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雨季  作者: 秋雨 玲翔
2/7

雨降り

不思議な少女に出会ったあと。呆然としていた僕は少し時間が経ってやっと家に帰るという思考ができた。

「この傘、明日返そうかな。」

そんなこと思いながら傘を広げてみた。何の変哲もないビニール傘。でも、何か違う気がした。

こうして歩くこと10分。僕は家に着く…はずだった。いや、着いたのだが…

「遅いよー。玲翔ー。」

なせが笑顔の凛花が玄関にいた。

「…なにやってんの?」

見た感じでは直接来たみたいだ。どうやって僕の、家がわかったのだろうか。

「少しね、話があってね。中に入れてくれるかな?玲翔くんにも関わる重要な話。」

さっきまで浮かべてた明るい表情は消え去り、真剣な眼差しになる。

「…家のこと、知ってる事情も全部聞くからな。」

「うん。わかった。」

とりあえず、疑ってはいるものの僕は凛花を家にあげることにした。


僕の家は社会人の兄と二人暮らしだ。なので昼間は兄はいない。

「二人暮らしなのにすごく大きな家だね。」

「親が残してくれたものだからね。」

「そっか。」

凛花は申し訳なさそうな顔をした。

「そんか顔しなくていいよ。昔の話だから。」

「…うん。」

なぜか落ち込んでしまった凛花をリビングに案内して椅子に座らせた。そして、冷蔵庫の中にあったジュースと僕の大好物のプリンを出すと、

「!!」

目を輝かせた。案外単純な思考なようだ。

「食べていいよ。食べてから話し聞くから。」

「いいの?なら、遠慮なく!」

と、言うと同時にスプーンでプリンをすくった。そして、口に運ぶ。

その顔を表すならほっぺが落ちるってこういうことを言うんだなってくらい顔がとろけてた。

「プリン好きなの?」

「うん!大好き!」

そんな凛花の幸せそうな顔見てると疑ってたのが馬鹿らしくなりそうだったけどギリギリで踏みとどまった。

そして、10分後。ゆっくり味を楽しんだらしい凛花は話にうつってくれた。

「えっと、とりあえず言わなきゃいけない話だからね。お邪魔さしてもらったの。」

「それって凛花が雨に濡れなかったことと関係ある?」

「…見えてたのね。そうだよ。あれは雨に好かれた人々の特技なの。個人差はあるけど。」

「…雨に好かれた人々?」

「そう。雨と名の付く人の中に時々いるの。雨に好かれて、雨に関係のある特技を持つことがあるの。私はその特技と好かれた人を見つけることができるのと、雨を弾くことができる。逆に一箇所に集中させることもできるよ。」

信じがたい話だけど実際目でみたから疑うことはもうできない。

「…なら僕の特技の雨の日を当てることは?」

「そうだね。でも、本当の能力は違うよ?」

「…え?」

他に何かあるのか?

「そうだね。少し家から外に出ようか?」


凛花の言葉により僕と凛花は外に出た。僕は傘を、凛花はなにも持たずに。

「どこにいくんだ?」

「ちょっと人の多いところ。」

歩いて15分。僕たちは駅にやって来た。ラッシュ時らしく人が混雑している。

「さ、玲翔。ちょっと十人くらい、リーマンに話しかけてみて。それでわかるから。」

「??」

「話しかければわかるよ。そうだね。道案内を装ってみて。意味はないと思うけど。」

凛花の言葉の意味がわからないが僕は言われたとおりにすることにした。

「すいません!」

「…」

1人目、スルーされた。聞こえてないみたいだ。次は肩を叩いてみよう。

「すいません!」

「…」

2人目も反応なし。そのあと10人試したが、

「なんで…?」

色々試した。肩を叩く。カバンを引っ張る。結構荒いこともしたのに不思議そうな顔しただけで僕に気がつかなかった。10人とも。

「教えてあげる。あなたの特技はね。雨にまぎれることなの。存在も声もなにもかも。だから、言葉も体温もなにもかも届かない。雨に好かれた人しか。」

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