雨に出会う
ある少女が言った
「雨は嫌いじゃないなぁ。冷たくて気持ち良くてさ、代わりにないてくれてるみたいでさ。」
僕は言った。
「それでも人々は嫌うよ。雨を。雨に関する僕たちを。」
「それでもいいじゃん。雨はね、玲翔。私たちの乾ききった心にも恵みの雨として降ってくれるんだよ?」
「そうだといいね。」
そう。これは雨と名のつく人々の話。
ある秋のこと。
僕は雨が降る中1人で公園のブランコに座っていた。
「冷たいな。僕みたいだな。雨って。」
そんなことを独り言で呟いていた。
高校生ならよくあることだが、傘置き場に傘をおいていた僕は帰りに使おうと思って見たら傘がなくなっていた。きっと誰かが盗ったに違いない。
雨が嫌いではない僕は、そのまま濡れて帰ることにした。そして、現在に至るわけである。
「秋の雨は冷たい。本当に僕みたい。」
「そう?雨って冷たいだけじゃないよ?」
「!?」
いきなり横から声がかけられてブランコから落ちそうになった。
「あー、ごめんね。そんなに驚くとはね。」
そんなこといいながら僕を驚かせた人物は笑ったように言った。
「そんなに濡れてて風邪引かないの?傘を貸そうか?」
少し落ち着いた僕はその声の主を見た。
背は僕より小さくて、ポニーテールが印象に残った。
肌は白く、雨粒が同じくらい透明感のある肌をしていた。でも、言葉の感じは雨を感じさせないほど元気で明るい太陽を思わせた。
「そんなにじっと見ないでくれるかな?秋雨くん?」
「…なんで僕の名前を知ってるの?」
「うん?天気予報士ってニックネームで有名でしょ。秋雨 玲翔くん?」
いたずらっこみたいな笑みを浮かべて名前を呼んでくる。
「天気予報士か。雨の日を言い当てられるだけだよ。僕は。」
そう、昔からの特技。次の日、雨かどうか夢で見ることができる。
「って、あれ?僕の学校のことを知ってるの??なんで??」
「うん?あー、私服だからわからないかな。私はあなたと同じ学校だよ?名前、聞いたことない?村雨 凛花って。」
「うーん。ないね。」
「酷くない?隣のクラスだよ?」
「興味ない。」
「なら覚えて。同じ雨を持つものなんだから。」
そう言って凛花はブランコから立ち上がった。
「傘、貸してあげる。明日返して。じゃ、また明日ね。玲翔。」
「ちょっと!!」
傘を強引に渡すと凛花は雨の中歩いて行った。
服が濡れることなく。髪も濡れることなく。




