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第5話 ステータス・ポイント

 目が覚めると、俺は病院のベッドの上に寝転がっていた。そして白い天井をぼーっと眺めていた。


「生きてるのか。てっきり死んだかと思ったんだが……」


 呟くと、ガシャン! と大きな音が聞こえた。ふいと視線をやると、そこには一人のナースさんが。


「おっ、起きた……。たっ、大変、急いで知らせなきゃ! 先生ーっ、斎藤さんが、斎藤聖真さんが目を覚ましましたァーーーーーッ!!」


 どうやら驚かせてしまったようだ。

 ナースさんは叫びながら疾風のような早さで病室から消えていった。


 それから30分くらい経っただろうか?

 母さんをつれて、30〜40歳くらいの医師がやってきた。


 俺は真っ先に母さんに問いかけた。


「母さん。優夏は、どうなった」


 正直、聞くのが怖いという気持ちはあった。

 試練なんて言っていたけれど、あの女神とやらが嘘を吐いていないという保証はどこにも無いからな。


「優夏は大丈夫。今は前よりも安定してるって」

「そうか。それは良かった。本当に良かった……っ!」


 母さんの言葉を聞いて、俺の心の底から、絞り出すように本音が溢れた。




「君、運が良かったね。あれだけ怪我してたら普通は死んでるもの。一応ね、念のために二週間くらい経過入院してもらうから、それだけはよろしくね」


 話を聞くと、どうやら俺は一ヶ月も寝たきりだったらしい。


 運ばれてきた時には、ほぼ確実に助からないだろうという状況だった。


 俺を救出してくれたのはS級の探索者パーティで、しかしながら彼らは女神を名乗るモンスターには出会えなかったそうだ。


 それどころか【女神の間】には大量の魔晶石の欠片が落ちていたらしく、魔晶石も3つほど採れたそうだ。


 本来なら救助費用を取られるところだが、それらのドロップ品のおかげで、請求書どころか感謝の言葉を貰ってしまった。


 ちなみにS級パーティ一行は女神様のご加護に違いないと口にしていた。


 まぁ、あながち間違いではないのか。


 そして身分を偽った件だが、もちろん大きく問題視され、俺は協会本部のお偉いさん――鳩羽(はとば)と名乗った女性から強いお叱りを受けたのだった。


「若年かつ初犯であることを考慮して、協会は寛大な措置を施すことに決定しました。ですが、次は無いですからね!」

「この度は、ウチのバカ息子が本当に申し訳ありませんでした!」

「本当に、すみませんでした」


 正直、申し訳ないという気持ちはあまりない。俺は優夏のためとあらば今後も同じことをするだろう。


 けれどここで荒波を立てるのもバカバカしい。

 それに、ここで大人しくしておけば罰金等は免除してくれるというからな。


「聖真、いくら優夏のためとはいえ、こんな無理をされたら堪ったものじゃないわ。もし聖真が死んでたら、私……私…………っ! うっ、ぅう、お願い。お願いだから、もう二度とこんなことしないって誓って。約束して!」

「ああ、分かったよ。もう二度とこんなことはしない、約束する」


 もちろんこの言葉は嘘だ。


 俺にとっては、どんな苦しみよりもどんな痛みよりも、優夏がいなくなることのほうが数百倍も辛いことだ。


 だから約束はできない。

 嘘つきな俺を許してくれ。

 ごめん……。


 俺が心の中で謝罪を口にした、その瞬間。


 ――ピコンッ!

 

 どこからか、妙な効果音が聞こえてきた。

 そして続け様に頭の中で謎の声が響き渡る。


 それは駅のホームやエレベーターなどで耳にする、女性の機械音声だった。


<新たなスキルとステータス・ポイントを獲得しました。ステータス画面を開いて、ポイントを割り振ってください>


 ……は?


#


 謎の声は聞き間違えじゃなかった。

 母さんが帰宅し、自由行動を許可された後。


 俺は療養庭園のベンチに腰を降ろしながら、ステータス画面を眺めていた。



 ――――――――――――――――――――

 斎藤聖真(さいとうせいま):Lv1 男 17歳

 HP35

 MP5

 攻撃力5

 防御力5

 魔法攻撃力1

 魔法防御力1

 素早さ10


 スキル ステータス操作

 職業:無し


 Spt:10 (※tips)

 ――――――――――――――――――――



「ステータスは今までと変わりなし、もちろんレベルも1のまま……なんだが。スキル、だと?」


 スキル。

 それは人間がレベル10に達すると芽生える異能だ。まさか万年レベル1の俺にそれが宿ったとでもいうのか?


