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リアルで女声で無口な僕が幻想美少女に!?~美少女Vチューバー達にヴァーチャルワールドでは愛されて困っているボクのゲーム実況録~  作者: 鮎咲亜沙
第3章 流星の想い人

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#054 『やさしさ』のバトン

 僕たちは留美さんのお母さんを救うために行動を開始した。

 向かう先は僕らの所属するヴィアラッテア芸能事務所である。


 だがそこへ向かう途中に⋯⋯。


「あ⋯⋯ここで降ろして」


 そうシオンが言い出した。

 確かにシオンはウチのVチューバーではないし、一応接近禁止という事になっているからな。


「私も出来るだけの事はしてみるよ」


 車を降りたシオンはそう言った。


「出来る事って?」

「忘れたのかい? 私はキミらよりももっと上の登録者数200万人のVチューバーなんだぜ」


 そうニヤッと笑った。


 そうか⋯⋯シオンは僕らに力を貸してくれるのか。

 そういえばここはシオンの事務所の近くだな。

 あんがい近所なのだ僕らのヴィアラッテアとシオンの所属するポラリスは。


「あの! ⋯⋯ありがとう霧島さん」

「ルーミア、君には笑顔のままでいてもらわないと困るからね」

「どういうこと?」

「ただの気まぐれのお節介さ」


 そう言ってシオンは手を振って去っていった。


「たしかにネーベルの力もあれば作戦成功率は上がるわね」

「味方になると頼もしいわねネーベルちゃんは」


 実はネーベル一人で僕たち4人分くらい稼いでいるからな⋯⋯。

 敵だと確かに手ごわいが味方だと思うと頼もしい。


「さあ行くわよ」


 こうして僕ら4人は木下さんと会う事になった。




「白血病ですって!?」


 その説明は代表して姉が行った。


「それで私たちは少しでも治療の可能性を上げるために骨髄バンクとのコラボをしたいと思ってます」

「⋯⋯」


 さすがの木下さんも絶句していた。


「⋯⋯それをあなたたちが考えたの?」

「考えたのはアリスケよ。 ⋯⋯でどう? 可能かしら、木下マネージャー」


 そう姉に言われて静かに考え込む木下さん。

 こんな真剣な表情は初めて見た。


「⋯⋯私の一存だけでは無理ね、社長に話を通さないと」

「それなら私も行きます」


 確かに社長令嬢の映子さんが口添えすれば上手くいくかもしれない。


「⋯⋯聞きにくいことだけど留美さんのお母さま⋯⋯しばらくは大丈夫なのよね?」

「はい⋯⋯お医者様が言うには半年くらいは大丈夫なはずだと」


「わかりました。 この話は上に打診してみます⋯⋯時間がかかるかもしれませんが何よりあなた達タレントの協力が必要です」

「もちろんです、私の母のためなんですから」


 留美さんだけじゃなくて僕ら全員が頷いた。

 もうすでに僕らの心は一つだった。


 こうしてすべての作業は木下さんに委ねられた。

 しばらく僕らVチューバーは何もできない、それがもどかしかった。




 その日の夜から留美さんはVチューバーとして復帰した。


『皆さんこんばんにゃー、ルーミアだよ!』


 その配信を僕は自室で聞きながら留美さんの覚悟を知った。

 たとえ親が死にそうになってもファンに対してアイドルとして振る舞うその姿勢を。


 その時僕のスマホに作戦の進捗が送られてきた。


 木下さんからの進捗報告は、このコラボ企画に社長も乗ってくれたとの事だった。

 しかもライバル企業であるはずのポラリスからも打診があったとの事だ。


 業界トップを争う2大Vチューバー事務所合同企画として話が動いていく。

 この事はどうもシオンの呼びかけでポラリス側が動いてくれた結果のようだ。


 たった一人でポラリスのような大企業を動かせるシオンにあらためて驚き、そしてそんな親友が居てくれたことに感謝だ。


 言い出しっぺの僕だったが話はもう僕の手を完全に離れて大きく膨らんでいく⋯⋯。

 あとはもう祈るだけだ。


 どうか神様、留美さんのお母さんを救ってください⋯⋯と。




 それから1週間。


 僕らVチューバーは自分たちの配信を積極的に行った。

 一人でも多くのファンを増やす為に。


 そしてついに骨髄バンクとのコラボの開催が決定し、発表可能になったのだ。


 [木下:今日の配信でコラボの開催を呼び掛けてください]


