第一部:銀龍の覚醒 御前試練(1)
神殿奥、光の庭──
白銀の大理石が敷き詰められた回廊を、勇三郎たちは無言のまま進んでいた。
足音すら吸い込まれるような静寂。
その先にあるのは、国家の象徴──光龍の巫女が座する“裁きの座”。
「……あまりに静かすぎて、息が詰まりそうだな」仁がぽつりと呟く。
「ここは“魂の気配”だけで、言葉も空気も意味を持たなくなる場所。そう言われているわ」セリナの声も、どこか遠く感じられた。
一歩進むごとに、勇三郎の胸の奥に重さが増す。
眠るテクノの体温が、逆にその重圧を和らげてくれているようだった。
やがて辿り着いたのは、巨大な半球状の天蓋に包まれた“円環の間”。
その空間はまるで時の流れすら止まったかのように静謐で、天井からは星光のような粒子がゆっくりと降り注いでいた。
光の霧がうっすらと床を這い、その中心に──
淡い光の玉座と、それに溶け込むようにして存在していた少女の姿が浮かび上がる。
初め、彼女は像のように動かず、ただ“気配”だけがこちらに届いていた。
その衣は白ではなく、“無”を纏うような透明な布。銀糸が星のように織り込まれ、見る者の記憶の奥に触れるような輝きを放っていた。
「……よく来ましたね」
彼女──光龍の巫女は、静かに立ち上がると、勇三郎たちに向かって視線を向けた。
「間原勇三郎、蒼牙蓮、紅鷹仁、セリナ=アイスリア」
名を呼ばれた瞬間、四人の背筋が正された。
「この場は、光龍と繋がる“最奥の境域”──皆さんの魂を、そのまま晒す場所でもあります」
巫女が一歩、近づくごとに空気が震えた。
「御前試練とは、戦いや術の巧みさを問うものではありません。──“魂が、国の光となり得るか”を、見定める場です」
淡い金光が巫女の背からゆらめき、まるで巨大な龍の気配が、彼女を通してこの場を覆っていた。
『……来てるね。光龍の“視線”』
テクノが、勇三郎の腕の中で小さく呟いた。
その瞬間──
四人の周囲に、淡い光の陣が浮かび上がる。
「各々、その場にて魂を開放しなさい」
巫女の言葉とともに、空間が“沈黙”に飲み込まれていく。
勇三郎は息を吸い、目を閉じる。
意識の底に沈んでいく。
その先にあるのは──かつて見た、あの星屑のような電子模様。
そして、銀龍の、遠い呼び声だった。




