7-5.翼人たちの集落にご招待〜
「貴様ら、何者だ!?なぜここにいる!?」
断崖絶壁とすぐ海という道すらない難所を飛んでいて、見つけた小さな川岸でキャンプしていたボクたち。一夜明けてテントの外を見ると···、翼の生えた獣人たちに囲まれてしまっていた!
ハルは気配で察知したようだけど、どうも敵対心はなさそうだ。もし敵対心があったら、もっと早くハルが気づくし、武器も構えるからね。
ハルの様子からだと、そこまで深刻な状況ではないみたいだ。話せばわかってくれるかな?
「ごめんなさい。ボクたちは旅をしていまして、この周辺で休めるところがなかったんです。すぐに片付けて出ていきますので、許してくれませんか?」
「···そういう事か。しかし、どうやってここまでやって来た?ここは道などないぞ?船を着けるような場所でもないのに?」
「ボクたち一行にはドラゴン族の一家も一緒なんです。乗ってきたんですよ」
「ド、ドラゴン族だと!?」
「はい。ちょっと待ってて下さいね。ツレを叩き起こしますので···」
···うん?ドラゴン族に驚いてるね?何か理由があるのかな?まぁ、そこはリオが起きたらわかるか。
ボクがテントに戻ると、ハルたちがナナたちを起こしてくれていた。もちろんリオはお寝坊さんだ。
ボクがリオを叩き起こそうとすると、
「アキじーじ。クーにまかせる」
「えっ?クーちゃん?」
クーちゃんが起こしてくれるようだ···。なにする気だ?
するとクーちゃんは···、リオの脇腹を思いっきり突いた!!
ドスッ!!
「ハグワッ!?」
うわぁ〜···。脇腹を強く突っつかれるとのけ反っちゃうよね?クーちゃんの一撃はかなり鋭かったようだわ···。
「ふー!ふー!こらー!クー!痛いじゃないかー!」
「おきないじーじがわるい」
「アンタ?クーに当たるのは筋違いよ!今日は事情があってマリオネット魔法で起こさなかったけど」
「へっ?事情ー?」
「リオ、ボクと一緒に外に出てくれる?」
「どういうことだー?」
やっと起きたリオには事情をあんまり説明せずにボクたちはテントの外に出た。
「おおっ!?本当にドラゴン族だぞ!?」
「白銀に青、それに赤に金だと!?」
「見たことのないドラゴン族だ···」
翼を持った獣人、略して翼人ってボクの中で呼ぶことにしようかな?皆さんはリオたちを見て驚いてたね。どうしてなのかな?
「あの〜?皆さんリオたちを見て驚いてますけど、どういうことなんですか?」
「オレたちも事情がわからんぞー。説明してくれるかー?」
そう言うと、翼人の中から一人前に出てきた。リーダー格の人かな?
「これは失礼した。私はルダという。わが一族は、はるか昔にドラゴン族に助けられたという歴史があるのだ」
「はー、そうなのかー」
「それ以来、この地をドラゴン族が訪れるのは我らが知る限りないのだ。よろしければ郷に来ていただけるか?」
「う〜ん···、アキー?どうするー?」
「いいんじゃない?ボクはこの人たちの郷が気になるよ。みんなもいいかな?」
「「「「おー!」」」」
「じゃー、ついていくぞー。その前に片付けさせてくれー」
「はい。では他の者たちは先に引き上げさせていただき、歓迎の準備をいたします」
というわけで、翼人の郷に行くことになったよ。せっかくだし、どんなところなのか気になるね〜!
片付けが済むと、ルダさんがこっちにやって来た。
「なんというか···。不思議なものをお持ちですね?」
「あぁ~、これは無限収納カバンと言うもので、たくさん収納できるんですよ」
「そんなものが···、いや失礼。それがあれば気軽に旅ができますな!」
「ははは···。では準備できましたので、案内をお願いできますか?」
「ええ。では飛んでいきますよ」
ボクたちはルダさんの後に続いて飛び立った。向かう方向は川の上流のようだ。
川に沿って飛行と言っても1分ぐらいで断崖絶壁になったよ。ものすごく高い位置から滝になってたんだよ。ルダさんはその滝を登るように飛んだ。それにリオたちも続くよ!
