7-10.世界を渡る門
「さて、魔獣が出てこない側の入口から入るけど、リオ?フォーメーションはどうする?」
「おれはまだやれるぜ!」
「クーも」
「いやー、ふたりは下がってモンドとフーで行ってもらうぞー」
「「なんで!?」」
「カークもクーも多少消耗しているからだぞー。疲労状態では戦えないし、激戦となれば守りながら戦うのはムリだぞー」
「リオの言う通りだ。塔の中では威力の大きな魔法は使えない。塔が崩壊するからな。だから全員が戦闘できないといけない。これは洞窟とかも一緒だな」
「レオの言う通りだぞー。それに、ワナがあるかもなー。そうなればモンドとフーに任せたほうがいいぞー!」
「ばーちゃんに教わった事を実践できるぜ!」
「ワナ解除は任せろ〜!」
塔攻略の布陣はこのようにして決まった。モンドくんとフーちゃんが先頭、次にハル、レオ。その後ろにアトラちゃん、カークくん、クーちゃん、ナナ、ボクで最後尾はリオになった。
リオはおっちょこちょいなので、ワナはもれなく作動させちゃうしね。それにバックアタックがあった場合にリオがいてくれると即対応が可能だ。
塔に入ってみると、よくわからない模様があちこちに描かれていた。何か意味がありそうだけど、まったくわからないんだよ···。
「リオ?これって古代遺跡かな?」
「おそらくなー。相当古いぞー」
「ストップ!床が崩れかかってる」
「これは飛んだほうがいいかな〜?」
さっそくモンドくんとフーちゃんが気づいてくれた。次の階へ上がる階段のところまでリオたちにボクたちを抱えて飛んでもらったよ。
床が崩れそうな事以外はワナはなかったよ。この塔はほぼ朽ちてしまってるようだ。いつ崩れてもおかしくない状況のようだね。
順調に攻略を進め、最上階にたどり着いた。20階あったけど、1階ごとの高さが結構あったから、200mぐらい登ったんじゃないかな?
そして最上階に、それはあった···。
「なんだこれー?」
ボクたちはコントロールルームっぽい場所にたどり着いたんだ。モニターっぽいものとキーボードっぽい入力装置みたいなものがあったよ。一応、稼働してたよ···。
そして割れたガラスの向こう側には···、巨大な装置があった。今は動いてないようだね。
「ここはあの装置を動かすためのコントロールをする場所みたいだけど···、レオ?知ってる?」
「いや···、知らないな。確かに古代遺跡みたいだが、オレが生きていた時代よりもさらに古そうだぞ···」
「という事は、ここは500年よりも前のものは確定って事か···。もしかして、あの装置で魔獣を呼び寄せた···?」
「その可能性が高いな。今は止まって···、おい!?動き出したぞ!?」
「装置の上が光りだしてる!?」
レオと話をしていると、装置が勝手に起動した!装置の上が光り輝き、そして光の輪が出現した!そこからは見たことのない魔獣たちがいっぱい出てきたんだ···。みんな、とっさに伏せて向こうから見えないように隠れたけどね。
装置の周辺にいた魔獣たちが外へ出ていった。装置はまた止まってしまったよ···。
「レオ···、あれって···?」
「アキ、これは『世界を渡る門』だ!」
「世界を···、渡る?」
「そうだ。となると、これは古代遺跡ではあるが、別の世界の神が創ったものだな」
「えっ!?」
「元の世界に帰るためか、自分がいた世界から自由に行き来するために創ったのか···。目的はわからんが、常に動いていないという事は、本来の使われ方じゃないって事だな」
「じゃあ···、破壊しよう。もう別の世界とはそう簡単に行き来できなくなったんだし、こんな『バックドア』があっちゃいけない!」
「『バックドア』···?」
「あぁ、ごめん!元の世界の用語で、頑丈なセキュリティがあるところに自由に出入りできる裏口って意味だよ。セキュリティの意味がなくなっちゃうんだ」
「お〜、それならまさにこれがそうだな!」
これ、ボクがやったことのあるゲームと一緒の事やってるよ···。さらに世界を渡るのにわざわざ塔にしたり···。これ創った神も日本出身じゃね?なんかそんな気がしてきたわ···。
入口が2つあったのは魔獣とか専用の出入口で、ボクたちが使ったのは管理者用の出入口って事だね。だから魔獣がいないというわけか。
さて、もう木っ端みじんにしてやるので、塔の壁に穴を思いっきり開けて外に出た。
そして、外から全力全開で魔法をぶっ放してやる!!
