第4話 俺が、お兄ちゃんだッッ!!!!!
ギギギギギ……ガチャンッ!
大きな音を立てて女神の間の鉄扉が閉ざされる。
同時にゴブリンの群れが一斉に奇声を上げて、俺の眼前を埋め尽くした。
『ギギャァアアアアアアッッ!!!!』
『ゴォアアアアアッ!!』
『ブギィイーーーー!!』
『ォォオオオオオッ!!!!!!』
『ゴブッ、ブゥウッッ』
『グガァ! ガアアアッ!!』
「フー……。ぅうおおおおおおおッッ!!」
まずは目の前のゴブリンたちに渾身の一振りを放つ。
女神から与えられた白銀のロングソード、そのリーチは目算で100㎝近くはありそうだ。
この長さなら2匹、上手くいけば3匹は巻き込めるだろう。とはいえ、闇雲に胴体を狙っても意味がない。狙うべきは――。
ザシュンッ!!
『ギャガワッ!』
『グゲゲ!』
『ブゴォッッ!?』
俺の放った斬撃は、2匹のゴブリンから視力を奪うことに成功した。3匹目に関しては頬を直撃し、そのダメージは俺の予想以上だった。
なるほど!
このロングソード、なかなかに攻撃力が高い装備らしいな!
『ギゲァーーーーーッ!!』
『グボォオオオオッ!!』
『ギョガガァァアア!!』
ドガッ!
バキッ、メキメキッ!!
「ぐっっ、~~~~っっ!!」
くそっ、モロに2発も喰らった!
「ッぁあああ!!」
俺は身を捩りながら旋回し、大振りの一撃を繰り出した。もちろん狙うのは目だ。
落ち着け、落ち着くんだ俺。腐っても2年もシーカーをやってきた。その経験をフルに活かすんだ!!
相手は100匹のゴブリン。
どう考えても正攻法では勝てない。
まずは1匹でも多くの動きを封じるんだ!
『グガガァ!!』
『ウギギギリィッ!!』
今度は2匹のゴブリンが迫りくる。
その表情には明らかな怒りの色。
まさか、仲間が攻撃を受けて怒っているのか?
『ギガァァァアアッ!!』
『ゴブゥゥッ!!』
左右から二つのこん棒が迫り来る。俺は後方に飛び退き、こん棒攻撃を回避した。
結果、ゴブリンが互いの顔面を殴り合う形になった。
ドゴゴッ!
バキィ!!
『ギゲッ!?』
『グガバァ!!』
次はアイツだ。
俺は1匹のゴブリンに狙いを定めた。
ソイツは武器を放り捨て、両手で目を覆いながら痛みに悶えている。
「はぁああああッ!!」
全速力で掻け、飛び込みざまに刺突攻撃。
白銀のロングソードがゴブリンの首を容赦なく貫き、紫色の血液を噴出させた。
『ギギャアアアアアアアアッッ!!!!!』
ガクリと肩を落とし動かなくなったゴブリン。
俺は左手でソイツの髪の毛を鷲掴みにして、盾代わりにした。
ゴブリンは成人男性と比べると小さく、全長は100cmにも満たない。人間の子供サイズならレベル1の俺でも何とか支えられる。
『ギ、ギギ!』
『グゲッ! ゲギギ!』
『ゴ、ゴブゥ……』
明らかな動揺。
やはり女神が召喚したゴブリンには仲間意識があるようだ。先ほどの激高がその証拠と言える。
「そんなに仲間が大事だってんなら、くれてやるっ!」
ドガッ!
俺に蹴飛ばされて、死体と化したゴブリンが地べたに倒れる。周囲のゴブリンはそれを避けるように退いた。
「この、腰抜けどもが!」
ゴブリンが退いた分だけ一気に距離を詰め、渾身の刺突が一閃!
ザグッッ!!!!!!
『ヒギッ、ギャバァアア~~~~~ッ!??』
胸部に突き刺したロングソードを引き抜き、羽虫を振り払う動作で剣を振るう。
ビチャビチャと飛び散ったこの血液も、目眩ましの役割を果たす。
『グゴオオオオッッ!!』
『ギャアアアアッス!!!!!』
『ゴブァアーーーーッ!!!』
さらに迫りくるゴブリンの群れ。
先陣に向けて斜めから振り下ろしての両断、切り返す刃で後続のゴブリンの頸動脈を引き裂く。
三匹目の攻撃を避け、四匹目のゴブリンには拾ったこん棒で対処する。
ガガンッ!!
「ギア!?」
想定外の衝撃を受けたゴブリンが後方に跳ね返され、バランスを崩した。その隙を突いた一撃で、ロングソードがゴブリンの胸部を貫通した。
背後からの攻撃には身を翻し、死体となったゴブリンでガードした。
ドゴン!
『ギッ、ブゴォオオッ!!』
「ふんッ!!」
ザシュン!!
