第一部:銀龍の覚醒 敗戦の希望(1)
神殿から南の軍議殿へと場が移った。
軍議殿にはすでに、日ノ国の将たちが集まり始めていた。
その一角には橘の姿もあった。神殿と軍を繋ぐ役目として、彼は常にこうした場に同席している。
さらにその傍ら──やや不釣り合いな気配を放ちながら、海斗が腕を組んで立っていた。
「……なんでお前がここに」仁が声を潜めて問いかける。
海斗はにやりと笑った。
「言ってなかったか? 俺、一応“情報局直属の戦略補佐官”なんだよ」
「戦略……補佐官……?」
「ま、実戦主義者には煙たがられてるけどな。だけど“異常”を扱うのは俺の担当だ」
その中心に、勇三郎たち四人も“銀龍の装者”として招かれていた。
「炎の国、動いたな」
軍将の一人が地図を広げながら、北部山岳地帯への複数の侵攻ルートを指し示す。
「奇襲、ではない。だがこちらの防備が薄い“今”を狙ってきたのは明白だ」
ナギが口を開く。「彼らは銀龍の動きを察知した。つまり、“この国の鍵が回った”と見て、封を破るつもりだ」
澄音は静かに頷く。
「よって、我らは光都より先発し、北の防衛線を確立しなければなりません」
勇三郎が一歩前に出た。
「その戦、俺たちも出る」
将たちの間にどよめきが走る。
「……まだ子供だぞ」「戦場は遊び場ではない」
「なら、俺たちが“力”を見せればいい」仁が堂々と言い切った。
蓮も続く。「敵が“異常”なら、それに対応できる異常も必要だ」
セリナが静かに頭を下げる。
「そして、これはわたくし個人の願いでもあります。炎の国の台頭は、氷の国を属国と化し、わたくしの祖国を喰らおうとしている。日ノ国に協力を請う覚悟は、亡命の時から定まっております」
将の一人が、重々しくうなずいた。
「……ならばその覚悟、戦場で証明してもらおう」
その時。
外から伝令が駆け込んできた。
「急報! 北部・霜峡の砦、陥落! 敵はすでに第二防衛線に迫っています!」
場が一気に緊張に包まれる。
澄音が立ち上がり、告げた。
「選択の猶予は、もはやありません。全軍、霜峡へ向けて出立。銀装者も共に」
勇三郎たちは、視線を交わし、それぞれ静かに頷いた。
いま、戦が始まる。




