9-3.対策会議
グロー歴525年8月29日 雨
昨日、教授から来た手紙の内容は驚くべきものだった。
周囲から魔力を吸収して電力に変換して動く人型決戦兵器と『マジックキャンセラー』と呼ばれる魔法無効化についてだ。
相手の手の内の一部が判明した以上、こちらも指をくわえて見てるわけにはいかない。すぐにこちらも対抗策を練らないと、一方的にやられてしまう。それだけは避けないとね!
というわけで、今日はちーむッス!を使って会議を開くことにしたんだ。
参加者は新旧整調者、そしてパスさんだ。ボクが用意できる最大戦力のみんなと情報共有と対策を練るよ!
ちなみにヨウくんは欠席だ。『フーがいないのに手が離せるわけないだろ!?』って逆に怒られちゃったよ···。
会議は昼過ぎにやることになった。パスさんが忙しいからね。避難民の受け入れ体制とか急ピッチで整えてもらってるからね。
会議の前にリオがうちに来たよ。事前に相談したかったんだけど···。
「昼はアキの料理だーー!」
···そっちね。まぁ、そんな豪勢な料理じゃないけどさ。軽めじゃないと寝ちゃうからね。
「人型決戦兵器は見てみないとわからないけど、なんとかなるんじゃないかなー?問題は『マジックキャンセラー』だなー」
「そうなんだよね。まだ製作中だからスペックがわからないし、効果もわからないからね」
「となると、こっちも似たようなものを作るかー?」
「そんな技術なんてないよ···。まぁ、ボクが完成させた世界にはあるんだけど、こっちに呼ぶのは気が引けるんだよなぁ〜」
「となると、それは最後の切り札的なものになりそうだなー」
「そうだね。万が一も考えておいたほうがいいかなぁ?」
「使う使わないはアキが決めたらいいぞー」
でも、エレさんが張ったファイアーウォールが通過できるか?って問題もあるんだけどね。トランさんがやったようにパーツレベルまで分解してバラバラに持ち込むってのはアリだけどさ。
いろいろ考えつつ、会議の時間になった。パスさんのところはサキちゃんはいなかったね。
コルくんはうちに来てもらったよ。
「皆さん、お忙しいところご参加いただきありがとうございます。急きょこのような場を設けたのは、マクス帝国が開発している兵器の一部情報が入ったためです」
ボクは教授からの手紙に書かれていたことを話した。みんなビックリしていたよ。聞いたことのない兵器なんだもん。
『なるほどな。魔法を使えないから、こちらも使えなくしてしまえとは考えたものだ』
『兄さんの言う通りですわ。アキさんの言う通り、どこまでの範囲がマジックキャンセラーの効果範囲かは分かりかねますが、使われてしまえばこちらが圧倒的に不利になりますわね』
「その通りです。カーネさん、アイリさん」
『となると物理攻撃しか効かねえって事だな。その人型決戦兵器ってのもどれほどの強度かは分からんからなぁ〜』
『どんな武装をしてるかも分からないのよね〜。何が有効打となるかは戦場までのお楽しみ!ってのは厳しいわね〜』
「オルさん、ネータさんの言う通りなんですよ。魔法なしで物理攻撃となると、大砲とかしか思い浮かばないんですよね」
『となると、とれる戦術は多くありませんが、ある程度は対処できますよ?』
「えっ!?エイルさん、何か策があるんですか?」
『簡単にいえば、魔法が使える場所から物理攻撃を伴った魔法を放つというものですかね?』
「···あっ!なるほど。ロックキャノンをマジックキャンセラーの範囲外から撃てばいいって事ですね?」
『ちょいと待ちな!その方法には欠点があるかもね』
「デジアさん?欠点とは?」
『魔力で生み出した物も対象の可能性があるね。撃ち出してある程度は多少のコントロールが効くだろ?物理攻撃に変化しきれてなかったら、消されてしまう可能性が高いよ』
「となると···」
『崖におびき寄せて土魔法で崖崩れを誘発とかがいいんじゃねえか?』
「なるほど!イピムさんの方法もありですね」
「戦場によって作戦が変わりそうですね。いろいろ策を考えた方がいいかな?と僕は思います」
