4-9.アキとリオ、逮捕される!?
グロー歴523年8月26日 晴れ
おはよう〜!今日はいい天気になったね。
昨日は教授の研究室でバイクとか見せてもらったよ。試乗もさせてもらったんだけど、元の世界より技術が進んでないから振動が凄かったね···。
かなりクセが強かったので、ボクでも運転が厳しかったよ。元の世界では大型バイクなんて乗ったことないけどね。
まともに動かせたのはハルで、リオはてんでダメだったよ。危うく壊しそうになってたから、教えてくれたフランさんもヒヤヒヤで疲れ切ってたね。
さて、今日は町中を観光する予定だ。入国不可の国だから観光名所なんてないのは分かってるんだけどね。
ただ街並みを見てみたり、食事はどういったものか?とかである程度文化がわかるんだ。なにも名所を回るだけが観光じゃないってことだね。
「あら?おはよう、アキさんたち」
「ジャミンさん、おはようございます」
「今日は町中を見て回るんですって?観光名所なんてこの国にはないから、大して見どころなんてないわよ?」
「はい。ですが、どんな食べ物があるか?とか、街並みの風景を見るのもボクは楽しいんですよ。それが楽しみで遠くまで来てますから」
「ふ〜ん、なるほどね〜。昨日教授も言ってたけど、くれぐれも町中で魔法を使わないようにね。大変な騒ぎになるかもしれないから、注意してね」
「はい、わかりました。では行ってきますね〜!」
というわけで、今日は身体強化魔法もなしでのんびり歩くことにしたよ。ジャミンさんたちもいないから、ボクたちだけで魔法使うと目立っちゃうしね。
街並みは入国した時に感じたのと同様で、あちこちにコンクリート製の建物が見えている。ただ、5階建てぐらいかな?エレベーターはないようだから、5階建てぐらいが限界だろうね。
もちろん木造の家もあるけど少数···、というか、かなり古い建物ばかりで新築は見かけなかった。まぁ、この周辺はあんまり木がないので、単に材料がないだけだろうね。
そうそう、技術といえば電気があったよ!明かりは昔懐かしい電球だった。LEDじゃない白熱灯だったんだよね〜。蛍光灯は見かけてないけどね。
かなり初期の科学技術のようだ。せっかく異世界なんだし、蒸気機関が変に発達したスチームパンクな世界の方が面白そうだったんだけどなぁ〜。まぁ、それはボク個人の勝手な意見だけどさ。
「なんか、アキがいた世界にちょっと似てるなー」
「そうね〜。アキの世界の方がもっと進んでるような気がするけどね」
「リオもナナもほぼ正解だね。ここは別世界の外の理の人たちが作った国って事だけど、案外ボクがいた世界に近いのかもね」
「じーちゃんはこんなくににすんでたのか?」
「そうだね、モンドくん。もっと発達した世界だったよ」
「アキじーちゃんのせかいかぁ〜。たっくさんかいじんとかいたんだろうなぁ〜!」
「いやアトラちゃん···。怪人はいないから···。特撮がリアルな世界じゃないからさ」
アトラちゃんの中ではボクの世界は特撮ものの世界だと思い込んでるんだなぁ〜。怪人はいないけど怪しい人はいたけどさ。
街並みが終わると、その先は工場街っぽくなってきた。
工場街には水路が張り巡らされていたよ。重量のある製品が多いみたいで、小さなクレーンが水路に向けてあったよ。
さすがに元の世界のイタリアのベネチアほどじゃないけどね。それにしても、鎖国してるのにどこに向けた製品なんだろうね?
工場街を散歩して見て回り、時間もお昼になったので昼食をどこかで食べようかな?と思ったその時だった!
ガラガラ!ドーーーン!!
何かが崩れて倒れたような大きな音がした!もしかして事故か!?
大きな土煙が、音がした方から上がってきた。
「リオ!」
「おう!行くぞ!」
みんなで走って向かうと、たくさんの鉄パイプが工事現場から道に倒れていた!これは大惨事だぞ!?
「誰か!妻と娘が···!」
「旦那が巻き込まれたの!誰か···、誰かーー!」
下敷きになってる人がいるようだね。これは一刻を争うぞ!?
「みんな!魔法解禁!急いで助けるよ!」
「アキ!?本当にいいのか!?」
「レオ!人命救助が最優先!!」
「···わかったぜ!」
その後、ボクたちは倒れた鉄パイプを身体強化魔法でどかせていった。そして下敷きになっていた人が見つかった!さっきの奥さんと娘さんだ!奥さんが娘さんに覆いかぶさっていたからとっさにかばったんだろうね。
娘さんはかすり傷程度だったけど、鉄パイプの直撃を受けた奥さんの息が非常に弱い!このままじゃマズいよ!?
「リオ!」
「おうよ!」
リオが回復魔法をかけている間に鉄パイプをさらにどかせると、もう一人いた!さっき言ってた旦那さんだね!この人も頭から血を流してマズい状況だ!
旦那さんはボクが回復魔法をかけた。なんとか助かりそうだよ!間一髪ってところだったかな?
