8-2.ハル、猛烈に嫉妬する!?
帰りに見つけた雪山の集落を訪ねようとしたら、集落の人たちが襲いかかってきた!
···いや、襲いかかってきたってのは言い過ぎかな?孫たちがやる気になっちゃって、それで対戦する事になっちゃったんだよね。ボクとしてはそんな事したくないんだけどさ。
向こうは10人なので全員1対1勝負になってしまった!
「いくぞ!」
「来やがれーー!!」
「覚悟しろ!」
「え〜?フーは腕試しのつもりなんだけどなぁ〜」
「ドラゴン族とは初めてだ!全力でやってやる!」
「そうこなくっちゃ!おれの魔法はちょっと一味違うぜ!」
「幼子といえども手は抜かない!」
「クーもほんきでやる」
「なかなかやるようだね?本気でいかせてもらうわ!」
「あたいも!日頃鍛えたヒーローの技!受けてみろーー!!」
孫たちに一斉に集落の人たちが襲いかかった!おっと!?よそ見してる余裕はなさそうだよ!?ボクにも襲いかかってきた!
「くらえ!!」
「甘いね!」
バシーーン!!
「んなあっ!?な、何が起こった!?」
残念でした!電磁バリアで鉄製の武器は全部ローレンツ力で弾かれちゃうのさ!
「ボクに武器は効かないよ?金属製は全部弾くからね」
「なるほど···。ならば武器も防具もを使わなければ済むこと!」
「ちょ!?なんで脱ぐのさ!?」
防寒着の下には鉄のプレートが仕込んであった!いや、確かにその防具にもローレンツ力は働くんだけどさ···。
「これで貴様の優位はなくなったぞ!覚悟しろ!!」
ボクの相手は武器を捨てて身一つで突っ込んできた!
相手は女性だから、あんまり傷つけたくないんだけど、そうも言ってられなさそうだ。鋭い正拳突きを繰り出し、まわし蹴りも使ってきた!あ、危なぁ〜···。
「くっ!ちょこまかと逃げるなんて!ならばこれならどうだ!!」
さらにスピードを上げた!速さだけならハルに近いかもしれない!
でも、ボクには『なりきり!伝説の神狼族セット』の力で動きが目で追えているんだ。サッと避けちゃうよ〜!
ズブッ!!
「···え?うわぁーー!?」
「えっ!?きゃーー!?」
ドシーーン!!
避けようとしたら足元にあった雪だまりに足を取られちゃった!?ボクが倒れようとしたら···!?相手を巻き込んじゃって倒れちゃったんだ···。
そして···、ただ倒れただけでは済まなかったんだ···。
んちゅーー!?
くちびるに柔らかい感触が···!?えっ···!?ちょ!?こ、これって···!?
「ご、ごめんなさい!悪気があったんじゃなくて···」
「き、貴様〜〜!乙女のは、はじめての···」
や、ヤバい···!相手は顔が真っ赤になっちゃってるよ!しかも周囲の戦闘も知らないうちに中断していたんだ!
みんなの注目が···、ボクに集まってるぅ〜!
?
しかし!事態はさらにこじれようとしていたんだ!!
ドンッ!!
「きゃっ!?」
ボクの相手が思いっきりふっ飛ばされた!···え?ボク、何もしてないんだけど?
ボクが顔を上げると···!?そこには後ろ姿のハルが立っていた···。なんだかオーラみたいなものが···、えっ!?まさか···、トランスしちゃってる!?
「···アキに触れるな!!」
ボクはハルの後ろ姿しか見てないんだけど、その時のハルの表情は···、鬼以上の形相だったらしいよ?ふっ飛ばされた相手以外は恐怖に怯えていたよ···。
「くっ···!?な、なんだお前!?」
「···アキは私の夫。武力以外でアキに手を出すなら···、タダで済むと思わないで」
マズい!ハルが嫉妬しちゃってる!?こんなに激おこなハルは初めて見ちゃったわ···。
このままだと手加減なしで相手を文字通り瞬殺させちゃう!早く止めないと!
