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蟲毒のハコ  作者: 埴輪庭
5/5

第5話「後日談」

 【週刊実話ストレート 20××年〇月〇〇日発売号より】


 §


 衝撃スクープ! 


 悪徳不動産ブローカーKが謎の首吊り自殺! 過去には巨額地面師詐欺疑惑で逮捕歴も…… これは祟りか、それとも巧妙に仕組まれた現代の“必殺仕事人”の仕業か!? 


 ・

 ・


 先月下旬、都心の一等地のマンションで不動産ブローカーのK氏が首を吊って死亡しているのが発見された。


 第一発見者は、K氏と商談予定だった取引先の社員。


 アポイントの時間を過ぎてもK氏が現れず、連絡もつかないため不審に思いビルを訪れたところ、地下ボイラー室で変わり果てたK氏を発見したという。


「K氏はその日、新たに仕入れたというこのビルの最終確認と、今後のリノベーション計画の打ち合わせをする予定だったと聞いています。まさかこんなことになるなんて……」と、発見者は顔面蒼白で本誌の取材に答えた。


 警察は現場の状況から事件性はなく、自殺と断定。


 遺書のようなものは見つかっていないという。


 しかしK氏をよく知る複数の関係者は、彼の自殺に首を傾げる。


「あのKがタマを取られるならまだしも、自分で死ぬなんて考えられないね。金と女に汚い典型的な悪党だったが、メンタルだけはゴキブリ並みにタフな男だったよ」とは、かつてK氏とビジネス上の付き合いがあったという不動産関係者X氏の弁だ。


 K氏といえば、その強引な地上げや曰く付き物件の転売などで財を成した、業界では札付きのブローカーとして知られた存在である。


 その彼がなぜこのタイミングで、しかも自らが入手したばかりのマンションで命を絶ったのか。


 謎は深まるばかりだ。


 本誌がK氏の過去を徹底的に調査したところ、驚くべき事実が浮かび上がってきた。


 今から約10年前、K氏は地面師詐欺グループの主要メンバーとして警視庁に逮捕されていたのだ。


 当時、被害総額は数億円に上ると報じられ、複数の企業経営者や資産家がK氏らの巧妙な手口によって土地や建物を騙し取られ、中には全てを失い、再起不能に追い込まれた者もいたという。


「Kはグループの中でも特に悪質で、ターゲットを徹底的に調べ上げ、弱みにつけ込んで言葉巧みに誘い込み、最後は骨までしゃぶり尽くすような奴だった。多くの人間がアイツのせいで地獄を見たんだ」とは当時の捜査事情を知る元刑事Y氏の証言だ。


 しかしK氏は逮捕されたものの、最終的には証拠不十分で不起訴処分となっている。


 金の力か、あるいは巧妙な証拠隠滅工作か。


 法の手は彼を裁くことができなかった。


 そんな彼がこうして非業の死を遂げたという事実。


 その死の裏に隠されているものとは何か──本誌は今後も取材を続けていく方針である。


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