8-3.ブートの里との共通点
「ここは『暗殺者養成所』で、私は指導してるのさ」
2年ぶりに出会ったエマさんがいるこの里は暗殺者養成所だった。まんまハルのいたブートの里と一緒じゃん?どうしてだろうか?
「なぜ養成所なんですか?」
「それは私が得意というのもあるんだけど、一番影響を受けたのは『伝説の暗殺者チョッパ』との出会いかな?」
「···師匠の?」
「そう。昔は私もこのエーレタニアを旅して回ってたのさ。時間はたっぷりあったし、いろいろ見て回ったさ。昔だけど冒険者もやってたなぁ〜。そんな時だよ。チョッパに出会ったのは」
この人···、元いた世界の神様たちから追放されたのに、逆に楽しんじゃったのか···。
しかも冒険者やってたって!?好き放題してたんだなぁ〜。
「チョッパの狙いは私でね?私がとある依頼で犯罪組織を壊滅したら恨みを買ったみたいで、そいつらに雇われて深夜の裏道でやりあったわけさ」
あらまぁ···。逆恨みでチパさんを雇ったのか···。凄腕の暗殺者だったらしいから、とんでもない恨みを買ったんだなぁ〜。
「チョッパは驚いてたさ。トドメ刺して私の息の根を止めたのを確認して去ろうとしたら、私が起き上がるんだもの。あの時の表情は傑作だったよ!」
「神の力を使ったんですね?」
「いや?幻惑だよ。相手の感覚すべてを乗っ取るものでね?脈がないような感覚を感じさせてやったってわけさ。まぁ、すぐに幻惑だと見破られたがね」
「···師匠とやりあったんだ」
「ええ。それはもう全力で襲いかかられましたよ。全力を出せる嬉しさと全く倒せずイライラが両立した面白い顔してましたね〜」
「···師匠とはそれっきり?」
「いえ?何度も襲われましたよ?あの手この手使ってね。今思えば、私を新たな技を試すための実験台にしてたんでしょうね。いつも技が違ってましたしね!」
おぉぅ···、チパさん···。エマさんを技の実験台にしてたんかい!?
「ある時、死ぬ気で襲って来た事があったんですよ。こちらもいつもと雰囲気が違ってるのは気付いてましたけどね。やむを得ず大ケガさせてやって表舞台から去ったんですよ」
チパさんが引退するきっかけになったのがエマさんだったのか···。相手が異世界の神様だから相手が悪すぎたんだね···。
「それから10年ぐらいですかね?たまたま見つけた雪山の奥深くにあった里を見つけて訪ねたら、チョッパがいたんですよ。そこでやってることを参考にさせてもらい、こうしてここでも同じ事をやってるんですよ」
「なるほど···。ではこの里の人たちは···」
「ええ。私が拾った孤児たちですね」
そういう事ね。ということはエマさんはチパさんが···、好き···、だったのかな?
「そうそう、こうして会えたわけですから聞きたいことがあったんですよ。チョッパはまだ健在ですか?」
「···3年前に」
「···そうでしたか。···私のせいで現役を引退させたとはいえ、思えば私が彼女とは一番長くお付き合いしてましたからね。お悔やみ申し上げるよ」
「···ん。···師匠は最後まで指導を続けてたって。道場で倒れて···」
「···ふふっ、やはりチョッパは最期までチョッパでしたね。彼女らしいですよ」
そう、チパさんは3年前に旅立っちゃったんだよ···。でも、体調崩して『もうお迎えが来そう』って言ってたのが11年前だったから、8年もお迎えが来なかったんだよね···。
ハルは『···やっと怖がられなくなったから迎えが来たか、嫌々迎えに向かわされたかな?』って言ってたのが印象的だったよ。
ちなみに里はテリーさんが引き継いだんだ。近くのスルタンで仕事してたからね。たまにハルが日帰りで指導に行ってるんだよ。
「今日はここで泊まっていくといいでしょう。コテージがありますから、そちらを用意させますね」
「いいんですか?」
「ええ。その代わり···、明日は道場でちょっと試合をしてくれればね」
「「やる!!」」
おっと!?モンドくんとフーちゃんはやる気だね。
「おれも腕試ししてみたいぜ!」
「クーも。いいけいけんする」
「あたいもちょっと伸び悩んでるんだよなぁ〜。ヒーローとして次のステージに立つためにもやってみたいぜ!」
カークくんもクーちゃんもアトラちゃんもやる気のようだね。じゃあお願いしようか!
