8-9.雄大な滝のほとりで
この投稿でアキの異世界旅行記はシリーズ通算600話となりました!よくもまぁこんなに書いたなぁ〜としみじみ思いますね。
グランドフィナーレまで残り15話(ネタバレ集含む)です。最後までゆっくりお楽しみ下さい。
グロー歴525年8月26日 曇
おはよう。今日は曇ってるね。
昨日は散々だったなぁ〜。まさか合同稽古でボクがドジって相手を巻き込んで倒れちゃって、たまたまくちびる同士が触れ合っちゃって、ハルが激怒しちゃったんだよ···。
エマさんも介入して事は収まったけどね。結局ハルとその少女がガチンコ勝負して決着がついたよ。もちろんハルが瞬殺しちゃったんだよ···。殺してないけどさ。
エマさんも『アキさんはハルさんと夫婦仲いいですね〜!』って言われて、ちょっと恥ずかしかったよ···。しかもハルはボクの腕から離れようとしないし···。
まぁ、里の人たちとは仲良くなったよ。お昼と晩ごはんは一昨日よりも盛り上がったからね。
ちなみにハルと一緒に寝たら、いつもより5割増しぐらいの強さで抱きつかれちゃった···。今日は体中が悲鳴を上げてるよ···。『なりきり!伝説の神狼族セット』の力でも体が悲鳴を上げたってことは···、生身だったら全身粉砕骨折してあの世に行っちゃいかねなかったのでは···?
まぁ、『旅行保険』で生き返る···、とは思うけどさ。あれって不慮の事故で適用なんだけど、奥さんに抱きしめられて死んじゃったら事故···、なのかな?試したくないけどさ!
「···ん。···アキ?···おはよ」
「うん···。おはよう、ハル。落ち着いた?」
「···ん。···やっぱりアキを抱いてると安心できた」
「なら良かったよ。さあ、朝食いただいたら出発しようか!」
ちなみにモンドくんとフーちゃんは朝練に出てるよ。元気だね〜!ボクなんかこんなに冷えてると外出たくないよ···。エアコン魔法使ってるからあんまり関係ないけどさ。
リオたちも起きたようで、みんなで朝食に向かった。会場で皆さんとお別れのあいさつをしておいたよ。
「アキさん。今回はこちらに寄ってくれてありがとう。また近くまで来たら寄ってくれ」
「こちらこそお世話になりました。また寄らせてもらいますね!」
「ハルさん。今回はハルさんに助けられましたよ。もしチョッパの墓前に行くことがあったら、これを置いてもらえますか?」
「···これは?」
「ちょっとしたおまじないの石ですよ。墓を荒らそうとする者に天罰を与えるものですよ」
おぉぅ···。エマさんが『天罰』って···。それって『神罰』と一緒じゃんか···。
「···ん。···今度行った時に置いとくね」
「ありがとうございます。本当は私が参ればいいんですが、この子たちのお世話があるので、今は長期間離れられないんですよ」
「···たぶん、エマさんが来たら師匠は激怒するんじゃない?」
「ははは!そうかも知れませんね〜!それではお気をつけて!」
「はい!ありがとうございました!」
こうしてボクたちはエマさんの里を出発したんだ。
リオたちは一路東へと飛んでる。雪山を離れると、今度は大森林地帯だったね。針葉樹の森かな?まだ寒い地方だからそうなのかもね。
そして出発してから3時間。ちょうど時差が1時間早まってもうお昼すぎだよ。現時点で時差は6時間。マクス帝国と同じ時間だから、だいぶ戻ってきたね。
「リオ!そろそろお昼にしようか?」
「そうだなー!そこの川の岸にするかー?」
「そうだね···。あっ!?リオ!速度落としてゆっくり飛んで!この先に大きな滝があるみたいだよ!」
「どれどれー?おー!あそこだなー!」
「近くだと気持ちよさそうだよ!あそこにしよう!」
「おう!」
眼下には幅広い川があって、この先で落ち込んでたんだ。きっとナイアガラの滝みたいにすごい滝があるんだろうね〜!ボクもアメリカには行ったけど見たことないんだよ!
