5-2.エレさんに相談してみると···?
今日もこのホテルで1泊させてもらうことにした。明日はいったんアクロに戻る予定だ。ちょっとエレさんにも確認したい事があるんだよ。
入国情報についてはパスさんがサッと消去して、皇国の入国情報を上書きしちゃったよ···。思いっきり慣れてるなぁ〜。最近もよく出かけてるそうだけど大丈夫なのかなぁ〜?
ボクがウェーバー大陸から持ち帰った情報は、すぐに情報部へ届けられた。情報部の人が待機していて、パスさんがメモを渡していたよ。そして、ヒズさんがパスさんとサキちゃんのお迎えにやって来たよ。
「アキ様。この度は大変な目にあったと伺いました。皇国はアキ様を守る所存ですので、どうかご安心下さい」
「ヒズさん、ご迷惑おかけしました。また協力できることがありましたらご連絡下さいね」
「お心遣い、痛み入ります。さて陛下?とっとと帰りますよ?明後日には来年の国家予算の折衝が始まるのですから」
「え〜!?昨日まで山のような予算案の書類を見るので疲れ切ってるのよ!?もうちょっとくつろいだっていいじゃないのよ?それに、大臣たちとはヒズが殴り合いすればいいじゃないのよ?」
「この老骨に大臣どもと殴り合えと?」
「そうよ!歳の事を言うなら、ヒズの家に伝わる伝家の宝刀を抜けばいいじゃない!」
「あれは陛下を守るためのもの。予算折衝では刃傷沙汰はご法度ですぞ?あくまでも拳で予算を勝ち取るのが皇国の流儀。武器持込みは陛下の敗北を意味しますぞ?敗北すれば予算が膨れ上がってしまい、増税を民に強いる事になるのですぞ?予算折衝は闘技場にて民にも公開しているのです。偉大なる初代皇帝が遺した『民は強き国、勇ましい皇帝を望む』の言葉を、よもや忘れたとは言わせませんぞ?」
···なんだか物騒な話だなぁ〜?予算折衝ってここじゃガチで殴り合いなんだ···。それと初代皇帝のその言葉って、某山手線の英雄たちを倒そうとするRPGの帝国の皇帝の言葉まんまですけど?偶然なのかなぁ~?
あと、かつてパスさんが言ってた『予算をぶん取った!』ってリアルに殴り倒したのか···。
「も〜〜!わかったわよ!はぁ~、今年も面倒くさいわね···。ゴメンね〜、アキくん!次は予算成立したら遊びに来てね〜!」
「陛下?その頃はすでに外遊の予定が組まれておりますぞ?」
「アキくん!私を助けると思って連れ去って〜〜!!」
「ははは···。頑張って下さいね」
こうしてパスさんはヒズさんに引きずられて皇城に帰っていった。サキちゃんも一緒に帰っていったよ。
ホント、よくパスさんでこの国が栄えてるなぁ〜。周辺の人たちや影武者さんの頑張りがすごいんだろうなぁ〜。
グロー歴523年8月30日 曇
おはよう!しっかり眠れたから今日はもう時差ボケは大丈夫だよ。
さて、今日はアクロに帰ろう。朝食をいただいてから門の外まで送ってもらい、転移でアクロに戻った。
はぁ~···!帰ってきたなぁ〜!こうして帰る場所があるのは大事だよ。
「ここがアクロって温泉地なのか···。なんか臭うな?」
「クロくんは温泉は初めてみたいだね?温泉って言ってもいろいろあるけど、ここは火山性の温泉が出てるから、卵が腐ったようなニオイがするんだよ。とってもいい温泉だよ〜」
「へぇ〜!それは楽しみだぜ!」
約1月ぶりに返ってきた我が家。今日はちょっと長風呂しようかなぁ〜?
まずは昼食を作ろうか!夕食は買い出しに出て、クロくんにアクロの料理を堪能してもらうか!エレさんのところは昼から行くことにしよう。
結局リオ一家の分も作るハメになったよ···。まぁ、昼はパスタだからそんなに手間じゃないけどさ。
そして、昼食を終えた後にボクはエレさんの家にやって来た。
···相変わらずフツーの家なんだよね。この中で行われているのが『世界創造』なんてスケールがバカデカイ事やってるのに、このギャップ感がすごいわ···。うちもそうだけどさ。
ドンドンッ!
「エレさ〜ん!アキです。相談事があるので来ました〜!」
すると、扉が開いたよ。こう言わないと居留守するからなぁ···。
「やあ、アキくん!ウェーバー大陸から帰ってきたんだね?今日は相談事らしいけど、借金返済期限を伸ばしてくれるのかい!?」
···やっぱそっちに話を振るよな。
エレさんはラーメン屋台の借金は完済したものの、今度は神様の業務でボクに救援要請して、その代金を借金してるんだよ。
コピーアキがまたはっちゃけすぎて、とんでもないGPを請求しちゃってるしね。おかげでボクの創った世界は潤ってるけど。
「違いますよ。神様関係の相談です」
「なんだぁ〜···。期待して損したわ···」
「あのですね?こっちが債権者なんですからね?ちゃんと払ってもらいますから。利子取ってないだけでありがたいと思って下さい」
「うっ···、とりあえず中へどうぞ」
ホント、このみすぼらしい姿を見ると、この世界を完成させた元神様とは思えんよね〜。
さて、部屋に入るとナビさんは猛スピードでキーボードを叩きながらこっちに声をかけてきた!
