8-6.気持ちの問題
カークくん、アトラちゃん、クーちゃんの試合が終わった。こっちが3勝しちゃったね。
となると、向こうさんはあんまりいい気分じゃなくなってきていたよ···。う〜ん···。これはモンドくんとフーちゃんがやりづらくなっちゃうなぁ〜。
「師匠!これでは勝負になりません!こんな連中に勝てるわけないじゃないですか!」
おっと?モンドくんと勝負する予定の子が勝負を投げちゃうような発言をしちゃったよ。これはみんな諦めモードになっちゃってるのかもね?
すると、エマさんはこう諭したんだ。
「では聞くが、なぜやってもいないのに負けるといい切れるんだい?」
「こいつら、最強種族のドラゴン族なんでしょ?初めから負けが確定してたんですよ!」
「なるほど。確かに一理あるね。でも、負ける理由は他にあるんだけど、気づいてないかな?」
「えっ!?他の理由?」
「大きな点で言えば、まずはみんな外の世界を知らなさすぎるからだね。ほかの流派や戦い方を知らない。彼らはいろんな場所へ旅をして世界を知っている。その差だよ」
「············」
「さらには気持ちの問題だよ。最初から負けると思っていると勝てる試合にも勝てなくなる。相手の動きをよく見て、自分の手札で何が通用するのか?それを瞬時に判断しないと、外の世界では通用しなくなってしまう。それに気づいてほしかったから、こうやって試合をお願いしたんだよ」
「師匠···」
「だから、これまでの結果は必然だったって事だね。みんな負けたのはこの2つが原因だ。もちろん、勝てないと判断して逃げるのも大事さ。でもこれは試合だ。思いっきりやって、思いっきり負けなさい。そして、何がいけなかったのか?他にできることはなかったか?を考えなさい。この試合は、どの鍛錬よりもみんなのためになるよ」
「···わかりました。悪かったな」
エマさん、さすがだわ〜!ボクと似たような教え方なんだなぁ〜。一気にみんなやる気になっちゃったよ。これはモンドくんとフーちゃんは厳しくなりそうだなぁ〜。
「よし!気合い入ったみたいだな!よろしくお願いするぜ!」
「ああ!こっちこそやれるだけやってやる!」
さあ、モンドくんの試合が始まるよ!
モンドくんは槍モードでやるようだね。槍のちょうど中央を持っている。ミドルレンジで試して、状況に応じてショートレンジかアウトレンジに切り替える気だね。
対する少年は双剣だ。ちょっと長さは短め···、まぁ少年だからね。
双剣使いはうちの家族は慣れてるよ。ハルがそうだから、いつもしごかれてるしね!
「それでは、始め!」
「先手必勝!一気に決めてやる!」
少年が一気に間合いを詰めてきた!対するモンドくんは槍で1撃目を弾き飛ばし、2撃目は槍をそのままクルっと回して石突き側で弾き返した!
「くっ!?双剣の攻撃がこんな簡単に防がれるなんて!」
「槍ってのはこういう使い方もあるんだよ。何も刃がある方だけしか使えないってわけじゃないんだぜ?」
「そのようだな···。だが、オレの勝ちだな!」
「なに?んぐっ···!?」
な、なんと!?モンドくんに触れてもいないのに斬られちゃったよ!?これも幻惑···、なのか!?
「ははは!これがオレの幻惑だ。今見えてるのは幻。本物は姿を消してるんでな」
「く、くそっ!」
「正面から勝てないなら、幻惑を見せてほかから攻撃だ。師匠が言ってたのはこういうことなんだな···。それじゃあ、これで終わりだ」
「ぐあああーーー!!」
モンドくんが誰もいない背後からまた斬られちゃったよ!?そして倒れ込んじゃった···。これはちょっとマズいかなぁ〜?
「へっ!こいつはこの程度だったか。マジでビビって損したぜ。師匠!オレの勝利ですよね!?」
「いいや、化かし合いはおれの勝ちだぜ!」
「なに!?ガハッ!?」
今度はモンドくんが少年の背後から槍の柄の部分で首筋を叩いた!
