう、だから私は去ることは必然的なの。」

「で、でもさ!人間の体なのに?限定されるの?期限とかさ!」

「雨って日本だけなの?雫雨。」

「……そっか。」

そうだ。雨は他の国でも降る。海の上でも。どこででも。

「私は色んなところを行き来する。だから、私は待たせるのが嫌だったから記憶を消したの。また、笑って会えるように。また、笑って去れるように。そうした方がいいって同じ雨である静花に聞いたの。」

年に2回。でも、そんなのは

「ばーか。そんなんで消すな。年に2回も会えるんだぞ?消すな。待つのは辛いけど会うとき待った分だけ楽しいんだぞ?」

「うん。だからさ、凛花。消さないで。私たちは私たちのまま居てよう。」

「でも……待たせたくない……。」

凛花が俯いてると僕たちは今日のために持ってきたものを見せた。

「ばーか。待たせるんじゃない。次に会うための予約だよ。ほら、こんな傘置いた行ったバカと同じだよ。」

「え……!……思い出したの?」

「うん。この傘見てるとね、懐かしくなってきて。そして、凛花のこと考えて傘をさすとね、すべて思い出せたの。」

昨日、雫雨には連絡してた。だからできた。記憶を取り戻すこと。

僕たちの手には雨の色に染められた傘が二つ。手元にあった。

そう、あの時もらった傘だ。


ある少女が言った

「雨は嫌いじゃないなぁ。冷たくて気持ち良くてさ、代わりにないてくれてるみたいでさ。」

僕は言った。

「それでも人々は嫌うよ。雨を。雨に関する僕たちを。」

「それでもいいじゃん。雨はね、玲翔。私たちの乾ききった心にも恵みの雨として降ってくれるんだよ?」

「そうだといいね。」

僕とその少女は雨の中、傘もささないで話していた。少女は不思議な子だった。いきなり雨は好き?と聞いてきたのだから。

そして、会話は続く。

「ね、玲翔、雨が好きな子って他にいるかな?」

「いると思うよ。」

そういうと、目をキラキラさせてその少女は言った。

「ね!探しに行こうよ!雨の好きな仲間。雨の人達を!」

こうして、出会ったのが雫雨。この時は飛び降りとかしていなくて教室で連れ出して質問責めにしたんだった。


この時は能力もなく、ただ、デザート食べに行ったりとか雑談とかで時間を過ごしていた。学生のように。

でも時間は過ぎて夏に入りかけた頃。

「ね、2人とも。プレゼントをあげる!」

「「プレゼント?」」

僕たちは首を傾げた。誰かの誕生日でもないのになぜ?

「はい!雨が降ると水色になる傘!役に立つよ!」

そう言ってビニール傘みたいな傘を僕達に手渡した。

「面白い傘だね。」

雫雨はやんわりとした笑顔で言った。

「大切にしてね!私たちは永遠なの!その傘がある限り!だからさ……ずっと持ってて!」

「「うん。」」

言葉の中に重たいものを感じてはいた。けどこの時は気づくことができなかったんだ。僕たちは。


「……玲翔……雫雨……覚えててくれたんだね。」

目に涙を浮かべて流す凛花はまるで土砂降りの中ようだった。

「大切にし続けたよ。そして出会えた。」

「凛花。もう、我慢しなくていいからね。私たちは待ってる。ずっと。雨が大好きだから。だから凛花。少し我慢してね。」

「……うん。……また会えるなら私は頑張る。」

涙が止まらない凛花をなぐさめるまで僕達はゆっくりと時間を過ごした。梅雨のことも思い出しながら。


この後、僕達はいつも通りの生活に戻った。そして、秋雨の時期は過ぎていった。

僕の中にも、雫雨の中にも記憶がある。だから僕達はまた会えるように、凛花の好きなプリンをたくさん食べれるように待っておくだけ。


6月。

また僕と雫雨は2人で傘もささないで歩いていた。でも、傘は持っていた。水色に染まっている傘だ。ちなみに、もう、僕にも雫雨にも能力はない。

「雨は好きだぞ。そろそろ来てもいいんじゃないか?」

「遅刻したら置いていくよー。」

そう2人で言ってると、

目の前に水色の光と共に見知った顔が現れた。

「ね!2人とも。プリンある!?」

今日の雨は晴れながら降り続けるみたいだ。


僕は雨が好きだ。それは僕達がいる限り変わらない。それが雨の僕達の繋がりだ。

みなさん。こんな雨なら好きになれますか?

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