とりあえず一命はとりとめた。今は気を失ってる状態で、外傷はなくなったよ。パニックになってた奥さんも無事な様子の旦那さんを見て近寄ってきて、安心したせいか腰が抜けてしまっていたよ。
リオの方も奥さんは一命をとりとめたようで、気を失ってるだけだ。旦那さんはリオの回復魔法を見てビックリしていたけど、手を出さずにじっと見ていて、魔法が終わってから奥さんと娘さんに近づいて抱き寄せていた。
たまたまボクたちが近くにいたからこうして助けることができたね。救急隊と憲兵がこっちに近づいてきたよ。これで引き渡したら終わりだね。
そう、この時はそう思ってたんだ···。
「なんだ、貴様らは?ここらでは見かけん顔だな。この事故はお前たちのしわざか?」
「···えっ!?違いますよ!ボクたちは大きな音がして駆けつけただけです!」
なんと!?いきなり容疑者扱いされたよ!?これはマズいか!?
そう思っていたら、周りの人が説明してくれたよ。
「その人たちは命の恩人さんたちだよ!見たことのない魔法で鉄パイプをどけて治療してくれたんだ!」
「なんだと!?魔法を使っただと!?」
「そうだ!そのおかげで2人の重傷者を治してくれたんだ!」
町の人たちの証言を聞いた憲兵がボクたちを睨みつけてきた!これはヤバいか!?なんとかしないと···!
「その人たちの言う通り、ボクとリオで回復魔法を緊急的にに使わせてもらいました。人命最優先ですから」
「お前たちがやったんだな?」
「···そうです」
「わかった。この時間をもってこの2人を魔法行使罪で緊急逮捕する!」
「なっ!?」
周囲がざわっとした。
「命を助けてもらったのに!?」
「恩人に対してひど過ぎないか!?」
町の人々はボクたちに好意的だったよ。しかし···。
「やかましい!なら貴様らも全員幇助罪で逮捕だ!」
雰囲気は一触即発状態だ。ただ、憲兵は武器を持っている。しかも銃っぽいよ。このままだと暴動になりかねないか···。
···やむを得ないな。ここは憲兵の言う通りにするか。
「リオ、おとなしく行こう」
「アキ!?本気か!?オレたちは何も悪いことしてないのにか?冤罪だぞ!?」
「それでもだよ。大丈夫!ボクたちは無実だからさ」
「アキ···」
「ハル、レオ。あとは頼んだよ。ハル···、ごめんね。約束していた『明日の月は一緒に見れないけど』ね···」
「···!?···アキ。···こっちは任せて」
「アキ!?本当にいいのか!?」
「···レオ。···ここは、アキの言う通りにして」
「ハル···、わかった」
「じーちゃん!?」
「じーじ!?」
「モンドくん、フーちゃん。ボクは大丈夫だから。心配だろうけど、ハルの言う事をよく聞いてね」
「じーちゃん···」
「じーじ···」
「ナナ!『ハルと一緒にいて』ね!」
「アキ···!?···ええ、わかったわ」
「アキじーじ!?」
「アキじーちゃん!?あたいはアキじーちゃんはあくじゃないってわかってるから!」
「ちょっとーー!?アトラーー!?それだとオレは悪って事になるぞー!?」
「リオ!今はそんな事はいいから!」
「いやー、アキー!これは大事だぞー!?オレは無実だーー!!」
「やかましい!連れて行け!!」
こうしてボクとリオは連行されてしまったなんだ···。
工場街の入口に止まっていた、上が白で下が黒の車にボクたちは乗せられてしまった。元の世界のパトカーと一緒だよ···。
ボクとリオは手錠もされずに両側を憲兵に挟まれる形で乗せられていた。···魔法を封じられてないから、ここでリオにちーむッス!の脳内版でボクの考えを伝えておこう。この魔法はボクオリジナルだから気づかれないはずだ。
『リオ?聞こえてる?声に出さずにボクを見て、ボクに伝える言葉を思って』
『アキ!?これって!?』
『ちーむッス!の応用版だよ。音声を文字にできるなら、思った事も伝えられるかなぁ〜?って考えたら、あっさりできちゃったね』
『相変わらずアキはスゲーな!でー?どうするんだー?』
『ちょうどいいから、この国の中枢をボクが探ってみる。リオは正直に話すだけでいいよ。明日の深夜にハルたちがボクたちを迎えに来る。合流したら、この国を出るよ!』
『わかったぞー。それまでおとなしくしておくぞー』
よし!これでリオと作戦会議は終了だ。まさか某ロボットアニメのようなテレパシーを魔法で実現できるなんてね!
さて、こちらの国はどう出るかなぁ···?
なんと!?救助行為でも魔法を使用したら逮捕されてしまいました!大変なトラブルに巻き込まれてしまいましたよ!?この後どうなるのでしょうか!?
というわけでもう次回予告をしましょう!
アキくんとリオくんは城の地下牢に入れられてしまいました。そして取調べを受けるのですが、アキくんの言い分を聞かずに一方的に悪人扱いされてしまいます···。果たしてどうなるのでしょうか!?
気になるでしょうが、明日の投稿をお待ちください。