第一部:銀龍の覚醒 炎国の矢(4)
光都中央議政庁──
そこは、日頃は儀礼と政務の場としてしか機能しないはずの厳粛な空間が、今は異様な緊張感に包まれていた。
天覧試合の中断と、赤月の渓谷における炎の国影部隊との実戦──
これらは想定された戦争準備期間を大幅に前倒しする事件であり、事実上の開戦と受け取る他なかった。
「……正式な宣戦布告こそまだだが、あの動きは明白な侵攻行為。我らが動かなければ、民の命と地が危うい」
議長が重い声で語ると、周囲の老将や文官たちも一様に頷いた。
「して、その戦果の報告にある“少年たち”とは、本当に……」
「はい。光龍の神官代理として、我らが確認しております」
橘が進み出る。
「間原勇三郎、蒼牙 蓮、紅鷹 仁、セリナ=アイスリア……
彼ら四名と、それぞれの魂獣が連携し、影獣隊を殲滅し、かつ生還しております」
「しかも、禁級術に匹敵する空間転移まで……」
その言葉に、議場にざわめきが走った。
「──それを可能にしたのが、“銀龍”の魂獣……」
沈黙の中、巫女付きの側仕えが一枚の書状を差し出した。
「光龍の巫女様より、お言葉を預かっております」
文が読み上げられる。
『我が光に照らされし四つの魂、風・刃・氷・そして銀。
彼らは未だ未熟なれど、いずれ我が国の行末を導く灯火なり。
速やかに、裁きの座へ導かれよ。龍の御前にて、真価を問う』
──その瞬間、議場は騒然とした。
「……御前試練か」
「天覧試合を経ぬ者たちに、巫女様が直に御前に呼ばれるとは……前例が、ない」
橘は、深く頭を垂れながら静かに言った。
「もはや、彼らは“例外”なのです」
◆
勇三郎たちは、神殿の静謐な間でその報を受けていた。
「……“御前試練”?」仁が眉をひそめる。
「つまり、光龍の巫女と……直接、対峙するってことか」蓮が腕を組む。
「審問と選別、だね」セリナが静かに言った。
フィーナは、主の隣で緊張したように背を伸ばす。
『巫女は龍の声を受け取る器……その前に立つことは、龍に直接魂を覗かれるということ』
勇三郎は、腕の中で眠るテクノを見た。
“何も隠せない”──そんな感覚が、胸に広がっていた。
それでも。
「行こう。ここまで来たんだ。……俺たちの魂で、答えを示す」
仲間たちは頷いた。
神殿最奥──光の庭へと続く“祈りの階”が、静かに開かれていた。