「やっほー!アキくん、ごめんね〜!ちょっと手が物理的に離せないから、このままで話を聞かせてもらうよ〜!」
「···大丈夫なんです?タイプミスしないです?」
「大丈夫!エレくんみたいな凡ミスはしないからね〜!」
「ちょっとナビくん!?その話はオレのトラウマなんだからしないでよ!?」
「確か、伝説の神器の名前を全部タイプミスしちゃって、某5作目のファンタジーなRPGのようになっちゃったんでしたっけ?」
「アキくん!?トラウマをほじくり返さないでよ!?」
「はいはい、先制攻撃はこの程度にして、今日は相談事で来たんですよ」
「そういえばアキくんたちはウェーバー大陸に行ってたよね?もう帰ってきちゃったのかい?」
ここでボクはウェーバー大陸での出来事について話した。
「なるほどね〜。ムーオと違って人々の間で戦争っていう政治的手法で世界征服かぁ〜。面白い事考えてる神だね〜!」
「ちょっとナビくん!?一大事じゃないか!?」
「エレくんとアキくんの世界もそうだったでしょ?戦争はどの生き物でも必ず起こるし、人類であれば技術が急速に発展するいい機会なんだよ。犠牲が出てしまうのは避けられないんだけどね」
「確かにナビさんの言う通りですよ。スマホなどの情報技術も、戦争による技術発展の賜物ですしね。まぁ、なんとか避けたいとは考えてますけど。ウェル帝王は科学技術でこの世界を征服して神になるつもりみたいですよ」
「再構築狙いか〜。これも正当な方法だからね〜」
「そうそう、ナビさん?この再構築って、どうすれば成立するんですか?ムーオも狙ってましたけど」
「全ての国が服従したって証明書を集めて創世神に申請したらいいんだよ〜!」
「···なんか役所への届け出みたいですね?どうやって出すんです?」
「世界開発管理局って部署が全世界の状況を見ているんだ。世界征服完了したら書類が送られてくるんで、同封してる返信用封筒に入れて封をしたら転送されて即日承認されるんだ。そして新たな神が誕生ってわけ」
「なんか補助金申請みたいだなぁ〜。でも帝王は、『協力したら世界の半分をやる』って言ってきましたけど?」
「なんじゃそりゃ?某竜退治のゲームのまんまじゃん!···もしかすると!?」
「その可能性もあるんですよ、エレさん。ウェル帝王は地球、しかも日本出身かもしれません」
「オレとアキくん以外にも日本出身がいたんだなぁ〜」
「ボク以外のナビが勧誘したんだろうね〜。結構地球からは勧誘して神様になってもらってる人は多いよ〜!」
「でもナビさん?ウェル帝王は魔法が使えないと言ってましたけど、そんな事ってあるんです?」
「あるよ〜。世界によっては地球みたいに魔力がない世界もあるしね。おそらく創世した時に初期設定で『魔法がある』にチェック入れなかったか、入れ忘れたかだね〜!一度設定しちゃうと変更効かないしね」
「うわぁ~···、取返しつかないのかぁ〜」
「まぁ、敢えてつけない場合もあるけどね。地球はそうだよ」
「そうだったんだ···。あと、マクス帝国はほとんど魔法が使えないそうですよ。そんな事ってあるんですか?」
「そんな事ないけど?ただ単に魔法の使い方を知らないんじゃないかな?」
「あぁ〜、失伝の可能性があるのか···。鎖国状態で魔法禁止しちゃってるから、そもそも使い方知らないって事か」
「多分ね。でも科学が発達した国ね〜。なかなか面白い国ができてるじゃないかな?」
神様になって世界のお世話してる時って、国の情勢とか考えないからね。経過よりも結果に対してアクションしてるだけだしね。
まぁ、帝王が日本出身だってのはわかったよ。魔法VS科学なんて、某小説じゃあるまいし。でも、その情勢になりつつあるんだよなぁ〜。
ボクとしては魔法も科学も技術の流派に過ぎないって考え方だよ。逆に科学も魔法の一部であるという考え方だったから、元の世界ではかなり浮いてたけどね。
どっちも優位なんてない。要は使い方次第なんだよ。どっちも尊重してより良い世界になってくれればって思うのは思い上がりもいいところなのかな?
さて、もう一つ気になってた事があるので、それも聞いてみるか。
「あと、このエーレタニアには神様が多いように思うんですけど、どれぐらい把握されてるのか?ってところなんですよ。ウェーバー大陸では6人も会ったし」
「お〜!?その事ね〜!たっくさんいるよ〜!」
···はい?たっくさんいるんですかぁ···?
パスさんはあっさりと出入国履歴を改ざんしてしまいました!やはりスパイ経験もあるだけあって手際がいいですね〜。
そして皇国の予算は拳で勝ち取る!という方式でした!当然論戦が行われてるのですが、こじれるとリングに上がってやり合うようですが、ちゃんと安全を考慮した上での試合ですのでご安心下さい。国民にも大人気なんですよ。双方真剣にやってますので、居眠りしたら予算なくなりますよ(笑)。
そしてエレくんとナビくんの漫才は相変わらず健在でした。アキくんは『利子取ってない』と言ってますが、実際はコピーアキくんがリボ払いで請求してるという事実をアキくんが知らないだけなんですよ。
そしてウェーバー大陸での事で相談してると、とんでもない事実が明らかになりましたよ!?
さて次回予告ですが、ナビくんはエーレタニアに異世界の神がたっくさんいると言い切ってしまいましたが、それにはとんでもない理由がありました。どういった理由で神が多いんでしょうか?
それではお楽しみに〜!