『ギャァァアアアアアッッ!!』
見渡せば、ゴブリンの数が少しずつ減ってきていた。
攻撃の手も緩んできている。
どうやらヤツらは、俺を相手に怯んでいるらしい。
仲間がやられたというのに身を退いてみたり、レベル1の人間相手に怯えを見せたり。
「お前ら、その程度の覚悟で俺の前に立つのか……」
沸々と火山のように沸く怒り。
同時に、脳裏にとある光景が浮かび上がってきた。
#
「ねぇねぇお兄ちゃん、見てよコレ! 私、来週から小学生なんだよ! どーお? 似合う?」
そう言って嬉しそうにランドセルを見せてくれる優夏。
太陽のように笑う優夏の姿を、まるで昨日のことのように覚えている。
「あー! 優夏も洗いものするぅー!」
「ママ、今日は肩たたきしてあげる!」
「お兄ちゃん、一緒に遊んでくれてありがとう!」
優夏は素直でいい子なんだ。
優夏が笑ってくれる、たったそれだけのことで俺たちは幸せだった。
たとえ父さんがいなくとも、それでも幸せに慎ましく生きてたんだ。
だってのに、なんでその幸せを奪われなきゃならないっ!!
「俺たちはただ、普通でいられればそれで良かったのに!!」
――ザシュッ!!
それどころか神は俺たちを見捨てた。
俺はレベル不全体質だった。
そのせいでレベルは上がらず、2年間シーカーを続けてもFランクモンスターに苦戦を強いられる始末。
パーティに貢献できないせいでイジメられ、嫌がらせを受け、報酬の取り分も減らされる。
「俺はそんな理不尽だって許容してきたんだ!!」
――ザンッ!!
「なのにどうしてこの世界はっ! いつもいつも俺たちから奪う! 一体全体、俺たちが何をしたって言うんだッ!!」
ああ、止まらない。
今まで我慢してきたもの、耐えてきたもの。
憎悪の感情の全てが堰を切ったように溢れ出て、もうどうしようもなかった。
「うぁああああああああっ!! 死ね、お前らがッ! お前らが死ねッ!! もうこれ以上、俺たちから何も奪うなァアアアアアッッ!!!!!」
怒りに任せて無我夢中で剣を振るう。
血が噴き出す。
温い液体で溢れる。
視界が赤黒く染め上げられる。
……これは誰の血だ?
俺の血か、モンスターの血か。
いや、もはやそんなことはどうでもいい。
俺はいま生きていて、動いていて、剣を振っている。それが全てだ。
「ああああああっっ!!!!!」
『ヒッ、ヒィィ!』
ザシュッ!!
ザンッッ!
『グギャアアアッ!!』
『グオオオオッ!!』
ドガッ!
バキィッ!!
時々は反撃を受けるも、それでも俺は攻撃の手を緩めない。
不思議だ。
どういうわけか、まるで痛みを感じない。
「ああああああああああ!!!!!」
腹立たしい!
この世界の全てが腹立たしい!
許せない……いや、許しちゃいけない。
斬れ。斬れ。斬れ。
斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬りまくれ。
一匹残らず生かしてなるものか。
全部まとめてブチ殺してやる。
そして俺が優夏を助けるんだ!
たとえこの身に変えたとしても!!
「見ろ。俺の姿を見ろッ! 俺が…………この俺こそが、お兄ちゃんだッッ!!!!!」
『ヒッ、ヒィァアアアアア!!』
『ギョェエエエッ』
『ゴギィッ!』
『ゴフゥ!!!』
『グバァッ!!』
『ヒィイイイッ!』
『ヒャワアアアア!!』
「はぁ、はぁ、はぁ…………」
試練が始まってからどれだけの時間が経っただろうか?
俺は半ば意識を失っていたのかもしれない。
気付けば俺の手にロングソードは握られておらず、代わりに、ゴブリンのこん棒が握られていた。途中からはコイツでゴブリンを攻撃していたらしい。
『……………………斎藤優夏の命は永らえた。しかし、それは一時的なものに過ぎない。ここから先、彼女の命を救えるかどうかは汝に懸かっている』
「ほ、ほんとう、か。優夏は、助かった――の、か……」
ああ、よかった。
どうやら俺は試練を乗り越えられたようだ。
これで優夏は助かる。
俺は……たぶん、ここまでだな。
怒りでアドレナリンが過剰に分泌されてたのか、途中からは全く痛みを感じなかった。そのツケだとでもいうかのように、今は全身がバキバキだ。。
もう1ミリも動けそうにない。
でも、これでいいんだ。
だって俺はお兄ちゃんなんだからな。
お兄ちゃんが妹のために命を張るのは当然のことだ。
悔いは、無い……。
こうして、俺の意識は闇の中に沈んでいった。
今回の後書きは少々長くなりますが、どうかお付き合いください。
まずはここまで読んでくださりありがとうございます。
今回の話は作者渾身の1話で、しかも昨日の深夜に改稿に改稿を重ねています。
元々「プロミネンスバーン!!!!!」ほどの熱意で書いていたのを「更に向こうへプルスウルトラ!!!!!!」するために推敲しました。
こちらの作品は「カクヨム」でも投稿しています。
「小説家になろう」と「カクヨム」の両方でランキングに入れば相乗効果が生まれ、より多くの人にこの作品が届きます。
画面の前のアナタが★★★★★を入れてくだされば、それだけで一気に露出のチャンスが増えます。
特に「小説家になろう」のローファンタジージャンルは、今は40ポイントもあれば確実にランキングに載れます。
たった4名の読者様が「★★★★★」を入れてくれるだけで、この作品の未来が変わると言っても過言ではありません!!
もしも僕の熱意が伝わっておりましたら、どうか、この作品がたくさんの人に届くためのチャンスをください。何卒よろしくお願いします!!!!!