「コルくんの言う通りかな?」
「しかしアキー?その兵器は昔に捨てられたものだろー?」
「そうだよ、リオ」
「って事はー、そんな兵器を持ち出しても負けたって事になるよなー」
「···あっ!?そういう事か!」
『となると、何か致命的な欠点があるとみて間違いなさそうですわね』
「そうですね、アイリさん。ボクもちょっと考えてみますよ。あとパスさんの方はどうなってるんです?」
『サキに全権限を与えて最優先で対応してるわよ。造船所も可能な限り船の製作に取りかかってるわ。あと3カ月ぐらいで単に運ぶだけなら1500人程度乗れる船が1隻完成するわね』
「速っ!?」
『往路は救援物資と兵器を積み込んで、復路で避難民を乗せるって方法で考えてるわ。まぁ使わなかったとしても最低限の改造で他にも使えるようにしちゃうしね〜!』
「わかりました。とりあえずサバール王国には時間を稼げるだけ稼いでもらってます。時間が欲しいのはこっちも一緒ですからね」
『あと、そんな物騒な兵器を持ち出してくる以上、こっちも戦力を投入した方が犠牲者は少なくて済むわ。通常戦力ならアキくんたちが出ちゃうとマズいしね』
「そうですね。そんな兵器が出たとなれば、ボクたちが出た方がいいでしょうね」
『アキくん?その時は『どこにも所属しない遊軍』として動いてね。でないとパワーバランスが崩れちゃうわよ』
「そうですね···。変装した方がいいのかなぁ〜?」
『いや、バレるだろ···』
『だったら〜、リオと変身しちゃえばいいわよ〜!』
「いや、オルさん、ネータさん···。勘弁してほしいんですけど?」
『でも案外いい案かもしれませんよ?ボルタニア大陸では有名でもウェーバー大陸では知名度ないですからね』
「エイルさんの言う通りなんですけど···」
そんなこんなで情報共有はできた。
結論としては、『魔法が使える距離から物理を伴った攻撃スタイル』主体で戦うことになりそうだね。どんな攻撃かは戦場の地形によって大きく変わってくる。臨機応変にやらなきゃいけないよ。
あと、戦場へは高速飛行魔法を使えるドラゴン族で行くことになった。ただし、リオとコルくんは戦力要員となるので、リナとケンの孫たちに乗せてもらうことになったよ。
現時点での高速飛行魔法が使える子はスウくん、カークくん、ルメちゃん、クオンちゃん、ロフィくん、アトラちゃんだ。これにナナとミルちゃんが加わって8人でお願いすることになった。
あとは兵器だよなぁ〜。魔力剣だとマジックキャンセラー使われたらただの棒だもんなぁ〜。
そんな時だった!
「(コンコンッ!)ごめんくださ〜い!」
ん?お客さん?こんな天気悪い時に?
一応悪人レーダーには悪判定じゃないから大丈夫そうだけど···。とりあえず出てみるか!
「はい、どちら様ですか?」
そこには見たことのない3人がいたんだ。
「あっ!やっぱりここで合ってましたね〜!」
「ど、どちら様ですか!?」
「ああ、ごめんなさい。私たちは先日惑星調査で助けていただいた宇宙人ですよ!」
「············えーーーー!?」
これって···、宇宙人の恩返しかよ!?
戦争というものは相手の準備が整う前に攻撃を開始して自軍を優位に立たせるのも常套手段ですが、今回のように相手を不利な環境に追い込んで自軍に有利な環境を整えるというのも常套手段です。
今回は教授のおかげでマクス帝国の手の内が事前に判明しましたので、ある程度の対策ができました。
魔法が封じられた場合、それ以外の方法というのもあるのですが、その方法というのが非常に難しいんですね。今のところは魔法で直接攻撃!ではなくて間接的に使用する方向で話が進みましたね。
さて次回予告ですが、アキくんの家に宇宙人3人組が訪れました!訪れた理由を聞くと『魔法をもっと教えてくれ!』との事でした。ところがアキくんたちはそれどころじゃない!と回答してその理由を説明すると···、宇宙人たちも興味を持ってしまいました···。状況はさらにカオス事になってしまいます···。
それではお楽しみに~!