「ハル!もういいよ!さっきのは事故···」
「黙ってて!!」
「は、はい···」
初めてハルに怒られちゃった···。事故なのに相手さんとくちびるが触れちゃったのが、ハルの逆鱗に触れちゃったんだわ···。
マジでどうしよう!?···うん。こうなったらボクも腹をくくろう!!
「ハル!!」
「止めないで!?んぐっ!?」
んちゅーー!!
ボクは振り向いたハルにチューをしちゃった。さらにハルが動けないように身体強化を最大の7倍まで上げて抱きついた!!ハルの全力なら簡単に振りほどけるけど、ボクの覚悟がこれでわかってくれるはず!!
「ハル!落ち着いて!ボクにはハルしかいないんだから!!」
「···わかった」
ハルがトランスを解いたよ。危なかったわぁ〜!···ハルって嫉妬持ちだったんだなぁ〜。
戦闘の場が凍りついていたよ。···え〜っと、どうしようか?
そう思っていたら、遠くから誰かがやって来た。新手か!?
近づいてきて、よく見える場所までやってくると、ボクも知ってる人物だった!
「ふぅ~、良かったですよ。すさまじい魔力を感じましたから、あなたたちでは手に負えないと思って出てきましたが···。まさかあなたたちだったとはね」
「エマさん···、ですよね?」
「ええ。もうあれから2年ですかね?ご無沙汰してますよ。アキさん」
そう、2年前にサバール王国での格闘技大会でフーちゃんとモンドくんが対戦した相手であるエマさんだった。···この人も神様なんだよね。
「こんな場所では寒いですから、村に案内しましょう。ついてきなさい」
「は、はい···」
というわけで、エマさんが住んでる村に案内されたんだ。
雰囲気はハルが育ったブートの里と似ていたよ。ワナはなかったけどね。
家は急角度の屋根がついた家ばかりで、一際大きな建物からは大きな声が聞こえていた。どうやら道場のようだね。
ボクたちは奥にあった少し大きな家に案内されたよ。ここがエマさんの家なのかな?
外で服についた雪を払って中に入らせてもらったよ。暖炉で燃えてる薪の明かりがいい雰囲気出してるよ。もちろん天井にも照明があるけどね。
「適当に座りたまえ。今お茶を入れてくるからね」
応接間みたいなところに案内されたよ。広いから10人全員入れちゃったね。
しばらくするとエマさんが現れたよ。お盆にはお茶菓子があったね。
「さてと···。どういった経緯でこの里にやってきたんだい?」
「ボクたちはこの大陸の西海岸沿いを北向きに飛んできたんです。大山脈が途切れた部分があったので、そこから東へ飛んでサバール王国に向かおうとしてたら、この里を見かけたので寄ったんですよ」
「なるほど···。経路からしてトランのいるヒステリシスにも寄ったのかな?」
「御存知なんですか?」
「ああ。お互い別の世界だったけど、私とほぼ一緒の時期にエーレタニアに攻め込んだ戦友でもあったかな?」
「えっ?でも、トランさんは···」
「そう。復讐する相手がもういないってことで侵略はやめたんだよ。一方の私は帰る手段を奪われてここに閉じ込められてしまったんだけどね」
「そういうことでしたか···」
「まぁ、この世界の暮らしは良かったんでね。こうしてのんびりさせてもらってるよ。そういう思いではトランと同様かな?」
「エマさんはここで何をされてるんですか?」
「ここは『暗殺者養成所』で、私は指導してるのさ」
それってハルのいたブートの里とおんなじじゃ···?
はい!やっぱり事故発生しましたね〜。もうテンプレみたいな形でくちびる同士が触れちゃいました。
もちろんハルちゃんは大激怒でした。しかし、それをうまいこと丸めてしまったアキくんでしたね〜。ちょっと見せつけてしまいましたが、これ以外にハルちゃんを落ち着かせる方法はないです。
そして第2章以来のエマさんが登場ですね。普段はこの集落にいるようですよ。
さて次回予告ですが、この集落はどうもハルちゃんの故郷であるブートの里に雰囲気が似てました。その理由とはなんなのでしょうか?
それではお楽しみに〜!




