4-2.バイク乗りの女性たち
グロー歴523年8月22日 晴れ
おはよう!今日はいい天気になったよ。
昨日は魔獣の大群の襲撃を撃退したね。無料で泊まらせてもらったけど、厨房が壊されてしまったので食事は自前で用意したんだ。ついでに撃退した時のイノシシ魔獣の解体も夕食時には完了していたので、ぼたん鍋もどきを肉焼きセットを使って大鍋で作ってみたよ。大量に作ったので宿場町の皆さんや宿泊していた人にも配布しておいたよ。
「本当にお世話になってしまい、ありがとうございました」
「いえ、食材が余ってましたからね。これから復興が大変でしょうけど、頑張ってくださいね」
こうしてボクたちは宿場町を出て、マクス帝国への街道を一路西に向けて進んだんだ。
街道を歩いていると、大きな荷馬車がそこそこ行き交っていたよ。物流が多いというのは経済的活動が活発な証拠だね!
ただ、テスラ共和国で聞いた話では行商人は入国できずに、国の外で荷下ろしをせざるを得ない状況だということだった。どういった状況なのかさっぱりわからないから、やっぱり行ってみないとわかんないよね!
太陽が一番高くなってきて、そろそろお昼かな?と思ったその時、街道の先の方からそこそこ大きなトラックぽい車が土煙を上げながら近づいてきた。マクス帝国製なのかもね。ピムエム皇国でも市内限定で魔導車が走ってはいるけど、まだまだ一般的な乗り物じゃないからね。
街道をロングランするって事はそれなりに魔力が必要だから、大きな魔石を積んでるのかもしれないね。この世界には石油があるのか分からないしね。
そう思って近づいてきたトラックっぽい車をよく見ると、後部から排気ガスを出してたよ!?ま、まさか!?
ドドドドド!!
···うん、重低音からしてディーゼルエンジンっぽいなぁ〜。まさか石油があるのか?
孫たちは初めて見たトラックを通り過ぎてもじ~っと見ていたよ。
「さっきのくるま、ウマがいなかったな〜。あにめやとくさつでみたのににてるな~」
「アトラちゃん、さっきのはトラックだよ。油を燃やした力で走るものなんだよ」
「あたしもはじめてみたわ!ちょっとけむたかったわね」
「ルメちゃんも初めて見たからびっくりだよね?油を燃やすから煙が出ちゃうんだよ」
「なー、アキー?あれって。アキの世界で走り回ってたよなー?」
「そうだね、リオ。···おそらく、マクス帝国も外の理の者のおかげで技術発展してそうだ」
「もしくは神がいるのかもな」
「レオの予想通りかもしれないね。これは一筋縄じゃいかないぞ?」
ただ、トラックはさっきの1台のみしか見かけず、他は大きな荷馬車が行き交うだけだった。そこまで普及してるわけではなさそうだなぁ〜。もしくは試運転だったかな?
途中で昼食にした。今日の昼食はさっきの宿場町で買っておいたんだ。
軽く休憩してからまた街道をひたすら歩いた。このウェーバー大陸は湿気が少ないせいか、森がほとんど見かけなかった。草原か砂漠に近い状況だね。結構荒涼とした景色が続いているよ。
さて、そんな景色の中でポツンと宿場町が見えてきた。どうもオアシスっぽい湖があるようで、そこに小さな町ができてるようだね。こんなロケーションもなかなか旅行感があっていいねぇ〜!日本には見かけない景色だからね。
宿場町の入口に着くと、衛兵が立っていた。基本的に宿場町では身分証チェックはないんだけど、ここはきっちりとチェックしているようだ。
まだ午後3時前だから空いてたので、並ばずにチェックを受けることになったよ。
「やあ、早い到着だね?手前の宿場町からは結構距離あるはずなんだけど···。野宿だったのかい?」
「いえ、身体強化魔法の訓練で少し走ってたんですよ」
「(すこしどころかほんきではしったぞ!?)」
「(モンドくん!シー!!)」
「そ、そうか···。え〜っと、大した荷物を持ってなさそうだけど、行商人じゃなさそうだね?」
「ええ。旅をしてまして、この先のマクス帝国に行く途中なんですよ」
「マクスに?観光地じゃないのによく行こうなんて思ったなぁ〜。面白いものはないと思うぞ?それに入国はできないから、外から眺めるだけになるのにそれでも行くのか?」
「初めてなので、どんなところか興味ありましてね」
「なるほどな。まぁ、入れないだけだからな。じゃあ、身分証を提示してもらえるかな?荷物はそのかばんだけか?」
「どうぞ。このかばんは無限収納なんですよ。ここは結構厳重なんですね?」
「ああ。あんまり詳しくは言えないが、マクス帝国に入る手前でちょっとした審査をやることになっててな。不法な輩を相手にしたくないみたいだな」
「そういうことですか。結構厳しい国なんですね?」
「外国人からしたらそうなんだろうが、オレたちにとってはこれが当たり前なんでな。よし!全員問題ないぞ。旅の疲れを癒してくれな」
「ありがとうございました」
まぁ、こういった考え方の違いは元の世界でも海外旅行では当たり前な話だよ。『郷に入れば郷に従え』ってことわざもあるしね!
