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第2話 急変

 第2層ではペースが速まり、俺はついていくので精いっぱいになってしまった。


 正直言うと、パーティからはぐれれば身の安全は保障できない。


 レベル1の俺はモンスターとの戦いを諦め、必死の思いでついていく。当然、貢献度は下がり報酬の分け前も少なくなるという算段だ。


 いつもながらの嫌がらせ。

 けれど、歯を食いしばって耐えるしかない。


 俺はドロップした魔晶石の欠片1つと、クエスト参加の最低保証報酬の2万円を貰えれば充分だ。


 日当3万もあれば、優夏の入院費用は稼げる。

 あとは怪我をしないように注意をするだけだ。


「はは、見てくださいよ。聖真のヤツ、ついてくるだけで精いっぱいみたいっすよ?」

「だろうな。なんたってアイツは万年F級の雑魚なんだからな笑」

「松本くん、宮田さん、あんな雑魚に構ってないでとっとと稼ぎましょう! ほら黒川さん、君もそんなヤツと一緒に居たら同類だと思われるぞ」


 みんな余裕綽々といった様子でモンスターを討伐し、魔晶石の欠片をゲットしていく。


 そしてみんなのペースが早ければ早いほど、俺はモンスターと戦えず、取り分が減っていく。


 腹立たしいという気持ちが全くないかと言われたら嘘になるが、これも仕方の無いことだ。シーカーは実力社会。つまり、弱い俺が悪いんだ。


 でも悲観することも無いだろう。

 この仕事は最低でも日給3万は堅い。

 他のバイトに比べて圧倒的に稼げる。

 金があれば家族の助けになれる。


 それなら、いくらでもバカにされてやろうじゃないか。


 でもそれは、俺だけの話だ。

 関係ない人を巻き込む気は無い。


「黒川さん、皆さんに合流してください。俺に気を使ってペースを合わせてたら、黒川さんまで標的にされる」

「えっ、い、いや、私は別に気を使っているわけじゃ――」

「黒川さん、俺は大丈夫ですから」


 俺が食い下がると、黒川さんは観念したように他のメンバーに加わった。


 その後はさらにペースが上がって、俺はついていくだけでも息が切れる思いだった。


 これがレベルの差。

 決して覆し得ないステータスの差だ。




「おらああああああっ!!!」


 ボスの間にて、森戸さんの渾身の一撃がゴブリン・ランサーを切り裂いた。


「さすがリーダー! これでクエストクリアですね!」

「宮田さん、黒川さん、松本くん、お疲れ様! ついでにそこのデク、お前もお疲れさん。まぁ、お前がやってたのはクエストじゃなくてただのランニングだけどな笑」

「……うす、お疲れ様です」


 下らない嫌味を受けてる間に、ボスエリアにホールが出現した。


 入口に戻るかダンジョン・コアを破壊するかボスを倒すか。

 そうすればダンジョンを出られる。


 ちなみにボスを倒すと一時間でダンジョンが消滅する。なので採掘をメインにするときは、あえてボスを倒さずに、雑魚モンスターを殲滅するという手筈が踏まれる。


「さて、報酬の分配の時間だ」


 森戸さんの号令で、それぞれにアイテムが配られる。基本的に、こういうクエストでの分配は平等に行われる。


 よっぽどすごい活躍をした人、ボスを倒した人。そういう人の取り分は多くなるけどな。


 今回の場合だと、森戸さんの取り分が一番多いということになる。


「まずは宮田さん。いやあ、流石の剣撃でした。どうぞ、魔晶石の欠片3つです。それと参加報酬の2万円」

「あざす! そんじゃ娘が待ってるんで今日は帰りますわ、また明日!」

「次は松本くん。君は魔晶石の欠片2つと2万円ね。で、黒川さんも同じっと」

「あざず!」

「あ、ありがとうございます」


 最後は俺の番か。

 ま、俺の場合は分かりきってるけどな。


「最後はお前か。お前は~、ほい。欠片が1つと最低保証の1万円(・・・)な」

「……1万?」

「おう! ちなみに差し引いた1万はトレーニング代だ」

「トレーニング……」

「ああ。お前にランニングさせてやったろ? だからトレーニング代で1万没収」

「…………分かり、ました。ありがとうございます」


 まさか最低保証の2万から1万も抜かれるとは。


 でも魔晶石の欠片と合わせて2万円にはなる。日給2万。これだけあれば十分だ。


 ここで逆らってボコボコにでもされたらそっちのほうが損害だ。シーカーというのは身体が資本だからな。


「そんじゃ、明日もよろしくな!」

「……はい、よろしくお願いします」


 と、その時。

 俺のスマホに一件の着信が入った。

 そしてそこには母さんの名前があった。


「もしもし、聖真だけど」

「どうしよう、ねぇ、どうしよう! いま先生から連絡あったんだけど、優夏ゆうかの様態が急変したって!!」

「優夏が? 分かった、すぐに行く!!」


 かくして優夏の入院する療護センターに急行した俺と母さんは、医師から衝撃の言葉を告げられる。


「優夏さんですが、このまま手を打たなければ、持って一週間といったところでしょう」

「ううっ、そ、そんな。どうして。どうして優夏がこんな目に……!」


 俺は震える母の背に手を添えて、先生に問いかけた。


「それで、なにか助かる方法は無いんですか?」

「――魔力吸収手術。人間の体内に流れる魔力を一時的に大きく減少させる手術です。しかし長時間に及ぶうえ、金額も相当なものになります。最低でも1000万円は必要になるかと……」


 1000万だと?

 そんな金どこにあるってんだ……。


 クソ、ちくしょう。

 どいつもこいつもふざけやがって。


 寄って集って俺たちをイジメてそんなに楽しいのか?


 とはいえ項垂れていても仕方がない。

 なにか、なにか方法を考えなくては。

 

 しばらく考えて、俺はある一つの方法に思い至った。この方法なら、1000万円を用意することができる。


 待っていろ優夏。

 他の誰がなんと言おうとも、俺がお前を助けてやる。


 当然だ。

 だって俺は、世界でたったひとりのお兄ちゃんなんだから……!


ここまで読んで頂きありがとうございます!

面白い、続きが気になる、期待できそうと思って頂けた方には是非、ページ↓部分の☆☆☆☆☆で評価してほしいです。☆の数は1つでも嬉しいです!そしてブックマークなどもして頂けるとモチベーションの向上にも繋がりますので、なにとぞ応援よろしくお願いします!!

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