9-6.上空から戦力を分析するよ〜!
ボクたちはリオの訓練場から超音速飛行ができる人に乗せてもらって飛び立った。戦力カウントのリオとコルくんは魔力温存のために竜モードにはなってないよ。
「でも、私が昔作った魔石がまだたくさんあるんですけどね〜」
「そういえばミルちゃんの魔石ってまだあったんだね?」
「はい〜。たっくさんありますよ〜!」
そう、魔力に関してはムーオ討伐でラストダンジョンに潜った際に爆弾解体でたくさん魔石化しちゃって、ボクの無限収納カバンにも在庫が残ってるよ。
そういえばラストダンジョンは崩壊しちゃって埋もれてるんだけど、未解体の爆弾がまだあったんだよね。まぁ、掘り起こされることもないだろうからいいか!
「なあ、レオ?なんでナビになってエーレタニアに戻ったんだい?」
「創世神からのスカウトだよ。すでに死んでるから、実体のないスマホの中だけで活動できるナビだったんだけどな。アキが『万能物質インゴット』でオレが入る人形を作ったんだよ」
「え?それって某ゲームの···?」
「あぁ~、エレさん?それ以上は···」
「ん?あぁアキくん、そういう事ね。でも、こうしてまた出会えるとは思わなかったなぁ〜!」
「ちょ!?おい!抱きつくな!うわっ!?鼻水つけんなよ!!」
「まぁまぁ、レオ?エレさんだって会いたがってたんだし、今日ぐらいはいいんじゃない?」
「アキは知らないからそう言えるんだ!コイツは結構しつこいんだぞ!?」
「レオぉ〜〜〜!」
「あぁ~!もう〜!これからいつでも会えるんだからもういいだろ!?」
「···フフフ。言質取ったぞ!じゃあ毎日添い寝してやるぞ〜!」
「気持ち悪い事言うな!!」
エレさんはレオに完全にベッタリだったよ···。ナビさんが若干ふてくされてるけど、今日ぐらいは···、って言ったものの『毎日』ってエレさんは言ったな···。しつこかったらコピーが作った玄関の落とし穴に落としてやるか。
そんな話をしていると、ボクが乗せてもらってるスウくんが超音速飛行に入った!
···みんな当たり前のように思ってるだろうけど、これ非常に難しい魔法なんだからね!
そうしてボクたち一行はウェーバー大陸にやって来た。あっという間に首都ビオまでやって来たよ。
どうやら間に合ったようだね。上空から見ると、被害はまったく無いようだよ。
万が一を考えてたけど、進軍速度はそこまで速くないようだ。このままテスラ共和国方面へと飛んだ。
テスラ共和国上空に着いたけど、ここも大丈夫なようだね。ただ、サバール王国へ向けて避難してると思われる人たちの列が街道にできていた。
ちょうど収穫が終わった時期だったのが幸いだったようだね。でも、マクス帝国も食料を輸入していたはずだ。···兵糧はどうする気だったんだ?
そう考えると、今回の侵攻ってかなり急いだ雰囲気がするなぁ〜。急ぐ理由がわかんないけど、このままだと自滅するんじゃないかな?
それはそれでまずいんだよなぁ〜。食料とかなくなった軍隊がそのまま盗賊団にジョブチェンジしちゃって、一気に治安が悪くなって某世紀末覇王伝説のような世界に早変わりだよ···。元の世界でも紛争地帯ではよくある話だからね。
そしてその先、マクス帝国方面へ向かうと、地平線の先に軍隊が見えた!