「モンドくん!合体魔法でいくよ〜!」
「よし!全力でいくぜー!せーの!!」
「「Wエクスプロージョン!!」」
ドズーーーン!!
モンドくんとフーちゃんの合体魔法で塔の基礎が吹っ飛んだ!もちろん、塔は倒れようとしてるぞ!そこをアトラちゃんの必殺技で調整だ!
「ひっさーーつ!!らいだーきーーっく!!」
ドゴォッ!!ちゅどーーん!!
アトラちゃんのキックと爆発で塔が倒れ始めようとしたけども···、止まってしまった!?
「クーがやる。···いんぱくと!!」
ズドーーーン!!
なんと!?クーちゃんのぱんちで塔が傾きだしたぞ!?すっごい強さだなぁ〜。
さて、こっちに倒れないのはこれで確定だ。本当に塔が倒れたら大惨事なので、トドメはボクとリオでキメるよ!!
「リオ!合体変身でいくよ!」
「おうよ!せーの!!」
「「インテグレーション!!」」
今回はボクも本気なのでためらいなく変身した!では遠慮なくいかせてもらいます!!
「「スターライトキャノン!!」」
ドズーーーン!!
ボクたちの1発で塔の上半分以上が吹き飛んだ!下から上向きでぶっ放したからね!特に上部は跡形もなく消し去ってやった。
「ふぅ~、これで大丈夫かなぁ〜?」
「ああ。これでここらへんに魔獣が湧くことはないな。しかし···、古代遺跡がまだ稼働してたなんてな···」
「レオが生きてた時にもあったの?」
「少しはな。ただ、今回のようなものじゃないけどな」
「ということは、他にもありそう?」
「かもな。まぁ、見つけたら破壊でいいんじゃないか?」
「それもそうだね。じゃあ、砂浜に戻ってのんびり過ごそうか?」
「「「「おーーー!!」」」」
砂浜への帰り道の道中でも魔獣はそれなりに出没した。まぁ、孫たちが全部片付けてくれたけどね。夕食の食材にさせてもらったよ。
って、今日早朝の魔獣の自動解体がまだ完了してないんだけどね。相当余剰分があるから、またワンワン!どらいぶにアップロードしてナツのお店の足しにしてもらおう。
そして2日間、ボクたちは無人の砂浜でのんびりキャンプ生活を楽しんだよ。たまにはこういうのもいいよね〜。トラブルばっかりでウンザリしていたボクの精神は癒やされることになったんだけど···。
このエーレタニアではエレくんが神様を辞めて人になった時に創ったファイアーウォールによって『悪意のある』他世界の行き来を完全に遮断したために大規模な侵略行為が不可能になりました。
しかし、実際にはあの手この手でエーレタニアにやって来られています。今回のこの門も、直接行き来をするのではなくてエーレタニア側から招くという形で魔獣を大量に呼んでいたんですね。
ファイアーウォールという言葉を使用していたためにアキくんはセキュリティの最大リスクである『バックドア(裏口)』と表現したんですね。
本来は別の目的だったようですが、意図しない動作によってこのようなことになってしまいました。これ、実際の世界でも似たようなことってよくあるんですよ。なかなか難しいものですね。
さて次回予告ですが、アキくんたちがアウトドアでちょっとしたバカンスをしている間、一方のコピーアキくんの自宅警備の様子を2話連続でお届けします。
自宅警備が暇だったコピーアキくんは、アキくんとリオくんの家を徹底的に清掃し、補修したり町の中を巡回警備したりしますよ~。もちろん刺客もやってきます!どう退治するんでしょうかね?
それではお楽しみに~!