「そこまで!いやぁ〜、チョッパの技を久しぶりに見れましたよ。鮮やかでしたね」
「エマさんにはバレバレだったか···。まぁ、こいつには通用してよかったぜ!」
理屈としては、モンドくんは代わり身で攻撃を受けてもらって倒れたフリをしつつ、モンドくん自身は影移動で少年の背後に回ってバックアタック!という感じだね。モンドくんも上手に立ち回ったなぁ〜。
「最後はフーだね〜!」
「よろしくお願いする」
「こちらこそ〜!一緒に楽しもうね〜!」
「は···?楽しむ?」
「そう!フーが見たこともない技を使うんでしょ〜?ママやばーばが言ってた勉強をさせてもらうよ〜!」
「変わった事を言うヤツだ···。まぁいいさ。全力で相手するよ!」
「もっちろん!フーも全力全開でいっくよ〜!」
最後はフーちゃんの試合だね。相手の少年はかなり冷静だね。
「それでは、始め!」
「じゃあ、フーからいくね〜!分身の術!!」
「な!?よ、4人になった!?」
「「「「ふっふっふ〜!さ〜て、これで4対1になっちゃったね〜!」」」」
「こんな術が···。だ、だが、どれか1人が本物のはず!確実に1人ずつ潰す!!」
少年は始めに左端のフーちゃんに突っ込んでいった!
「お〜!当たりだよ〜!」
「へっ!それじゃあこれで終わりだ!」
フーちゃんに一撃入れれて安心しきってトドメを刺そうとして振り上げたその時!その腕を、別のフーちゃんが掴んじゃった!
「ちょっと〜?まだ早いって〜!」
「んなあっ!?目の前のこいつが本体じゃないのかよ!?」
「残念でした〜。このフーも本物だよ〜!」
さらには少年の左肩をポンポンと別のフーちゃんが叩いた!
「このフーも本物だよ〜!」
「そ、そんなバカな!?これも幻術か!?うぐっ!?」
さらにもう1人のフーちゃんが少年の肩に座り込んで強制的に肩車しちゃったよ!
「幻術じゃないよ〜!分身の術だよ〜!」
「でもフーの分身の術ってちょっと変わってるんだよ〜!」
「全員本物なんだよね〜!」
「4つ子じゃないからね〜!フーはフーだよ〜!」
「ええい、やかましい!くそっ!身動き取れねえ!」
「「「「ふっふっふ〜!影ぬいで動けなくしてるからね〜。それじゃあ、こうしちゃおうか〜!こちょこちょ···」」」」
「あっ!?アハハハ!や、やめてくれーー!!」
「「「「え〜っと、ヴィーちゃんがこうする時に言う決めゼリフがあるって言ってたなぁ〜。あっ!?『ここか?ここがええんか〜?』だったね〜!それ〜〜!」」」」
「アハハハ!ま、参った!こ、こうさアハハハ!降参するから!!」
「そこまで!やはり素晴らしい技ですね〜。私との試合でも見せていただきましたが、非常に自然に振る舞えるんですね?」
「えっへん!毎日店員さんやってる時にず〜〜っと使ってるからね〜!」
「なるほど···。日常で『自然に使えて当たり前』の状態にまで使い込んでるんですね?これは私もいい勉強になりました」
さて、こうして試合が終わったよ。エマさん側も納得してくれたかな〜?
そう思ってたんだけど、納得してない人がいたんだ!
「···ん。···最後は私がエマさんに試合を申込む」
···ハルさん?エマさんとやり合うんですか?大丈夫かなぁ〜?
モンドくんもフーちゃんも戦い方に余裕がありましたね。それだけ成長して手札が増えたということです。
こうして書いてると、作者ですら気づかないうちにキャラが成長している様子を書いていたというのは、なんというか嬉しくなってきますね〜!
さて次回予告ですが、最後はハルちゃんがエマさんに挑みます!チパさんの暗殺物はエマさんに届くでしょうか?
それではお楽しみに〜!




