7-14.異世界人のリゾート地
「初めまして。ボクはアキと言います。さっき相手したのはドラゴン族のリオです」
「おー!名乗るの忘れてたなー。白銀竜のリオだぞー」
「あと、神狼族のハル、モンド、フー、レオ。こっちは青竜のナナ、リオと同じく白銀竜のカーク、赤竜のクー、金竜のアトラです」
「俺たちは自警団のルーフ、ウッド、デル、スコットだ。現地人に会うなんて初めてだよ」
「えっ?初めて···?どういうことですか?」
「それは街までの道中で説明するよ」
自警団の4人組、デルさんが女性だね。とりあえずしらばっくれておくことにしたよ。この世界ではない『外の理の者』なんだろうけどさ。
わざわざこっちの情報を説明する必要もないし、変に知られればボクの神の力の核を狙ってくるかもしれないしね。もちろん、みんなには口止め済みだよ。
「信じられないかもしれないけど、我々はこの世界の人間ではないんだ」
「えっ!?そうなのですか!?」
「驚くのも無理はない。現地語をこうして話してるのも不思議だろ?これも我々の世界の技術でね。思ったことを相手に確実に聞こえる音声に変換する機器を歯に仕込んでるのさ」
「そんな便利なものがあるんですね」
「ただ、これは結構希少なものだから、街の外に出る我々ぐらいしかつけてないんだ。これから案内する街中では言葉は通じないからな」
「わかりました。ルーフさんたちはなにをしにこのエーレタニアへ?」
「この世界はエーレタニアって言うのか···。貴重な情報ありがとう。我々は侵略ではなくて···、これはこの世界の人には申し訳ないが、『リゾート地』としてのんびりさせてもらってるんだ」
「『リゾート地』なんですか!?」
「気を悪くしたら申し訳ない。あまり迷惑かけてもいけないから、人が住んでないこの地を選んだんだ。だから、キミたちがこのリゾート地、『ヒステリシス』に初めてやって来た現地人なんだよ」
なるほどね。異世界から侵略じゃなくてバカンス目的か···。元の世界だとハワイと似た感覚か。
確かエレさんがエーレタニアに張ったファイアーウォールって『悪意のある強者』が弾かれるんだったっけ?バカンス目的なら簡単に入れちゃうんだなぁ〜。
でも、この人たちはエーレタニアの住人に影響を与えないよう配慮してるようだ。わざわざこんな人のいない場所を選んでるんだからね。
「まぁ、正常稼働している世界転移装置があったからなんだけどね。街は装置の周辺にできたものなんだ」
「そういえばここから南東方向にも塔があって、そこも魔獣が出てきましたね」
「あの塔を知ってるのか?」
「ええ。魔獣がわんさか出てきたので破壊しましたよ」
「それはいい事聞いた!ありがとう!我々がこうして自警団を組んでいるのは、その塔から出てきたモンスターを街に近づかせないためだったんだ」
「そうでしたか。それは良かったですよ」
「そうなると、キミたちは相当な実力者なんだな?」
「それなりには···」
「なるほどね。リオさんのように変身する人もいるんだ。まともにやり合ってたらやられてただろうなぁ〜」
「いえいえ、どうなるかわかりませんよ?」
ってか、デルさんが持ってるライフル銃ってかなりの威力だもん。それにルーフさんやウッドさん、スコットさんの武器も見たことないものだよ。
ボクの持つ神器である魔力剣に似てるからね。···某宇宙戦争のライトセ◯バーじゃないよね?魔力剣は別のアニメを参考にしたってエレさんは言ってたけどさ。
軽い情報交換をしていたら、ボクたちは異世界人たちのリゾート地『ヒステリシス』に到着した。
外壁はかなり高くて分厚いね。しかも見たことのない材質で、表面がツルッツルになってた。この人たちの世界の文明レベルがよくわかるよ。少なくともボクの元の世界を超えてそうだね。