リオたちは速度を落として通常飛行の速度で川の水面スレスレを飛んで···、滝の真上に出た!!
「すごーーい!」
「これは絶景だなー!」
「リオ!右に広い岸辺があるよ!あそこでお昼にしようか!」
「おうっ!」
これまたすごいところを見つけちゃったなぁ〜!みんな降りて滝を下から見たんだ。
「じーちゃん!すっげーな!」
「フーもこんなの初めて〜!」
「滝ってこんな大きいのもあるんだなぁ〜」
「おともすごい」
「ヒーローの修行のメニューに『滝行?』ってのがあるらしいけど、あれはちょっとあたいにはムリだなぁ〜」
いやアトラちゃん···?あんな大量の水だと岩盤削る勢いなんだよ···。首が取れちゃうって!
というわけで、今日はここで1泊することにしたよ。せっかくこんな美しい景色なんだもん。ゆっくりしないともったいないよ。
昼食を終えて、ボクたちはまたまた釣りを始めた。こんなに大きな滝があるんだから魚もそれなりにいるでしょ?
しかし···、あんまり釣れなかったよ。おかしいなぁ〜?滝つぼって魚がいそうなものだけどね?
まぁいいや。のんびりするのも大事だからね。そう思ってると、森の方から何か音がしたんだ。
すぐに警戒態勢に入る孫たち。でも···、悪人レーダーや魔獣レーダーには反応はなかったよ。
出てきたのは人だった。おじいさんだね。このあたりに住んでるのかな?
「おやおや?こんな人里離れた場所で人に出会うとは···。見るからに遭難とかではなさそうじゃの〜」
いや、確かに人里離れた場所だけどさ?そういうおじいさんこそどうなのよ?と思うけど···。とりあえず話を聞いてみようか。
「こんにちは。ボクはアキといいます。ボクたちはこっちのリオたちドラゴン族の背中に乗せてもらって旅をしてるんです。ここは休憩で寄らせてもらったんですよ」
「ほうほう!ドラゴン族とな!確かに···。白銀、青、赤···。しかも金ときた!これはすごいのぉ〜!」
「御存知なんですか?」
「知っとるぞ。この大陸ではほとんど見かけんの〜。前に見たのは黒竜の孤児じゃったなぁ〜」
「えっ!?も、もしかしてあなたがクロくんのお師匠さんなんですか!?」
「クロ···?おお!そうじゃそうじゃ!お主ら、クロを知っとるのか?」
「ええ。クロくんからあなたの事も聞いてますよ。神器を与えた神様とも」
「···ほう?クロはワシの正体を見抜いておったか。そしてアキさん、あんたもそうなんじゃな?」
「ええ。もっともボクは無理やりやらされてますけどね」
「ほっほっほ!それでもそれだけのオーラをまとえるんじゃ!さぞかしたくさん担当しておるようじゃな?」
「ええ。今で16もやってますよ」
「···すさまじいのぉ〜。投げ出して逃げてきたワシよりも偉いのぉ〜。おっと!?忘れとった。ワシはフィルという。よければワシの家に来るか?テントよりは快適と思うぞ?」
「えっ?いいんですか?10人いますけど···」
「問題ないぞ。じゃあ、支度したらついてきなさい」
まさかこんなところでクロくんのお師匠さんに出会えるとは思わなかったよ。これも、ボクの神の力の核が引き寄せた結果なのかな?
アキくんはなりきりセットのおかげで通常よりも体が強化された状態なんですね。神狼族の能力がそのまま使えますのでね。そんな状態にも関わらずアキくんにはハルちゃんの抱きしめによるダメージが入っちゃいました(笑)!抱きしめられて死んでしまったとしても『旅行保険』の適用になりますので、アキくん!思いっきり楽しんでも大丈夫!払込金額がケタ上がりますけどね。
さて次回予告ですが、クロくんのお師匠さんが登場しました!そして、クロくんを育てた驚くべき経緯が明らかになります。いったい何があったのでしょうか?
それではお楽しみに〜!