「全員!このままUターンして降下して!」
ボクの指示でみんな地上に降り立った。ここは何もない草原地帯だ。街道からも大きく離れているからテスラ共和国の軍隊もいないよ。
「リオ!ちょっとボクと一緒に飛んでくれる?パスさん!同乗して戦力分析をお願いします!」
「おう!任せろー!」
「わかったわ!」
「みんなはここで今日はキャンプにして。時差ボケもあるだろうから、休める人は休んでおいて。···おそらく、明日が戦いになると思うよ!」
「「「「了解!!」」」」
あんまり大勢だと上空からでも気づかれちゃうからね。リオ1人だけだったら気づきにくいでしょ?飛行機よりも小さいからね。
ボクとパスさんで偵察飛行に出た。現在高度15000フィート(約5050m)だ。積雲の上からのぞき込む形なので、地上からはまず気づかれることはないよ。
パスさんには望遠鏡を渡して、それで見てもらってるんだ。
「これはいいわね〜!上空から戦力分析なんて、最高の情報源よ!」
「とりあえず一般戦力は可能な限り無力化して、帝王だけを狙い撃ちしたいんですよ。パスさん、どんな感じです?」
「そうね···。歩兵は···、いないわね。全員乗り物に乗ってるわ。装甲が鉄の···、大砲が付いてるわね。数は···、100台以上いそうね」
「戦車か···。これは厄介なものを持ってきたなぁ〜」
「あとは後方に大きな荷台を引っ張る車があるわね。カバーしてるから、何が隠されてるかがわからないわ」
「おそらくそれがマジックキャンセラーと人型決戦兵器なんでしょう。数は分かりますか?」
「2つあるわね···。どれも同じ大きさっぽいわ」
「大きさは?」
「う〜ん···。具体的にはわからないけど···、15mはないんじゃないかしら?」
「わかりました。じゃあ、後方部隊も確認しましょう!」
さらにリオに飛んでもらって、後方部隊を確認しようとしたけど···、それはいなかったね。
「おかしいぞ?まさかあの部隊だけで戦争する気なのか?」
「確かに。後方部隊がいないなんて、もって数日が限界よ」
「···特攻する気だな」
「特攻って?」
「生きて帰る気がないんだ。自分の命を捨てて、敵に大ダメージを与える···、自爆技だよ。もしくは攻めて占領地で略奪するかな?」
「えっ!?」
「···そういえば帝王はボクと同じ日本人の可能性があったな···。血塗られた悲しい歴史を、エーレタニアで再現してやろうってか···」
「アキくんの世界の戦争の手段だったのね?」
「ええ。特攻はたくさん犠牲者が出てしまったんですよ···。そんな事はさせないぞ!」
「そうね!このままテスラ共和国軍とやりあえば、被害はとんでもない事になりそうね!」
「そうなる前に叩き潰しましょう!ある程度は攻略法がありますから!リオ!戻ろうか!」
「おうよ!」
そうしてボクたちはキャンプ地に戻ったよ。そして作戦会議だ!
「まずはマクス帝国の戦力について。戦車が100両以上あって、これで足止めしつつ、後方の決戦兵器で無力化して一掃する気のようです」
「戦車ですか···。かなりの強敵のようですが、弱点はあるのですか?」
「エイルさん、3つあります。1つは履帯。左右にグルグル回る鉄のベルトがあるんです。ここを潰せば基本的に動けなくなります。もう1つは戦車の背面にあるエンジン、動力部ですね。潰せば動けなくなります。最後の1つは砲身です。ここは砲弾を撃つところですが、ここに石を詰めると暴発して爆発します。土魔法で塞げばいいでしょうね」
「さすがはアキだな!そこまで分かればあっという間に潰せるぞ!」
「ははは(某戦車アニメネタなんて言ってもわかんないもんね···)。カーネさんは頼もしいなぁ〜。ですが、問題はマジックキャンセラーですね。身体強化してれば戦車相手でも問題ないですが、封じられるとなると···」
「そこはなんとでもしてやるぞ?心配するな!」
「イピムさん···」
「それよりもそのマジックキャンセラーですわね。どうするおつもりですの?」
「アイリさん、うちの一家全員でやります。トミーさんたちにもらったこの刀でね」
「かなり危ないんじゃないかい?」
「デジアさんの言う通りですね。そこで、リナとコルくん一家で周囲の相手をお任せしたいんですよ」
「いいわよ!」
「できる限りやってみますね」
「竜気であればマジックキャンセラーは無効でしょう。相手の注意を引くだけでいいからね」
「子どもたちもいるから、ムリしないわよ〜!」
「よし!このままのペースだと、明日の昼には戦闘開始です。それまでしっかりと休息しておきましょう!」
いよいよ明日、決着をつけるよ!
実はこのお話も新作のライくんの物語の伏線が入っております。龍脈爆弾がそうですね。あともう一つ仕込んでおります。
帝国は短期決戦を挑むべく、後方部隊を用意しませんでした。自殺行為ではありますが、帝王が用意した戦力に対して過剰なまでの自身があるからなんですね。絶対に勝てるので、食料などは現地調達!としか考えていません。帝王としてはアキくんたちが最大の障害となるとの考えもあるようですよ。
さて次回予告ですが、ついにアキくんたちとマクス帝国軍が接触します!なんとか『せっとく』をしようとアキくんは試みますが、帝王には通用しませんでした。そしてついに開戦を迎えてしまいます!
それではお楽しみに~!




