5-6.クロ、試合をする!
ボクお手製の弁当をみんなでゆっくりと食べてもらった。
仕込むの大変だったよ···。なんせ26人分だもん···。しかも大食いばっかりだからね···。60人前作ったんじゃないかな?元の世界の給食のおばちゃんになったような気分で作ったよ。
今日の弁当は中華もどきにしてみたよ。テスラ共和国で手に入れたお米を使ったチャーハンっぽいものと唐揚げっぽいもの、それと焼き餃子みたいなものだ。
鍋で炊飯ってやったことなかったけど、いい感じで炊けて良かったよ〜!リオが弁当!って言う前に昨日のうちに仕込んでおいたから、今日は調理オンリーだよ。
そうしないと、ボクはナツみたいに分身の術を使っての調理なんてできないからね。
ただ、やっぱりボクが作った分だけでは足りなかったようで、足りない分はナツが用意してくれた追加分で対応できた。
孫たちは育ち盛りだからなぁ〜。特に食欲旺盛なのはリナの7人のお子さんたちだったよ。
「「「「おいし〜い!!」」」」
みんな気に入っていただけたようで良かったよ。
さて、昼食を終えてこれからクロくんが試合に挑むよ。まずはリオが相手だ。
「元整調者の実力、胸を借りるぜ!」
「おう!そんなに気張らずに普段通りやれよー!」
「わかったぜ!じゃあ、こっちからいくぜ!」
クロくんはまず体術でリオに挑むようだ。一気に間合いを詰めてパンチの連撃だ!
対するリオは全てを受け止めず、可能な限りかわしたり、時おりクロくんの腕を軽く弾いて軌道を変えたりしているね。クロくんが、やりづらそうな顔をしているよ。
「ウソだろ!?俺の『ガトリングジャブ』にまさかこんな対処法があるなんて···」
「パンチやキックは目標を事前に決めてから繰り出すからなー。ちょっとずらすだけでこの通りだぞー」
「なるほど!じゃあ、次はこれだ!」
クロくんは再度リオに突っ込んでいくけど、今度は違うようだ。
「さっきと同じかー?」
「いいや!こっからだぜ!」
次の瞬間!クロくんは仕込んでおいたダーツをリオの足元に投げた!もちろんリオは避けるけど、ダーツが地面に着いた瞬間!
ボンッ!!
リオの足元が軽く爆発した!気を取られてスキが大きくなったところをクロくんが攻め立てた!
「もらったぁー!」
「甘いぞー!」
「なにっ!?」
爆発で体勢を崩されたリオはすぐに丸まって一回転した後にクロくんの足元に入って足払いを反撃で食らわせた!
「うわっ!?」
今度は逆にクロくんが体勢を崩された。立ち上がろうとしたところでリオの拳がクロくんの目と鼻の先に突き出された!
「あぁ~、ここまでかぁ〜。ありがとうございました」
「おうっ!なかなか良かったぞー」
「やっぱ整調者だけあって強いなぁ〜。オレもまだまだだなぁ〜」
「そう思っていれば、これからも強くなるぞー!我流じゃなさそうだけど、誰かに教えてもらったのかー?」
「オレを育ててくれた師匠だ。ダーツも師匠からもらったんだ」
「ほー?なかなかな腕のお師匠さんだなー。魔法も使えるし、そんな武器まで持ってるなんてなー」
なるほどね〜。クロくんは捨て子だったって聞いてたけど、育ての親がお師匠さんだったのか。もしかして···?
