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銀龍のテクノ  作者: 銀獅子
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第一部:銀龍の覚醒 光都にて(3)

その夜、木賃宿の粗末な寝床で四人はほとんど眠ることができなかった。

小夜から託された一枚の書状。それはあまりにも細く不確かな蜘蛛の糸だったが、今の彼らにとっては何物にも代えがたい希望の光だった。明日、この蜘蛛の糸が天へと続く道となるか、あるいは無惨に断ち切られるか。その緊張が部屋の空気を重く支配していた。


翌朝、四人は誰に言われるでもなく夜明けと共に目を覚ました。

「……よし、行くか」

勇三郎の静かな声に、全員が力強く頷く。


彼らは首都の目抜き通りを、天を突くかのような巨大な光龍の神殿を目指して歩いた。荘厳な神殿が近づくにつれて、道行く人々の数も増していく。誰もが敬虔な祈りを捧げるため、あるいは光龍様の恩恵にあずかるため、この聖なる場所を目指していた。その圧倒的な信仰の熱量を肌で感じ、四人は自分たちがやろうとしていることの重大さを改めて痛感していた。


「……すごいな。村の祭りとは比べ物にならねえ」

仁が息を呑む。

「ああ。ここがこの国の中心。力の、そして信仰の源泉だ」

蓮の言葉に、全員の表情が引き締まった。


小夜に言われた通り彼らは正面の門ではなく、比較的往来の少ない東門へと向かった。だがそこもまた屈強な神殿兵によって固く守られている。その鉄兜の下の瞳は一切の感情を見せずただ門を通る者たちを機械のように判別していた。


「……俺が行く」


勇三郎は覚悟を決めると仲間たちを背に一人で門番の前に進み出た。


「お待ちください」 門番が冷たい声で制止する。


その手はすでに腰の刀の柄にかかっていた。


「我らは東の山から来た旅の者です。神殿におわす小夜様よりこの書状を神官長様にお届けするよう、言付かっております」


勇三郎は懐から小夜の書状を取り出し、震える手で差し出した。

門番は怪訝な顔で、勇三郎の汚れた身なりと書状とを交互に見比べた。


だが小夜の名前と書状に使われている紙の質が、ただの戯言ではないと判断させたらしい。


「……ここで待て」 門番はそれだけを告げると、書状を手に、門の奥へと消えていった。


残された四人を、息の詰まるような沈黙が襲う。

時間は、永遠のように長く感じられた。

仁は苛立ちを隠せず、蓮は静かに目を閉じ、セリナはただ祈るように手を組んでいた。


やがて、門が再び開いた。


先程の門番が一人の男を伴って現れる。


その男は神官の白い衣をまとってはいたが、その体つきは屈強な武人のそれであり、顔には古い刀傷が走っていた。その瞳はまるで獲物を品定めするかのように、鋭く、そして冷たく、四人の姿を捉えていた。


男は、勇三郎が差し出した書状を指先でつまむように持っている。


そして、吐き捨てるように、言った。


「……神官長様は、お忙しい。お前たちのようなどこの馬の骨とも知れぬ者たちに、割く時間はない、とのことだ」


そのあまりにも無慈悲な一言。


希望の糸が音を立てて切れかかっている。 仁が思わず一歩前に出た。


だが男は続けた。その冷たい瞳にほんのわずかな好奇の色を浮かべて。


「……だが面白い。小夜様がこれほどまでにお前たちのことを気にかけておられるとはな」


男は書状を懐にしまった。


「神官長様はお会いになれぬ。だが……お前たちのような物珍しい『お守り』を欲しがっておられる、奇特な方がこの神殿に他にもおられる」 男の、口の端が、にやり、と歪んだ。


「――ついて参れ。特別に紹介してやろう。神殿の筆頭武官長様に、な」

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