4-4.『必死』の洞窟
ジャミンさんたちと分かれて、ボクたちはマクス帝国に向けて出発した。
「おうおう!ここはサソリ団のナワバリだぞ!?それを知ってここを通ってるのかぁ!?」
「へっへっへ!カワイイ獣人と珍しいドラゴン族のガキかよ!?コイツは高く売れるぜぇ〜」
「さあ!有り金と食料と水を出しな!『命だけ』は助けてやる!まぁ、身ぐるみ剥がされたあとは魔獣のエサになるだろうがな!はっはっは!」
「フヘヘへ!コイツら、マジでビビって声が出てねえわ!」
···この大陸に来て初めて山賊に出くわしたよ。
そういえばテスラ共和国には昔盗賊団に襲われたって言ってたから、こいつらはその末裔かな?まぁ違うだろうけどさ。
さて、選択肢としては某ゲームの地上戦艦に突入する時の『そういう奴らには先制攻撃あるのみ!』一択かな?軍師はいないけどさ。
「モンドくん、フーちゃん、ルメちゃん、アトラちゃん。やっておしまいなさい」
「おうよ!きょういくてきしどうってヤツをやってやるぜ〜!」
「フーもごしゅつじんだよ〜!」
「あたしもいくわよ〜!」
「せいぎのてっついをうけてみろ〜!」
「ハハハ!ガキどもが相手だと!?笑わせてくれるわ!大人に歯向かってタダで済むと思うなよ!!」
ということでノリノリな孫たちに全任せしちゃったよ。本来なら保護者であるボクたちが相手すべきなんだろうけど、これも経験だからね。大した経験値くれそうにないけど、孫たちのレベルアップの役に立ってもらおうか!
そもそもドラゴン族にケンカ売る時点で負け確定なんだけどね。ウェーバー大陸ではドラゴン族が少ないようだから、そのあたりの常識も知らんか。
「みんな〜!このまえさくせんたてた『れんけーわざ』をやるよ〜!」
「「「りょうかい!!」」」
フーちゃんが声をかけてみんな一斉に動き出した!連携技?格ゲーに影響されちゃった?
「まずはおれだ!パパりゅうそうじゅつ!せんぷうじん!!」
「つぎはあたしね!ふりーふぉーるトルネード!」
「つぎはフーだよ〜!ひぎ!らせんざん〜!」
「トドメはあたいだ!ひっさーつ!らいだーきーーっく!!」
「「「「ギャーーー!?」」」」
ちゅどーーーん!!!
ものの見事に4連携キメちゃった···。モンドくんが山賊を空に舞い上げ、ルメちゃんがさらに急降下と急上昇をキメて、フーちゃんが斬撃でまた宙に舞い上げ、落ちてきたところをアトラちゃんの必殺技で吹っ飛ばして爆発させちゃったわ···。キレイな空中コンボだったよ。
「「「「いえ~い!!」」」」
4連携が決まって全員で円陣組んでハイタッチしてたよ。うん、もう一人旅させても問題ないかもしれないね。
その後の旅は順調に進み、その日の午後には次の宿場町に着いた。この大陸ではあんまり魔獣は見かけないね。先日大規模な襲撃があったけど、まんべんなく多いわけではなさそうだ。やっぱりボルタニア大陸が多すぎるだけなのかなぁ〜?
ここでも検問があったよ···。かなりマクス帝国は厳しそうな国のようだね。
「はい、確認できましたよ」
「ありがとうございます。道中で山賊がいたので、懲らしめておきましたよ」
「そうでしたか!?お強いんですね〜!ささ、どうぞ中に入って!お疲れでしょうし、ここには温泉がありますから、疲れをより癒せますよ〜!」
「温泉があるんですか!?」
「ここらでは珍しいんですよ。ただ、温泉が出てくる洞窟は『必死の洞窟』と言われてますけどね。立入禁止になってるので入らないで下さいよ。必ず死ぬ洞窟ですから」
「それは怖いですね···。気をつけますね」
必ず死ぬ洞窟ね···。温泉という事も考えると、アレかな?
そして宿にやって来た。ゆっくり温泉に入りたいから、明日はチェックアウトギリギリまで滞在しようかなぁ〜?
