4-6.マクス帝国での過ごし方
「ジャミンさん?さっき入国はダメって事でしたけど、ホテルってあるんですか?」
「あぁ~、そうよね〜。大部屋にベッドしかない狭い簡易的な宿はあるぐらいね。アキさんたちみたいに旅で来るなんてないからね。外交関係ならお城だし、行商人は外壁の外でキャンプだからなぁ~」
「そうですか···。孫たちもいるから個室が良かったけどなぁ〜」
「じゃあ、研究所に来る?」
「えっ?機密とか大丈夫なんです?」
「まぁ、場所によるけど招待客用の部屋があるのよ。あんまり使われてないから空いてると思うわよ」
「じゃあ、お世話になりますね」
どうやらこの国にホテルはないらしい。大部屋でベッドだけって元の世界のカプセルホテル以下だね。そういう宿もあるんだけどさ。さすがに小さい孫もいるのにそういう環境は好ましくないから助かったよ!
ただ、技術研究開発機関の研究所って最新技術の塊なんだよね···。機密情報に近づかないよう十分注意しておこう。
町並みは思ってた以上に近代的だったよ。町中の道路はアスファルト舗装だった。石油が出るならこれは可能だ。その道を黒煙を吹きながら車が多少走っていた。黒煙を吹くってことは不完全燃焼してるんだよ。内燃機関の技術と制御はまだまだだね。
建物はコンクリート製もあったよ。こう見ると、かなり科学技術が発達しているよ。魔法のある世界なのにね。こうして一つの世界に魔法と科学という2つの技術体系があるってのは興味深いよ。
ジャミンさんたちはバイクに乗って低速で移動していた。ボクたちは身体強化して後を追っていた。周りからジロジロ見られちゃったね···。なんか都会人が田舎者を見ちゃったような視線だよ···。
そうして進むこと20分、ボクたちはマクス帝国の技術研究開発機関『ガウス』の正門に着いたよ。
結構広い敷地だ。遠くまで鉄柵が並んでいるよ。もちろん、一番上は有刺鉄線があるよ···。警備は厳重そうだけど、本当にいいのかなぁ〜?
ジャミンさんは正門にある警備詰所に行った。
「ただいま〜!お客さん連れてきたから来客用の宿泊部屋空いてるかしら〜?」
「お帰り、ジャミンさん。お客さんって後ろの?どういう目的なんだい?」
「ボルタニア大陸から来たらしいから、向こうの大陸の技術を教えてもらおうと思ってね。教授は絶対乗り気になるわ!」
「あぁ~、そういう事か。まぁ、教授なら言い出しかねないよなぁ〜。本当は拒否したいんだけど、仕返しされると困るのは警備部だから通しておくよ。監査部にバレないようにしてよ?」
「わかってるわよ!あとでこじつけの申請書出しておくからね〜!」
「じゃあ、この招待者カードを皆さん首にかけていて下さいね。なかったら不法侵入という扱いになりますのでね。それではどうぞ」
やっぱり本当はダメなんだわ···。この教授ってかなりの権力を持ってるようだね?