さて、まずは宿を確保しようか。宿に向かうと、入り口の横にものすごくごっついバイクが駐輪されていたよ。これもマクス帝国の製品なのかな?
このバイクに反応したのはやっぱりアトラちゃんだった。
「おぉ~!?こ、これはてっかめんらいだーほわいといーえっくすがのっていた『ばいく』ってのにそっくりだなー!!」
「こら、アトラ!さわっちゃだめよ。持ち主に怒られちゃうわよ?」
「ごめん、マーマ!でもかっくいいなぁ~!」
「ははは、アトラちゃんはバイクが好きなんだね?」
「おうよ、アキじーちゃん!これにのってあくのそしきへとつにゅうするんだぜ!?たっくさんあるワナをくぐりぬけるあのシーン!いまおもいだしてもしびれるあこがれるぜ~!」
「そうか~。特撮もののような運転は危ないからマネして欲しくないんだけどなぁ~」
「かっこいいけど、これにあたいがのったらてあしがとどかないんだよなぁ~。はやくおおきくなりたいぜ!」
まぁそうだね。いまの大きさだとハンドルとギアレバーに届かないから乗れないね。これがここにあるということは、運転手はもうチェックイン手続きをしてるのかもね。
中に入ると予想通りツナギの服を着た女性が3人いて、チェックイン手続きをしていた。どうやらこの人たちのバイクっぽいね。
手続きが完了したようなので、ボクたちもチェックインをする事にしたよ。するとアトラちゃんがツナギ服の女性に声をかけていたんだ。
「こんにちは!そとのあれってあんたたちのものなのか!?」
「あら?かわいい子ね~。翼があるってことは···、ドラゴン族のお子さん?初めて見たわね~!」
「ええそうよ、坊や。いま試験中で走りまくってるのよ」
「あれに目をつけるなんてキミ、いいセンスしてるわね~!」
「あたいはおんなのこだぜ!きんりゅうのアトラっていうんだ!よろしくな!ねえちゃんたち!」
「えっ···!?ごめんなさいね~。言葉遣いから男の子だと思っちゃったわ。あたしはジャミンよ」
「わたしはフランよ。よろしくね!」
「わたしはクリンよ。金竜なんて初めて見たわ···」
「そうだな~。きんりゅうは、ちじょうにほとんどいないってママがいってたからな。それより!あれうごくのか!?」
あ~、せっかくチェックインして休憩しようとしているのに興奮のあまり、アトラちゃんが無理なお願いを言ってるなぁ~。そう思ったらナナが対応してくれたよ。
「こら!アトラ!この人たちは疲れてるんだから無理言っちゃダメでしょ!?ごめんなさいね~。うちの孫が無理言っちゃって」
「いえいえ、まだ試作段階の製品にこれほど興味を示してくれる子はいませんでしたから、驚きもありましたけど嬉しいですよ」
「そうよ!まぁ乗せてあげることはできないけどね~」
「こんな反応を示してくれるなんて嬉しいわね~!でもちょっと今日は疲れちゃったから明日の朝に見せてあげるわね~」
「ほんとか!?たのしみにしてるぜ!」
「すいませんね、うちの孫につき合わせてしまって···」
向こうもアトラちゃんの反応は嬉しかったみたいだね。さて、今日はファミリータイプの部屋がとれたよ。さっそく部屋に入ってのんびりしますかね。
トラックにバイクがエーレタニアには、存在していました!どうもマクス帝国製のようですね。
アトラちゃんは某特撮ものでバイクを知ってましたので、本物を見て大興奮でした!
さて次回予告ですが、バイク乗りの女性たちと同じ宿で泊まることになり、酒場で一緒に食べて情報交換することにしました。しかし!その場でアキくんはこの世界では知られていない『トラック』という言葉をつい言ってしまい、極秘のコードネームをなぜ知ってるのか?と聞き返されてしまいます···。どう切り抜けるのでしょうか?
それではお楽しみに〜!