「すいませ〜ん!2家族9人なんですけど、空いてますか〜?」
「いらっしゃい!空いてるぞ。うちは温泉があるから、ちょっと値段高いがいいか?1室3万ジールなんだけどな」
「いいですよ〜!どんな温泉なんですか?」
「ちょっとぬるいんだが、長時間入るとポカポカしてくるんだ。ただ、湯口に近づきすぎるとなぜか息苦しくなるから、近づかないようにしてくれ」
「なるほど···。ありがとうございます!」
チェックインも済んで、部屋に入ってくつろいだ。落ち着いたら温泉の説明をするからって言って、リオたちにボクの部屋に来てもらうよう伝えておいたよ。ちょっと気をつけないといけないからね。
「アキー?温泉で気をつけないといけない事ってなんだー?」
「どうやらここは二酸化炭素泉のようだね。湯船に浸かる時は、顔を湯船の縁よりも上にしておいてね」
「アキじーじ?どうして?」
「ルメちゃん、それはね。二酸化炭素って言うのは空気より重いから、湯面付近に溜まってるんだ。吸い込むと息苦しくなるからね」
「あぶねえおんせんなんだなぁ〜」
「アトラちゃんの言う事ももっともなんだけど、この温泉は血圧を下げて心臓関係の病にもいいんだよ。非常にレアな温泉だから、ボクも元の世界ではよく入りに行ったものだよ」
「要するにちょっと上に顔を出せばいいのね?」
「そうだよ、ナナ。これで注意はおしまい!みんな、楽しんできてね〜!」
さて、ボクたちも温泉に行くよ〜!えっ!?『男湯はいいから女湯の状況を伝えんかい!!』だって?ボク男だからムリに決まってるじゃないか!?
何だって!?『邪法で女になれ!だって!?』もうあんな体験は二度とゴメンだよ!!
もう〜!温泉入る前に怒鳴っちゃったから疲れたよ···。
「アキー?どしたー?なんか疲れてる顔してるぞー?」
「いや···、変な声がして心の中で怒鳴っちゃったよ···」
「ん~~?まー、大丈夫ならいいけどなー」
さて、気を取り直して!温泉にレッツゴー!!
脱衣所で服を脱いで、大浴場へ行くよ〜!
中に入ると、大きな湯船があり、露天風呂まであるようだね!ちょっと濁ってる湯で温度は低めだね。
「じーちゃん?じーちゃんちのおんせんよりぬるいなぁ〜」
「そうだね、モンドくん。でも、長く浸かってるとあったかくなるんだよ〜」
4人一斉に湯に浸かった。あぁ~···、久々だわぁ〜。このぬるさ、少しずつあったかくなるんだよ。湯に含まれる二酸化炭素が皮膚から吸収すると血管が拡張されて血行が良くなり、体がポカポカして血圧も下がるんだよ。元の世界のドイツでは心臓病の療養としても利用されてるんだよ。
「おー?確かに少しずつあったかくなってきたぞぉー!」
「へぇ~、こんな温泉があるんだなぁ〜!」
「ホントだ〜!あったかくなってきたぞ〜!」
「面白いでしょ〜!ボクのお気に入りの泉質なんだよ。さっき検問で言ってた必死の洞窟だけど、理由がわかったよ」
「どういう事だ?」
「レオ、二酸化炭素が洞窟内に充満してるんだよ。空気がないから、入った瞬間に酸欠になって死んじゃうんだよ」
「じゃあ、中に入れないのかー?」
「リオ、そこはアトラちゃんがやってた海に潜るための風魔法さ」
「なるほどなー!理由がわかれば大丈夫なんだなー!」
そんな話をしていたら、近くにいた人から声をかけられたんだ。
「ほう?面白いことを聞きましたよ。ではあの洞窟に入れるんですね?」
今回は温泉回でしたが、男湯だけですよ!ちなみにアキくんが女の子にさせられちゃったのは本編第7章でしたね〜。
そしてこの温泉は実際にあるのですが、日本国内では20カ所ぐらいしかない超レアな温泉なんですね。詳細につきましてはネタバレ集にも書きましたので、少々お待ちくださいね。
さらに必死の洞窟みたいな洞窟も実際にあります。そのため、入口から下りになってる洞窟は非常に危険ですから、立入禁止の洞窟に入るのは絶対にやめましょうね〜!
さて次回予告ですが、必死の洞窟に入る方法を探していた人と話をします。
そして翌日にマクス帝国に到着しましたが、招待状を怪しまれてしまいます···。なんとか入国することはできるのでしょうか?
それではお楽しみに〜!