第6話 薄闇の洞窟
そして2週間後。
俺は無事に退院を果たし、そしてその翌日にはF難度ダンジョン【薄闇の洞窟】にソロで挑戦していた。
もちろん母さんには反対されたが、無理やり押し切って家を出た。
優夏のためには金が必要で、今の俺は強くなれる――少なくともその可能性がある。
そして強くなれば、高難度ダンジョンでより大きな魔晶石が手に入る。
正直なところ一分一秒が惜しい。
ソロクエストを選んだのは、そのほうがモンスターを横取りされなくて済むからだ。
もちろん危険度は増すが、準備は整えてある。
体力回復ポーションを5つも持ってきたからな。
だが、もしも厳しそうだったらその時は潔く引き返すつもりだ。死んでしまっては元も子も無いのだから。
俺はホールを通り、ダンジョンに潜る。
等間隔に並ぶ松明だけが光源で、俺はその薄明かりと探索アイテムの魔力磁針を頼りに進んでいった。
やがて3匹のゴブリンが形成する群れが見えてきた。
俺はヤツらの前に立ち開かり、ロングソードを構えた。
「さてと、やるか」
#
『ゴブッ、ゴブブゥ!』
『グィ? ギァッ!』
『ギャ、ギャギャ!』
「はぁあああっ!!」
ガンッ!!
俺の振り下ろしたロングソードが、ゴブリンのこん棒と衝突し、鈍い音を奏でる。
『ギァッ!?』
「……っ!」
流石はゴブリン、Fランクの中でもパワー特化なモンスターだけあって、なかなかの衝撃だ。
けれど、以前と比べると弱い気がする。
俺の攻撃力が+5されたため、そのように感じるのだろう。
「すっ、凄い・・・・・。これなら俺でも余力を残して戦える!」
ザンッ!
『ギギャワッ!!』
まずは一匹目。
この調子で二匹目も片付ける!
「はああっ!!」
『ギギッ、ゴブブゥッ!!』
ガキィンッ!!
再びこん棒とロングソードが激突する。
その隙を狙って三匹目のゴブリンが俺の背後を取り、唾液を吐き散らかしながら迫ってきた。
背後を取られる形にはなったが、コイツはチャンスだ。
「はっ!」
俺はロングソードを勢いよく手前に引いた。
結果、ロングソードに全体重を預けていたゴブリンが前のめりに倒れてしまう。
俺はひょいッと身を避ける。
そして狙い通り、俺の背後を狙っていたゴブリンの渾身の一撃が、もう一匹のゴブリンの脳天に直撃した。
『グギャアッ!!』
『ゴッ、ゴブゥ!?』
「今だ!」
この機を逃すほど俺はお人好しじゃない。
俺は全力を込めて、ゴブリンに斬撃を浴びせかけた。
『グギェエ~~~ッ!!!!』
よし、これで三体撃破だ。
この調子でどんどん進もう……と言いたいところだが。
「その前に一つ確認しておかないとな。ステータス・オープン」
右手を前に翳し、詠唱する。
俺は眼前に出現したステータス画面を前に、なるほどなと得心した。
――――――――――――――――――――
斎藤聖真:Lv1 男 17歳
HP35
MP5
攻撃力10
#鉄のロングソード 攻撃力+3
防御力10
魔法攻撃力1
魔法防御力1
素早さ10
スキル ステータス操作
職業:無し
Spt:0.2 (※tips)
――――――――――――――――――――
「今の戦闘、2匹目のゴブリンは味方の攻撃を脳天に受けて倒された。俺が自分の手で倒したのは2匹だから、Sptは2になったというわけか……」
これが意味するところはつまり、爆弾等を使って倒しても意味がないということだ。
Sptをゲットしたいなら、ラストヒットを取れということか。
「これは貴重な情報を得られた。次からはSptを無駄にしなくて済む。ドロップしたのは魔晶石の欠片が1つか」
俺腰に括り付けた布袋に魔晶石の欠片を入れて、再び歩き出す。
しばらく進むと、今度はゴブリン・ナイトとスライムが現れた。
「ゴブリン・ナイト」
通常のゴブリンの討伐推奨レベルは1から3。
ステータスに換算すると、攻撃力と防御力が5程度あれば戦える。
対するゴブリン・ナイトの討伐推奨レベルは4から5。攻撃力・防御力ともに15は欲しい相手だ。
『ゴブブ? ブギッ、グゴォッ!!』
『すらっ、すらららっ!!』
今の俺にとっては少し荷が重い局面か。
それにいつもと違ってソロで潜っている分、黒川さんのようなヒーラーを頼れない。
だからこそ体力回復ポーションを買ってきたわけだが、果たして持ち堪えられるかどうか……。
「ウジウジしてても仕方がないか」
まずは先手を打つ!