「さて···、この世界の事はそれほど詳しくないんだ。だから、このリゾート地の長に会って話してもらえないか?」
「ええ、いいですよ。ボクたちでよろしければ」
「ありがとう。滞在中はこちらの屋敷を自由に使ってもらって構わないよ。明日の朝に長が訪ねると思うので、それまでは外出は避けてくれ。ここの人たちはキミたちの事を知らないからパニックになると思うのでね」
「わかりました。こんな豪華な屋敷に滞在できるだけでもありがたいですよ」
「ははは!これでも小さい方なんだけどな!それじゃあ、ゆっくりくつろいでくれ」
そう言ってルーフさんたちと別れた。
この屋敷までの道のりは、街の門をくぐるときれいに舗装された道があり、海岸沿いにはリゾート地らしくしゃれた家並みが道の両側に広がっていた。どうやら商店街のようだったよ。土産物屋もあったね。よくわからないものが売られてたよ。
えっ?もっと具体的に!って?···マジでごめん。本当によくわからないんだよ···。見たことのないものばかりで表現できないわ···。世界が違うから仕方ないよ。
文字もしゃべってる言葉もさっぱりわからないんだよ。唯一わかったのは、リオたちを見てみんな固まったり目を大きく見開いたり···、と行った驚いた表情ぐらいかな?短いツノ生えてて背中に折りたたんだ翼があるんだもんね。
なんだろう?言葉わからない国に来ちゃった感覚かなぁ〜?元の世界で海外旅行した時に英語すら通じないし翻訳アプリを持ってない感じかな?ボクはアメリカのホテルで揉めた経験あるよ。
そんな通りを過ぎて住宅街···、というか別荘っぽいところも通り過ぎて、大きな敷地にある屋敷に連れてこられたんだ。
まぁ中もゴージャスだったわ···。今日1泊はこんな豪華な屋敷でボクたちだけで過ごせるんだよ!これはボクたちにとってもバカンスになりそうだよ〜!
「すっげー!こんな大きなベッド初めてみたぜ〜!おれら5人寝ても余裕あるぞ〜!」
「これ、ひとりでひとつのへやでねる。クーにはおおきすぎる」
「ひゃあ〜!これは豪華だぜ···。ヒーローがこんな贅沢していいのかなぁ〜?」
「こんな大きなベッドだとどんだけ寝返りしても落ちないなぁ〜」
「モンドくんってリオじーじほどじゃないけど、寝相悪いもんね〜。フーはおとなしいよ〜」
「言わないでくれよ!?フー!」
孫たちも大はしゃぎだったね。ボクとハルの寝室なんか天蓋とカーテン付きだったよ···。貴族にでもなった気分だね。カーネさんたちの屋敷よりもすごいからなぁ〜。
厨房も広かった!ナツのお店の10倍ぐらいかな···?もう調理学校始めれるぐらいだよ。
「じゃあ、今日もボクが料理するよ。みんなはくつろいでいてね〜」
「「「「は〜〜い!!」」」」
まさか人が住んでいないところで予想外のバカンスを過ごすことになるとは思わなかったね。
基本的に異世界に行く目的と言うのは好奇心や調査、そして侵略になるかと思いますが、ここの人たちはリゾート地にしてしまいました。
現地に人が住んでいない前人未到の地なので軋轢を生むことはないですね。昨今はインバウンドで観光地では多くの悩ましい問題が発生していますが、ここではそんなものは存在しません。まぁ、世界を越えるインバウンドってスケールデカいですけどね。
さて次回予告ですが、滞在した屋敷で1泊した翌朝、リオくんが寝相よく寝て起きないという異常事態が発生しました!単なるお寝坊ではなさそうですが、何やっても起きないので、アキくんは非道な最終手段を使ってしまいます!
そして、このリゾート地の長が面会にやってきました。事情を聞くと、ただの人ではなさそうですよ?
それではお楽しみに〜!




