第一部:銀龍の覚醒 進化への呼び声(2)
神殿の奥、小さな石室。
封主ナギは、勇三郎たちを導き、外界から隔絶されたその空間に座した。
「ここなら、外の気配は通らぬ。龍の記憶すら、届かぬ場だ」
ナギの言葉に、蓮と仁は警戒を解かぬまま、わずかに身構える。
セリナも視線を落としながら、フィーナと共に座した。
勇三郎は、テクノを腕に抱いたまま、ナギと対面した。
「光龍様は、貴方を“見放した”わけではない。だが……その力の根源は、もはや“この国”の理の外にある」
「……どういう意味ですか」
ナギは目を閉じ、一呼吸おいて語り出した。
「この世には“龍の印”を越えた力がある。
……古き時代、十の龍が世界を分かつより前、“銀の龍”は空に在りて、理を紡ぐ“礎”であった」
「……銀の龍……」
勇三郎の指先に、テクノのぬくもりがじんわりと伝わる。
「だがその力は、あまりにも特異であり、やがて“封じ”の対象となった。理由は……“制御ができぬ”こと。
万物の理に触れ、境界を揺るがせるその存在は、時に“国”を壊し、“龍”をも縛った」
仁が唾を呑む。「それってつまり……」
「銀の龍は、“存在してはならぬもの”とされた。そして、忘却された」
その場に重い沈黙が落ちる。
ナギは、静かに目を開いた。
「だが、いま再び、その“忘れられし力”が、目を覚まさんとしている」
勇三郎は、腕の中のテクノを見つめる。
テクノのまぶたが、かすかに震えた。
「……あなたに問いたい、間原勇三郎」
「問う……?」
「貴方は、その“理を越える力”と共に歩む覚悟があるか?」
ナギの声は静かだが、その奥底にあるものは問いかけではなく──審判だった。
「選びようはない。けれど──逃げるつもりもない」
勇三郎はそう応えた。
テクノが、ゆっくりと目を開けた。
『……ぼく、知ってる気がする。その人……“見たことがある”』
ナギの眉が僅かに動いた。
その瞬間、空間の気配が変わった。
石室の壁に、淡く銀の模様が浮かび上がる──それは、遺跡で見た“電子の星図”と酷似していた。
そして、声が響いた。
『──テクノ、起動認証──完了』
勇三郎とナギの眼が交差する。
目覚めの刻は、すでに始まっていた。




