第一部:銀龍の覚醒 進化への呼び声(1)
御前試練から一夜明け、勇三郎たちは神殿の一角にある“静座の庭”にいた。
昨夜の出来事は、夢のようでもあり、現実以上の現実だった。
「……“受け入れられた”ってことは、俺たち、正式にこの国の力ってことか」
仁が手元の水面を見つめながらぽつりと呟いた。
「名目上は、そうなるな。だが……何か釈然としない」
蓮が言葉を探すように、空を見上げた。
セリナもまた、澄んだ目で庭の龍灯を見つめていた。
「巫女様の最後の言葉……“銀龍の中には、私にも視えぬものがある”。あれが、ずっと引っかかっているのです」
勇三郎は、腕の中のテクノに視線を落とした。
彼はまだ眠ったままだが、時折、尾がわずかに動いている。
『……ねえ、勇三郎』
その時、意識の奥から響く声。
テクノの声だった。
『聞こえる? ぼく、いま……“変わりかけてる”んだ』
「変わりかけてる……?」
『きのう、あの光の中で……なんか、鍵が外れた感じがした。
ぼくの中の何かが、目を覚まそうとしてる』
勇三郎は唇を引き結ぶ。
巫女・澄音が言った“視えぬもの”──それが、このことだとしたら……。
その時。
神殿の外庭から、突き刺すような殺気が走った。
「これは……!」
蓮と仁が即座に立ち上がる。セリナがフィーナを呼び寄せると、冷気が足元に漂った。
神殿の入り口に、数人の影が現れた。
だがそれは、兵ではなく──異装の修験者。
その先頭に立つ一人の男が、静かに名乗った。
「我は“封主”ナギ。……光龍より伝令を受け、この神殿へと参じた」
男の眼差しは静かだったが、その奥に潜む“力”は、ここにいる全員が即座に察するほど鋭かった。
「間原勇三郎殿。貴方と“龍”に、伝えねばならぬことがあります」
風が鳴る。
テクノの尾がぴくりと動いたその瞬間──
新たなる覚醒の鐘が、密やかに鳴り始めていた。