ジャミンさんたちの後に続いてボクたちも中に入っていった。歩く事5分。そこそこ大きな建物があって、その1階のシャッターを開けてバイクを中に収容した。
「それじゃあ、宿泊施設に案内するわね〜」
そう言われてついていくと、さっきとはお隣りにある建物に入っていった。
「ここは機関の寮でもあるのよ。ここの1階が客用の部屋なのよ。食堂も大浴場も1階にあるわよ。夕食は午後6時から、朝食は午前7時からよ。はい!ここの部屋よ。カギは1本しかないから気をつけてね〜」
「ありがとうございます。あと、さっきボルタニア大陸の技術のついてって話してましたけど?」
「あぁ~、それはどっちでもいいわよ。ただ、教授には会ってほしいかな〜?」
「さっきからみんな恐れられてますけど、どういった方なんですか?」
「う〜ん···。話すより会ったほうがすぐわかるんじゃないかしら?」
「はぁ···、そうですか」
「今日はまだ帰ってないでしょうから、明日の朝に迎えに来るわ。それまでゆっくりしていってね〜!」
そう言ってジャミンさんたちは出ていった。さて、部屋の中はというと、ここも大部屋に2段ベッドが4つの部屋だった。まぁ、レオはスマホ内のボクの世界の家で寝るそうだから問題ないか。
「ふぅ~。ここも割と窮屈な方だけど、個室だからまだマシだね」
「そうだなー。それにしても旅人は入れない国なんてあるとは思わなかったぞー」
「元の世界でも入国制限が厳しい国はあったからね。いまいち情報がないから、どういった対処が必要かわからないのは困るなぁ〜」
「···何かありそうだね」
「ハルもそう思う?ボクもだよ。さて、食堂と大浴場は案内されたからいいとして、それ以外は迂闊に歩けそうにないなぁ〜」
「アキ?明日会う教授って人にいろいろ聞けばいいんじゃないかしら?」
「そうだね、ナナ。じゃあ、夕食までのんびりしておこうか!」
夕食の時間までベッドメイキングをしたり、孫たちはスマホでアニメ見たりしてくつろいだよ。
そして夕食の時間になり、ボクたちは食堂に向かった。
「えっ!?食券自販機あるのかよ!?」
そう、食堂は定食ばかりだったんだけど、食券を券売機で買う方式だった!高速道路のサービスエリアのフードコートみたいにボタンがたっくさんあるわ···。
「じーじ?これってどうするの〜?」
「フーちゃん、それにみんなも買い方を教えるね。食べたいメニューのボタンを押してから右下にある端末にサイフをタッチしたら食券が出てくるから、それをキッチンカウンターに持っていったらいいと思うよ」
「へぇ~、てんいんさんいらないんだな〜」
「でもモンドくん。うちはこれだとパパのおしごとなくなっちゃって、ママにおこられそう〜」
「フーのパパってたいへんなんだなぁ〜」
ヨウくんは主に予約とレジ担当らしいからそうなるね···。さて、それじゃあ購入しようか!
「それじゃあ、食べたいもののボタン押してね〜!ボクが決済するよ!」
「「「「はーーい!」」」」
そして孫たちはボタンを···、押しまくった!!そんなに食べれるのか···?
そしてハルとレオが定食を選択し、ボクは···、『お肉は日替わり!からあげ定食』にした。いったい何が出るんだろう···?
リオもボタンを押しまくって、ナナは定食を選択した。
食券をみんなで持っていくと、おばちゃんがびっくりしてたよ。
「あら!?あんたたちは客人だね!よく券売機の使い方がわかったね?初めての人はまず困ってるもんだけどさ」
「ははは、適当にやったら出たので···」
「そうかい!こんなにたくさん注文してくれてありがとね!できたら呼ぶから、しばらく待ってておくれ!」
さすがに『元の世界にもあったから』なんて言えないしね。空いてるテーブルに座って、ボクは人数分のコップをキッチンから取って、水を入れた。さすがに給茶機はなくて、タルのコックをひねって水を出すタイプだったよ。
そして注文した料理が続々出てきて、孫たちが全部取ってきてくれたよ。寮だからお酒がないのは寂しいけど、まぁ仕方ないね!
「それじゃあ、いただきま〜す!」
「「「「いただきま〜す!」」」」
うん!寮の食堂にしてはめっちゃおいしかったよ!ちなみにからあげは牛肉っぽいかもしれない微妙なお肉のからあげでした。意外とイケたよ。
マクス帝国内は科学技術が発達した国のようでした。ただ、アキくんの元の世界ほどのレベルではないようですね。魔法が発達した世界なのにかなり異色ですね。
さて次回予告ですが、翌日にアキくんたちは教授に出会いますが、実は会ったことある人でした!
さらにマクス帝国の成り立ちが判明します!驚きの理由とはいったい何なのでしょうか?
それではお楽しみに〜!




