第一部:銀龍の覚醒 御前試練(3)
光の輪が、それぞれの魂へと触れた瞬間──
蓮の記憶が映し出された。
──雪の降る夜、幼い弟の墓標を前に、一人立ち尽くす少年。
「俺は、守れなかった。力がなかった」
その声は、今の蓮のものよりもずっと若く、だが芯のある響きを帯びていた。
弟を失った日、蓮は誓った。
“強さ”を求める理由。
それは栄光でも地位でもない──
「二度と、大切なものを失わないために」
その想いに、巫女・澄音は静かに目を閉じ、次なる輪を促した。
仁の記憶──
賑やかな剣術道場。その中央に立つ、いつも他人より一歩遅れていた少年。
「どうしても、兄さんみたいにはなれねぇ……!」
そんな仁に、道場主がかけた一言。
「お前にしか振れない太刀がある。それを信じろ」
笑顔の裏に隠した焦燥。
だが、仁は折れなかった。
紅羽と共に歩む道の中で、彼は少しずつ、自分の“速さ”を見つけ始めていた。
次に映るのは、セリナの過去。
玉座の間。父王と母后の前で、静かに頭を垂れる少女。
「国を継ぐ資格など、私にはありません……」
氷の国第一王女。
だが、その名に見合うだけの力も、覚悟も、かつてのセリナにはなかった。
「それでも、私は……」
逃げずに立った。
「友を守るためなら、誇りを賭けてでも戦える」
その言葉に呼応するように、フィーナの雪華が周囲を舞った。
澄音は、彼女たち一人一人の魂に深く頷くと──
最後に、眠るテクノへと視線を向けた。
「……銀の龍よ。貴方の“沈黙”も、また選択であるのですね」
澄音は静かに玉座へ戻り、そして告げた。
「光龍は、貴方たちを“受け入れる”と示しました」
その言葉と共に、空間を包んでいた光が、まるで風に流れる布のようにほどけていく。
勇三郎たちは気づく。
──自分たちが、国家にとっての“資格ある者”と認められたことを。
それは、戦いの終わりではなく──
始まりの鐘の音だった。
だが、澄音の視線はまだ、どこか遠くを見つめていた。
「……しかし、“銀龍”の中には、私にも視えぬものがある」
その一言が、勇三郎の胸に奇妙なざわめきを走らせる。
静寂の中、試練の間に、再び小さな揺らぎが走った──