「ははは!元気な子どもたちですね〜!子どもはこうして元気なのが一番ですよ」
「いや···、うちの孫たちは元気過ぎますけど?」
「それぐらいがいいんですよ。そうそう、トランスでしたっけ?あれはなしでお願いしますね。さすがにあれは神の領域の力ですからね」
「わかってるって!」
「フーも〜!あれって結構疲れるからね〜!」
というわけで2泊することになっちゃったよ。明日はここの里の人たちと試合だ。ある意味チパさんの暗殺術とエマさんの暗殺術の対決だね。優劣はないと思うけど、どういった試合になるのか楽しみだよ。
晩ごはんは里の人たちと一緒に食べることになったよ。どうやら鍋のようだね〜。鍋はみんなで食べるのがおいしいからね〜!
会場に入ると、立食形式だったよ。一応テーブルとイスはあるんだけどね。
最初にエマさんからボクたちの事を紹介してくれたよ。
「みんな!今日は海を越えてボルタニア大陸からアキさんたちが来てくれた!ボルタニア大陸にも我らとは違う流派があるから、明日の試合ではお互いがしっかりと学ぼう!それでは乾杯!!」
ボクたちも料理を取りに行った。変わった鍋だなぁ〜。これは牛乳?よくわからないけどもおいしいのは間違いないよ!
ただ···、この里の人たちはぼくたちに話しかけてくることはなかったけどね。警戒されてるのかなぁ〜?ジロジロと見られている視線は感じるんだけどね。
「う〜ん···。これは失敗だったかなぁ〜?」
「え?エマさん?」
「ここは人里離れた場所だからね。外部から人が来ることがほぼないんだ。自給自足の生活をして『ひとりでも生きていける力』を身に着けてもらってるんだ。そうすれば何かあっても対処できるんだけど···。デメリットとして人見知りが極端に激しいんだ」
「そういうことですか···。どおりでボクたちを観察してるわけだ」
「だからね?キミたちが来てくれたから、外の世界を感じてもらおうと考えたのだが···、ちょっとこれは私の失敗のようだね」
「やってみないとわからない事がほとんどですよ?ボクだって、子育てなんて元の世界ではやったことなかったですけど、こうして孫たちもいい子になったのは結果論ですし」
「ふふふ。私も神ながら、まだまだ修行不足のようだね」
「そう思っていたらこの先は良くなりますよ」
「そう言ってもらえると気分が楽になるよ」
結局、ボクたちはボクたちだけで晩ごはんをいただく形になってしまったよ。なかなか見知らぬ相手に対して話しかけようというのはハードルが高いんだ。これは世界が変わっても一緒って事ね。
明日の試合によってはいい交流になるといいんだけどなぁ〜。
どうやらエマさんはチパさんのことが好きだったんですね〜。チパさんは何も言いませんでしたのでおそらく片思いなんでしょうけどね。
チパさんが大ケガをした理由がここで明らかになりました。さすがに神様相手では分が悪すぎたんですね。
さて次回予告ですが、ここから4話連続で集落の人たちとの交流戦を行います。まずはカークくんですね。斧使い相手に体術と魔法で相手しますよ〜。
明日ですが船旅を楽しんでおりますので、電波状況によっては投稿が遅れる場合があります。あらかじめご承知おき下さい。
海上が大しけ予想なのでちょっと船酔いしてそうですが···。
それではお楽しみに〜!