モンスターとの戦闘は、先に攻撃したほうが有利になる場合がほとんどだ。
「はああっ!」
『ゴブバァッ!!』
キィンッ!!
ゴブリン・ナイトの剣とロングソードが衝突し、甲高い鉄の音を洞窟内に響き渡らせた。そしてその音は幾度と繰り返される。
キィンッ!
カンッ!
ガキィィン!!
「ぐうっ……!」
なんっ、てパワーだ!
普通のゴブリンと比べると、差は歴然だ!
いくら2対1だったとはいえ、森戸さんたちはこんなヤツをあんな簡単に倒したっていうのか……!?
『すらーーっ!!』
「くそっ、鬱陶しいヤツめ」
ブオンッ!!
ロングソードを振るうも、スライムは弾力を利用して後方へジャンプし、上手く攻撃を回避してきた。
チッ!
この調子が続けば劣勢に持ち込まれるのも時間の問題か……。
もしも他のモンスターがやって来た場合、さらなる不利を強いられることになる。それは御免だ。
「先にお前だ!」
俺はゴブリン・ナイトから距離を取って、スライムに標的を定めた。
『すらっ!?』
「はああっ!」
ザシュッ!!
『ぴぎぇーーーっ!!』
「よし、これで邪魔者は消え――」
『ゴブァアアアッッ!!』
「……ッ!?」
は、早い!
急いでガードしなければ……っ!
カァァァンッ!
「くっ、武器を弾き飛ばされたか……」
先にスライムを狙ったのは悪手だったか?
しかし、2匹を同時に相手取るのはいくらなんでも厳しい。
いやいや落ち着け。
反省会後だ。
今はまず、この状況をどう打開するかだけを考えるんだ。
今の俺にあるのは、体力回復ポーションが5つ。
致命傷さえ負わなければ回復して凌げるはず。
『ゴブゥ、ゴァア……!』
ゴブリン・ナイトがじりじりと距離を詰め、ゆっくりと剣を構える。対する俺はヤツが踏み込んできた分だけ後退ることしかできなかった。
「どうする。どうすればこのピンチを切り抜けられる……」
『ゴブゥ、ガァア、グバァァアアアアアアッッ!!!!!』
追い詰めたぞ。
そう言わんばかりのゴブリン・ナイトの咆哮。
俺はそこに活路を見出した。
上手くいくかは分からないが、やるしかない!
「おおおおっ!!」
俺はショルダーバッグの中から体力回復ポーションを取り出し、ゴブリン・ナイトの顔面に放り投げた。
バリンッ!!
『ゴアッ?? ゴバァッ!??』
よし、上手くいった!
バカみたいに顔を突き出して威嚇してきたから、狙いを定めやすかった。
まさか体力回復ポーションを目眩ましに使ってくるなんて思いもしなかっただろう!
「うおおおおおおっ!!」
俺は全速力で駆け出し、ゴブリン・ナイトの顔面に渾身の握り拳を叩き入れた。
『ゴッ、ガバハァッ!!』
いくら攻防力に差があろうとも、ノーガードでのこの一撃が効かないわけがない。
事実、ゴブリン・ナイトは1メートルほど吹き飛ばされて、ゴロゴロと地面に転がった。俺の右拳も痛いけどな!
俺はゴブリン・ナイトが手放した剣を手に取って、その喉元に切っ先を向けた。
「フー……」
『ゴア、ガ、ァ……ヒッ――」
ザシュンッ!!
「…………今のは流石に危なかったな」
咄嗟の機転で助かったものの、最悪の場合、無防備の状態でゴブリン・ナイトの剣撃を受けていた。
そうなれば今頃は生きていたかどうか分からないな……。
「この先はもっと気を引き締めて進もう」
なにせ、その辺のモンスター相手に手間取っている暇なんて無いのだから。
今日の俺の目的。
それはtipsに記載されていた一文にある。
※5 ボスモンスターを討伐した際にはボーナスを得られます。ボスモンスターの討伐は積極的に狙っていきましょう。
ボスモンスターを倒すことによって得られるボーナス。それがどれほどのものなのか、まずはそれを検証しなければならない。
俺はロングソードを一層強く握りしめ、決意を新たにした。
「引き返してたまるか。ボスモンスターがどんなヤツだろうが、絶対に倒してやる……っ!」
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