 それからステータス・ポイント。

 こんなのは聞いたことが無い。

 なんなんだ、この意味不明な状況は。

 

 そんな俺の心境を見透かしたかのように、またもや例の機械音声が頭の中に響いた。


<ステータス・ポイントの文字をタップして、ステータスを割り振ってください。詳しい説明は、※tipsからご覧になれます>


 俺は促された通りにtipsの文字をタップした。すると、



――――――――――――――――――――

※1 ステータス・ポイント(Spt)とは?


ステータス・ポイントとは、モンスターを討伐した際に得られる特別なポイントのことです。Sptと略称されます。


Sptは、自身のパロメーターの好きな項目に好きな数値だけ割り振ることができます。

現在、個体名・斉藤聖真のSptは10Ptあるので、好きなように割り振ってみましょう。


ステータス・ポイントを割り振るためには、Sptの文字をタップしてください。

その後、2ページ目のステータス画面が表示されるので、ステータスを割り振りましょう。


注:少数点第1位以下は割り振りできません。


※2 Sptについて。

モンスターを討伐するとSptを得られます。

得られるSptは討伐したモンスターのランクに依存します。


Fランクモンスター  0.1Spt

Eランクモンスター  0.2Spt

Dランクモンスター  0.3Spt

Cランクモンスター  0.4Spt

Bランクモンスター  0.5Spt

A-ランクモンスター  1Spt

A+ランクモンスター  2Spt

Sランクモンスター   10Spt


※3 Sptの振りなおしには1ポイントにつき1000円の現金(マネー)を消費します。ステータスを割り振る際には細心の注意を払いましょう。


注:現金(マネー)は銀行口座からの引き落としとなりますので、口座残高には気を配るようにしましょう(残高不足の場合はSptの振り直しはできません)。


※4 ボスモンスターを討伐した際にはボーナスを得られます。ボスモンスターの討伐は積極的に狙っていきましょう。

――――――――――――――――――――



「ステータスの割り振り、か」


 にわかには信じ難いが、試してみるだけ損はないだろう。まずは説明通りにやってみるか。


 ポチっとSptの文字を押すと、ステータス画面の他にもう1枚のウィンドウが出現した。


「……本当に説明通りの画面が出てきたな」


 2枚目のステータス画面にはそれぞれのステータスの横に、+の記号が記載されていた。


 俺は攻撃力の欄に表記されている+記号をタップした。すると。



 ――――――――――――――――――――

 斎藤聖真(さいとうせいま):Lv1 男 17歳

 P(ページ)2


 HP35 +

 MP5 +

 攻撃力5→6 +

 防御力5 +

 魔法攻撃力1 +

 魔法防御力1 +

 素早さ10 +


 スキル ステータス操作

 職業:無し


 Spt10→9 (※tips)


 以上でステータスを決定しますが、よろしいですか?

 →はい →いいえ

 ――――――――――――――――――――



 俺は「はい」の文字をタップして、ステータスの割り振りを完了させた。


「なるほど。攻撃力が1増えた代わりに所持Sptが10から9になったということか。そしてこのSptを稼げば稼ぐほど、俺は強くなれる……」


 女神は俺には【()】としての資質がある、なんて言っていたよな? そして試練をクリアすれば褒美として力の一端を授ける、とも。


 まさかこれが女神の力の一端なんだろうか?

 とにもかくにも、これはかなり凄い能力だな。


 通常、ステータスを上げるとなるとレベルを上げなければならない。

 そして人によって、伸びやすいステータス・伸びにくいステータスがある。


 けれどこの能力の前では、そんなものは全て無意味だ。


「凄いな。この力があれば、俺はレベル1のままでも強くなれるかもしれない!」


 今まではF難度ダンジョンですら苦戦してきたが、モンスターを倒しまくればその分だけ強くなれる。


 そしていつかはE難度ダンジョンやD難度ダンジョン……いや、それよりも上のダンジョンに挑んで、前よりも効率よく魔晶石を集められるようになるかもしれないぞ。


#


 翌日には、俺が目を覚ましたと聞いて黒川さんがお見舞いに来てくれた。


「本当に心配したんですからねっ! もう絶対にこんなことしちゃダメですよ、約束ですからね!」


 黒川さんは涙ぐみながらそう言った。

 

 ――聖真くんが怪我したら、悲しむ人だっているんですから。


 前に黒川さんが言った言葉だ。

 どうやらその中には黒川さん自身も含まれていたらしい。


「すみません。今後は気をつけます」


 そう言って頭を下げると、黒川さんは一応は納得を示してくれた。


 無論、この言葉は嘘だ。

 無茶をしないなんて約束は俺にはできない。


 心が傷まないかといえば嘘になる。

 だが、これも優夏を想えばこそだ。

 俺にとって優夏以上に大切なものなんて存在しないのだから。

ここまで読んで頂きありがとうございます!!

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