「クロくん?そのダーツだけど、どんな効果があるの?魔法を込めて放てるようだけど?」
「これは『マジックダーツ』って代物らしいぜ。魔法を込めるんじゃなくて魔力を事前に込めておいて、放つその時に魔法化してるって感じだな」
「へぇ~。投げたあとは手元に戻ってるっぽいけど?」
「おう。『使用者登録』をした者に自動的に戻って来るみたいだな。師匠からは10本もらってるぜ」
「なんか···、魔道具のレベルじゃないね。神器クラスっぽいなぁ〜」
「師匠お手製らしいけどな」
「ならなおさらだね。···もしかして、元神様だったのかなぁ〜?」
「神様?ただの爺さんだぜ?」
「そのお師匠さんは今も元気なの?」
「わかんねえな···。ある時、居なくなっちまったからなぁ〜。書き置きで『十分強くなったから、世界を見て回れ』ってあったけどさ」
なるほどね。なら、別の世界の元神様っぽいなぁ〜。あのダーツもおそらく神器だね。投げる瞬間まで魔法が確定してないから、なんの魔力が込められてるか?なんて気づかないから対策が難しいよ。
しかも姿を消したって事は、まだ生きて旅をしてるっぽいなぁ〜。もしかしたら次にウェーバー大陸に出かけたら会うかもしれないなぁ〜。
「さて!休憩できたし、次の対戦相手を指名してもいいか?」
「クロくん?連戦になるけどいいのかい?」
「アキさん、気づかいは無用だぜ!次は···、フーの親父さんに申し込みたい!」
「···は?···俺か?」
「おう!フーは強かったからな!その親父さんも元整調者だしな!」
お〜っと!?次はヨウくんをご指名だよ!?
「まぁ、いいんだけど。俺は『本気の』フーより弱いぞ?」
「···は?そうなのか?」
「そうだぜ?それに整調者最終世代の中で最弱···、って言ってて悲しくなるが、事実だしな···」
「···ま、まぁいいぜ!よろしく頼む!」
「んじゃ、いっちょやってやっか!」
「お〜!パパ!がんばれ〜!」
「よし!フー、見てろよ〜!」
ヨウくん···。変わったなぁ〜。フーちゃんの応援でやる気出しちゃったわ。
「さて、どっからでもかかってきな!」
「おう!じゃあ、いかせてもらうぜ!」
そう言ってクロくんはダーツを3本出した!フーちゃんの時と同じようにする気かな?
クロくんはダーツを準備したままヨウくんに突っ込んでいった。かなり近づいたその時!ダーツの1本を投げた!それをヨウくんは何もせずに···、当たってしまった!
カチカチカチ···!
「んなっ!?」
ヨウくんの体が胸のあたりから凍りつきだした!?
「くそっ!まじかよ!?」
ヨウくんが氷を砕こうとするものの、かなりの強度で砕けなかった!その間にも凍る部分が増えていく!
そうして頭まで氷漬けにされてしまったよ···。息、してる?
「あっさり決まっちまったな···。3本も用意したのに、こんなはずじゃなかったんだけどなぁ〜」
「だろうな。ありゃ、まともに受けたらマズいわ」
「なっ!?代わり身ってヤツか!?」
「知ってるか?フーとやったって言ってたな。って事はフーもやったんだな」
「ああ。あんたの娘は強かったぜ!」
「ははは!だろ〜!」
「って油断したな!」
「そう来ると思ったぜ!影ぬい!」
ヨウくんがクロくんの影に投げナイフを刺した!
「くっ!?動けない!?」
「この技はフーは使ってないって事だな。気づいたかもしれんが、うちは暗殺術を使う一家なんでな。この時点で普通なら命をもらうとこなんだぜ?」
「なるほどな···。いや、油断したのはオレの方か···。参ったぜ」
お〜!ヨウくんが勝ったね!クロくんを傷つけずに屈服させちゃったよ。強くなったなぁ〜!
「パパ〜!かっこよかったよ〜!」
「へへっ!まぁ、こんなもんよ!」
う〜ん···。昔のヨウくんとは大きく変わっちゃったね。フーちゃんのおかげなんだろうなぁ〜。
リオくん、ヨウくんと試合をしたクロくんでした。
実力としてはもちろんリオくんの方が上ですが、ヨウくんはそこまでじゃありません。人族だからってこともあるんですけどね。
しかしヨウくんはホント、登場時に比べて丸くなりましたね~。これもフーちゃんのおかげというのもあるんですけどね。フーちゃんにいいところを見せる!と思って普段は全く見せない強さを見せつけてやりました!
さて次回予告ですが、試合の後は大宴会です!総勢26人もいますからリビングは大賑わいですよ~!
今回はフーちゃんが仕入れた魚を使った料理をメインに、テスラ共和国で仕入れた食材も使ってナツちゃんが作りましたよ~!
それでは次回もお楽しみに~!




