4-13.教授の正体
「おや?教授じゃないですか?こんな深夜にどちらへ?」
「はっはっは!夜間走行のデータを取ってみたくてね!夜明け前には戻るつもりだ」
「そうですか。お一人なんです?積荷を確認させてもらってもいいですか?」
「一人だが、積荷はデリケートな計測機器ばかりでね。見るだけにしてくれよ?触って止まってしまったらマズいからさ。帝王に提出するデータなんだからさ」
「では···」
「見ての通り、今もデータ取りしてる。触らないでくれよ?」
「···確認いたしました。もう大丈夫ですよ」
「そうかい。それじゃ行ってくるね」
「お気をつけて。最近街道に魔獣出現の情報もありますから」
「わかったよ。囲まれても無理やり突破してみるさ。もしそうなっても耐久性試験も兼ねられるなぁ〜!」
「ははは···」
ふぅ~、ヒヤッとしたよ···。
ボクたちは計測機器の奥にある、隠された箱の中に入っていた。そこまで踏み込まれないよう、教授も気を使ってくれたね。
深夜にマクス帝国を教授が運転するトラックで脱出することに成功した。入国履歴が身分証に残ったままだけど、これについてはサバール王国に報告した時に消去してもらうつもりだ。ムリだったらパスさんにお願いかなぁ〜?
門からかなり走って見えなくなったところでトラックは止まった。そして、教授が荷台にやって来たよ。
「ここまで来ればもう大丈夫だよ。出ておいで」
「ふぅ~、助かりました。ありがとうございました」
「いや、元はといえば招待したこちらに非があるからね。魔法を国内で使うとどうなるかも説明しきれてない部分があったと思うよ」
「いえ、ボク自身も救助活動で魔法を使ってはいけないと事前に知っていても、あの場面だったら躊躇なく使いましたよ。完全に運が悪かったですね」
「そうだね。···もしくはハメられたのかもしれないな」
「えっ!?」
「実は帝王にはキミたちの事は話してしまっていたんだ。『必死の洞窟に入る手段を教えてくれた人たちを招待した』ってね」
なるほど。外国人でこの世界にはない知識を持ってるのは外の理の者か神様ってその時点で気づいたか。だから直接話をしに来たんだな。どうして犯罪者に帝王が会いに来たのか疑問だったんだよね。
よくよく考えたら誰もいないのに鉄パイプが倒れるのも不自然だよ。ボクたちの動向を見てやられちゃったんだろうなぁ〜。
「帝王と話をしましたが、洞窟の話はしませんでしたね」
「気づかれたくなかったんだろう。アタマはキレる方だからね。帝王は他に何て言ってた?」
「世界征服して神になりたいそうですよ」
「そんな話までしたって事はアキさんもやっぱり神なんだね?この世界ではない···」
「···え?どうしてそう思われるのです?」
「まずその腕輪。神器だからね~。あと、気づいてないかもしれないけど、アキさんからは『神のオーラ』が出ているんだよ。ある程度実力のある神しか気づかないんだけどね。最初は神器からオーラが出てると思ってたけど。それに、私も実は神だよ」
「えっ!?そうなんですか!?」
「ウェルとは違う世界だけどね~。のんびり気ままに研究ばかりしてたら追放されてね。だからアイツの言う事もわからなくはないんだよ」
「そうですか···。本当に戦争を仕掛ける気なのでしょうか?」
「今のところは準備不足だね。でも、時が満ちれば実行に移すかもしれない」
「ボクとしては戦争にしたくないんですけどね」
「私も戦争は反対だ。好きに研究できないしね~」
「ははは、なるほど」
「アイツは魔法が使えないからこの技術で対抗しようとしている。でも、魔法もかなりの脅威だからね。こっちが手を出す前に別の国から侵略される可能性も考えられる。国内では至って平和ではあっても、行商人たちの感覚は鋭敏だ。他国にはうちが戦争を企んでるってウワサが流されてるみたいだから、まずは自衛から始めるだろう。そこで止まってくれるようにはしてみるよ」
「よろしくお願いします。ボクとしても敵対したくないですしね。魔法も脅威ですが、ボクが元いた世界に似たこの技術は、ヘタすると人類滅亡しかねない兵器まで作り上げますから」
「そこまでの技術になりえるのか···。今度アキさんの世界の技術について研究させてほしいなぁ~」
「ははは!少しだけならいいですよ」
教授も神様だったか···。これでこの大陸で6人も神様に出会っちゃったよ。うち1人は完全に敵対だわ···。
あぁ~、もうマクス帝国には入れないだろうなぁ〜。完全にお尋ね者になっちゃったよ···。脱獄は確実に犯罪者扱いだろうしね。
でもあの様子だとボクを処刑して神の力の核を奪う気でいたからね。あのままおとなしくしていても状況は悪化の一途だっただろうなぁ~。
その頃、城内では···
「脱獄だーーー!!」
「カギがかかっているのにどうやって抜け出したんだ!?なぜぬいぐるみに変わってるんだ!?ふざけやがって!!すぐに探し出せ!!」
「見張り!!貴様、何をやっていた!?」
「申し訳ありません!つい睡魔が···」
一方寮の部屋でも···
「どうやって脱出したんだ!?」
「窓を見張ってましたが、誰も出ておりません!」
「廊下も見張ってましたが、扉は開いていません!えっ!?どういうことなんだ!?」
「いったいどうなっているんだ!?ええい!とにかく探せーーー!!」
憲兵たちが大混乱になっている様子を遠目でジャミン、フラン、クリンは見ていた。
「はぁ~、やっぱり魔法ってすごいのね···」
「『転移』だったっけ?すごい魔法があるのね~!」
「教授もうまく外に出れたみたいだから、作戦は成功のようね。アキさんたちには悪いことしちゃったわね···」
戻って城内の一室では···
「ふふふ···。やっぱりそうきたか。まぁ、そのように仕向けたってのもあるけどさ」
「帝王、申し訳ありません···。すぐに捜索部隊を結成して、なんとしてでも探し出します!」
「いや、その必要はない。法務大臣、すぐに周辺各国に指名手配犯として手配と周知を」
「ははっ!急ぎそのようにいたします!」
「それと···、アキの居住地の情報がある。ここに暗殺者を送り込め。生死は問わん」
「かしこまりました。選りすぐりを向かわせます!」
「ふふふ···。アキ、キミはもう私の手のひらの上にいるのだよ···。せいぜい逃げ回るがいいさ。その行動が周囲を不幸にしてしまう事を知って、絶望するがいいさ···」
教授も別世界の神様でした!
アキくんの言う通り、別世界の神様にたくさん会いましたね〜。シリーズ全体では大魔王ムーオ一味と元神様のエレくん込みで10人にもなってますよ。
さて次回予告ですが、無事マクス帝国を脱出できたアキくんたちは、サバール王国へ報告に向かいます。
ただ、マクス帝国での出国審査を通ってないので密出国扱いになってしまいましたが、どうするのでしょうか?
明日は夜勤なので朝にお話を投稿し、昼休憩中にネタバレ集を投稿します。お楽しみに〜!