そして崖の上に出た。この時点で標高は1000mぐらいあるぞ!?めっちゃ切り立ってるなぁ〜。
崖の上は岩が多いものの、平地になっていた。いわゆる高地だね。元の世界だと一番有名なのは南米にあるギアナ高地に似てるね。行ったことないけどさ。
その高地にある湖に集落があった。どうやらここが翼人たちの集落みたいだね。
「さすがドラゴン族ですな。この高さを軽々と超えてしまわれるとは」
「もっと高いところも行けるぞー。雲の上ぐらいまでなー」
「なんと···。さすがに我々ではそこまでは···。おっと失礼。ようこそ我が集落へ。歓迎いたしますぞ」
集落の広場にリオたちは着陸した。集落の翼人たちからは歓迎の声とジロジロ見られちゃったね。ボクたちが珍しいようだ。
広場に敷物がひかれていて、そこに座ると、簡素な食事が用意された。そういえば朝食まだだったからね。
軽く食事を終えると、この集落の長さんから話を聞かせてもらった。
かつて、翼人たちはこんな辺境ではなくて今のマクス帝国付近にて暮らしていたらしい。
しかし、『自分たち以外は飛べないのに!』と言われのない差別を受けていたそうだ。それ言い出したら人族と獣人で争いが起こっちゃうよね?
どうもこのウェーバー大陸は魔獣被害がかなり少なくて安全な環境だったようだ。ボルタニア大陸では魔獣被害がひどすぎて、そんな事で言い争う余裕がなかったのとは大違いだよ。
迫害されて困ってたところに黄金のドラゴン族がふらっと現れたそうだ。ここでも金竜だね···。もしかすると先日の世界樹を救った整調者の人かな?
その金竜は『じゃあ誰もいない、いい場所があるんだが···、そこに移るか?』と聞いたそうで、その助言に従ってこの地にやって来たらしい。
以後、翼人たちはここを安住の地として暮らしているそうだ。めでたしめでたし!って事らしいよ。
「あたいのご先祖様かなぁ〜?」
「どうもそのようだね。結構この周辺で活躍してたんだね」
「次に浮遊大陸に行ったら、その話をアブルじーちゃんに聞いてみるぜ!」
アブルさんは、ミルちゃんのお父さんで浮遊大陸を守護する『ガーディアン』と呼ばれる警備隊の隊長さんだ。実質、金竜の長なんだよね。
「しかし、ドラゴン族なんて初めて見ましたぞ」
「ドラゴン族は基本的に集落で暮らしてるからなー。集落以外で過ごすのはほとんどいないんだぞー」
「では、皆さんはどうしてですか?」
「おー、集落以外で過ごしてたからなー」
「ボクの旅に付き合ってもらってるんですよ。もうかれこれ20年以上旅してますね」
「そうなんですね。そんなに長く旅をしていたらいろいろあったんじゃないですか?」
「そうなんですよ~。トラブルばかりで大変な目にあったこともありましたよ~」
「そうですか~。実は我々も少し困ったことになってましてな···。お力を貸していただければと思いまして···」
···なんかイヤな予感がするぞ?フラグが立ったか!?
「実は我らの先祖を救いしドラゴン族様が言うには、『困った時にドラゴン族が近くを通りがかったら頼みごとをしなさい』と言われてたそうでして、その伝説の通りにあなた方がお越しになったのです!どうかこの近くに住み着いたモノを退治していただけないでしょうか?」
あぁ~、そう来たか。って!その整調者の金竜さん!?ずいぶん適当なことを言ったな!?どうせだれも来ないだろうな~って思って言っただろ!?
「魔獣退治ならあたいはやるぜ!」
「おれもやるぞ!」
「クーも」
「武者修行の旅なんだから、おれもやるぜ!」
「フーも~!」
「おおっ!ありがたいですな~!」
孫たちはやる気マンマンだったよ。あのね···?何の魔獣かわからないのに安請け合いは危ないよ?それをこのあとで痛感することになっちゃうんだよ···。
ここでも金竜のドラゴン族の話が出ましたね。ウェーバー大陸で手広く活躍していたようです。しかも無責任にドラゴン族に頼れと伝えたためにトラブルに巻き込まれてしまうのでした。
さて次回予告ですが、近くに住み着いたものの退治に乗り出す事になるのですが、魔獣ではありませんでした。
いたのはこの世界の常識を根底から覆すような存在だったのです!いったい何がいたんでしょうか!?
明日は本作史上、いろんな意味で最もマズいんじゃないかなぁ〜?と思う回です。吉と出るか凶と出るか···。
それではお楽しみに〜!




