五月雨
僕たち3人でいることがすっかり当たり前になったある日。また僕たちは屋上にいた。もちろん雨の中。ちなみに、雨の人たちは雨の冷たさなど感じないため風邪を引くことはない。
「ねぇ、凛花、この能力っていつかは治るの?」
「あんまりわかんないけど治ると思うよ。…そうだね。そろそろしたらかもね。」
「「?」」
僕と雫雨が首を傾げる。
そろそろ?どういうことだ?
「とりあえずお弁当食べよ!お腹すいたー。」
そういって凛花が幸せそうにプリンを食べ出したので僕たちの疑問を聞くことはできなかった。
凛花はいつも不思議だった。あの傘の不思議。そして、毎回常に最初に屋上にいること。隣のクラスに行っても見つからないこと。そして、なにより雨のことに関しての情報を持ち過ぎている。怪しい。
ある日曜日、僕は外に出かけていた。今日も雨だ。梅雨の秋バージョン。僕の名字である秋雨の時期だった。少しずつ肌寒くなっていくこの季節。そろそろ冬に変わる頃だ。
そうして、歩いて僕はショッピングモールに向かった。ショッピングモールじゃないと僕は買い物すらできないからだ。
日用品を買い家に帰っていたとき、道で1人の少女にであった。
「…。」
じっと、こちらを見つめる。でも雨の中だ。僕の姿なんて見えないはず。第一、その少女は目は普通だ。
しかし、僕の予想を破ってその少女は僕に話しかけて来た。
「…その水色の目。また凛花の仕業なのね。」
「!!!」
この少女は今なんと言った?
「凛花を知っているのですか!?」
僕は声をかけた。雨の中だから聞こえるかもわからないけど聞こえるような気がした。いや、聞こえてほしかった。
「知ってますよ?梅雨の時期に凛花と雨の人たちを探していましたからね。そして、私も雨の人でしたよ?」
「え?どういう…ことですか?」
意味がわからない…どういうことだ?
「つまりですね。凛花さんはまた出現したということです。」
ここから少女と僕は公園にいき話を聞かせてもらった。
「ありがとうございました!凛花の正体がわかりました。」
「あの子イタズラ好きだからね。少し懲らしめてあげてね?」
「はい!…あ、あなたのお名前は?」
「私?私は村雨 静花。せいかね。静花と書いて。」
「…え?村雨?」
そう聞き返したときにはもういなかった。ただ、傘が一本置いてあった。凛花の傘によく似た。透明の傘。
次の日また僕たちは屋上に来ていた。が、たぶんこれで最後になるだろう。どういうエンドを迎えるか僕次第だ。
「なぁ、凛花、話を聞いていいか?」
「なに?玲翔。」
呑気な声で聞いてくる。
黙って雫雨も聞いている。
「たぶん、凛花って僕達のこと好きだよね?」
するとキョトンとしたような顔をして答えた。
「大好きだよ!2人とも!」
晴れたような笑顔の凛花。でももうこれでわかった。
「凛花、僕たち雨の人以外の人たちの姿って見えてる?」
そう聞くと凛花は
「雨が嫌いな人たちなんて見えてない…。」
そう答えた。
「凛花。そろそろ遊びは終了だよ。秋雨の時期も終わる。もう凛花、けじめをつけようか。」
「…え?なにをいって…るの?」
僕は告げる。
「村雨 静花から聞いた。凛花の正体。凛花。あんたは雨の化身とも言うべき存在。いわば本体だ。雨に好かれたんじゃなく凛花に好かれたんだ。僕達は。」
僕の言葉は雨音のように静かに屋上に響いた。




