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銀龍のテクノ  作者: 銀獅子
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第一部:銀龍の覚醒 光都にて(2)

「……お願いです。少しだけその子とお話をさせてはいただけませんか?」


少女のあまりにも真剣な眼差しは、ただの子供の好奇心ではなかった。

勇三郎はこの出会いが自分たちの運命を左右する重要な「鍵」になるかもしれないと直感的に感じていた。

だが答えるよりも早く、護衛の侍である藤堂が少女の前に立ちはだかった。


「お嬢様いけません!このような素性の知れぬ者たちとこれ以上関わるのは……」

「藤堂」

少女は侍の名を静かにしかし有無を言わせぬ響きで呼んだ。

「わたくしはこの子と話がしたいのです。……それともあなたは、わたくしの言葉が聞けないと?」


その幼い容姿からは想像もできないほどの威圧感。

藤堂はぐっと言葉に詰まった。そして悔しげに顔を歪めながらも主の意思には逆らえず、一歩後ろへと下がった。


少女は勇三郎たちへと向き直ると再び深く頭を下げた。

「……申し訳ありません、お騒がせいたしました。ですがここはあまりにも人目につきすぎます。もしよろしければ近くの茶屋で少しだけお時間をいただけないでしょうか。もちろんお代はわたくしが」


そのあまりにも丁寧な申し出。

断る理由はなかった。むしろこれは千載一遇の好機かもしれなかった。

勇三郎は蓮と目で合図を交わす。蓮もまた静かに頷き返した。


案内されたのは大通りから一本入った静かな茶屋の一番奥の席だった。

藤堂は入り口に仁王立ちして周囲を警戒している。仁はそんな藤堂を面白くなさそうに睨みつけ、紅羽は主の感情を映すかのように翼をわずかに逆立てていた。


席に着くと少女は改めて深く頭を下げた。

「改めましてわたくしは小夜さよと申します。こちらは、わたくしの護衛を務める藤堂です。先程の非礼、心よりお詫び申し上げます」


「いや俺たちの方こそあんたの護衛の人を脅すような真似をしちまって……」

仁がばつが悪そうに頭を掻く。


「……小夜殿。それで俺の相棒に一体何の用だ?」

勇三郎は単刀直入に尋ねた。

小夜と名乗った少女はその大きな瞳で勇三郎の腕の中でようやく顔を出したテクノをじっと見つめた。


「……うまくは言えません。ですがわたくしにはわかるのです、魂が放つ光の色が」

「光の色?」


「はい。例えば仁様の魂は燃えるような真っ赤な光。蓮様の魂はどこまでも冷静で深い青色の光。そしてセリナ様の魂は気高く、そしてどこか悲しみを帯びた純白の光を放っておられます」


その言葉に三人は息を呑んだ。彼女は魂の本質を色として見ることができるというのか。


「ですが」と小夜は続けた。

「あなたの相棒……その銀色の子の魂の光は、そのどれとも違うのです。銀色に輝いていて虹のようにいくつもの色が混じり合っている。まるでこの世界のどの色にも染まっていない、生まれたての星の光のよう……。そしてとても懐かしい匂いがするのです」


その言葉はルナが言っていた「星の涙」という言葉と奇妙に符合していた。

この少女は一体何者なんだ?


勇三郎が言葉を失っていると小夜は懐から小さな絹の袋を取り出した。

「……わたくし実は光龍様の神殿で巫女見習いとして仕えております」


その告白に四人の間に緊張が走った。

巫女見習い。

彼らが喉から手が出るほど求めていた繋がり。


「近頃、光龍様のご神託が途絶えがちでして……。神殿の中も少し慌ただしくなっております。わたくしは巫女様のお心を少しでも安らげることができればと何か珍しいものを探しておりました。……そんな時にあなた方の腕飾りと、この銀色の子をお見かけしたのです」


小夜はそう言うと、先程買ったあの腕飾りをテーブルの上にそっと置いた。

「この石からも、その子と同じ不思議な光を感じます。……お願いです。これをお作りになったあなた方のお話を聞かせてはいただけませんか?あなた方は一体どこから来られたのですか?」


その純粋で切実な問いかけ。

勇三郎は仲間たちと顔を見合わせた。

全てを話すわけにはいかない。だがこの少女は信頼できる。そんな確信があった。


勇三郎は覚悟を決めると用意していた物語を語り始めた。

遥か東の嘆きの山脈の麓の小さな村から来たこと。村に伝わるお守りを広めるために旅をしていたこと。そして旅の途中で邪悪な魔獣に襲われ多くの荷物を失ってしまったこと。


それは嘘で塗り固められた物語だった。だがその根底には彼らが経験してきた紛れもない真実の苦しみと悲しみが込められていた。

小夜はその物語を一言も聞き漏らすまいと真剣な眼差しで静かに聞き入っていた。


全てを話し終えた時、小夜はしばらく目を閉じて何かを考えていた。

そしてやがて顔を上げると一つの決意をその瞳に宿していた。


「……わかりました。あなた方のお話を信じます」

彼女はそう言うと懐から一枚の折りたたんだ書状を取り出した。

「わたくしの力では大巫女様に直接お会いさせることはできません。ですが神殿の神官長様にならお話を取り次ぐことができるやもしれません」


彼女はその書状を勇三郎へと差し出した。

「明日、神殿の東門へお越しください。そして門番にこれを。……ですが期待はなさらないで。神官長様があなた方に会ってくださるかはわかりませんから」


それはあまりにも細くそして不確かな蜘蛛の糸。

だが今の彼らにとってそれは天から差し伸べられた唯一の希望の光だった。

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