第一部:銀龍の覚醒 光の裁き(1)
“座標の震え”が収束するや否や、神殿内に澄んだ鐘の音が響いた。
それは明らかに“巫女の召喚”を意味する合図だった。
「……また、呼ばれたか」仁が眉をひそめる。
「今度はただの試練じゃ済まなそうだな」蓮の声も硬い。
ナギは無言のまま頷き、再び勇三郎たちを神殿奥の光の庭へと導いた。
光の庭には、巫女・月詠 澄音がすでに立っていた。
彼女の背後に広がるのは──
淡い光に包まれた、龍の輪郭。
その姿ははっきりとは見えない。
だが確かに“そこに在る”と知覚させる存在。
「……光龍様」
セリナが息を呑む。
澄音が静かに口を開いた。
「先ほどの“座標の干渉”……そして、銀龍の力の波動。
光龍は、それを黙して見過ごすことはできません」
「俺が……何か、してしまったんですか」勇三郎が前に出る。
「……いえ、間原勇三郎。貴方の力が“世界の法”を僅かにずらした。それだけで、世界は動きます」
ナギが一歩進み出る。
「巫女様、我が目から見ても、これは明らかに“銀の系譜”の再起です」
澄音は頷く。
「光龍様が今、あなたに“問う”ております」
その瞬間、空間に張り詰めた気配が震えた。
澄んだ声が、直接“心”に響く。
『──問う。銀の継承者よ。理を越え、因果を撹乱し、命脈に触れようとするその魂。
貴方は“今の世”に、何を望むのですか』
勇三郎は息を飲んだ。
仲間たちは静かに見守っている。
勇三郎は、ゆっくりと目を閉じ、言葉を選びながら答えた。
「……俺は、この世界で“生きたい”んです」
「守りたい人がいる。まだ見ぬ未来がある。だから……この力が、誰かを壊すものになるなら、止めてくれても構いません」
『……その言葉、確かに受け取った』
その瞬間、光の庭が淡く揺れ、龍の輪郭がわずかに明確になる。
そして、光龍の声がもう一度、響いた。
『──然れども、炎の影、国境に迫る。世界は揺れ、決断の刻が迫る』
『銀龍の子よ。今一度、裁きの座に立て。お前の魂と、その“龍”が、未来を照らす灯火となるか──我が身で見極めよう』
空間に、再び光の柱が立ち上った。
光龍の本格的な“顕現”が、いよいよ始まろうとしていた。
そしてその先に待つのは、単なる選定ではない──
銀の龍の力が、この国の未来を守る“盾”となりうるか。
迫り来る炎の国との戦火を前に、勇三郎たちが“戦力”として認められるか否か。
それが、この裁きの真の意味だった。