 ただそれだけのメールの文面に今日までどんな苦労があったのか、僕には想像もできない。

 だけどここからは僕たちの番だった。


 ── ※ ── ※ ──


「皆さんこんばんは、アリスです」


【こんばんはー】

【こんばんはー】

【あれスパチャできない?】


「ああ、今日の配信は告知のみなのでスパチャは受け付けておりません。 でもありがとうございます」


【告知って?】


「はい⋯⋯今夜発表するのは『骨髄バンクとのコラボ』です」


【骨髄バンク?】

【また珍しいとことコラボだな】


「しかも我がヴィアラッテアだけではなくてポラリスさんとも共同企画です!」


【共同コラボだと!】

【ポラリスとのコラボキタ──!】

【これで正式にアリスとネーベルがコラボできるのかw】


「ははっネーベルさんと同じ日に同じゲームをするのは、たまたまですよー」


【たまたま】

【3回連続ならまだたまたまだねw】


 少しだけボクは流れるコメントを見ながら息を整えた。

 ここの人たちはみんな暖かい言葉をかけてくれる人たちだ。

 きっとわかってくれる。

 こんなにも身勝手な僕らの頼み事でも⋯⋯。


「すこし真面目にお話します」


 少しだけコメントの空気が変わり始めた。


「今回のコラボを企画したのはボクです」


【え? アリスが!?】


「はい、個人的に白血病に苦しむ人を見かけて⋯⋯それで少しでも力になれたらと思って始めました」


 コメント欄はボクの話を聞いてくれている。


「今のボクには骨髄バンクに登録することができません、でも出来るようになったら必ず登録します。 そしていつか誰かを救う事を皆さんに約束します。 だから今は⋯⋯先に皆様の『やさしさ』をお借りしたいのです」


 そして息を吸って最後まで言い切る。


「皆様にお願いします、生命(いのち)のバトンを持つ勇気と優しさを見せてください。 ココが本当に〝やさしい世界〟だってことを証明して欲しいのです、どうかお願いします!」


 自分の声がコンプレックスだった僕はこの世界のやさしさに救われた。

 でもそのやさしさはヴァーチャルの中だけなのか?


 違う!

 信じさせて欲しい!

 この『世界』はもっと優しいんだって事を!






【明日行ってくる】


 そのたった一行のコメントが流れるまでがとても長く感じた。


【ついに自宅を出る時が来たようだな】

【そういえば職場の近くに登録センターあったなあ】


 たくさんのコメントが流れてくる。

 どれも好意的な言葉ばかりだった。


「えっと⋯⋯ありがとうございます。 でもコラボグッズの配布は来月からなので」


【グッズってなに?】


「えーと、他のVチューバーの方のはそれぞれ発表してもらうわけですが、ボクのは⋯⋯歌です」


【歌?】


「はい先日レコーディングしました『ラブソングを求めて』の完全版です。 これもコラボになるのかな? エミックス様との」


【あの歌の完全版キタ──!】

【1コーラス分だけだったからな】


「はい、ボクとしてもようやくやれたという満足感です。 こちらを骨髄バンク登録者様に無料ダウンロード用のコードを配布させていただきます」


 こうしてボクの告知は上手くいったのだ。


 この中から本当に何人登録してくれるのかはわからないが何人かは居るだろう。

 願わくばその中に留美さんのお母さんを助けられるバトンの持ち主が居ることを祈るばかりだった。


 そして⋯⋯。


【それにしてもアリスって未成年だったのか】


 ⋯⋯ん? なんでバレた?

 ああそうか、骨髄バンクに登録できないって言ったからか⋯⋯。


「えーと実はボク⋯⋯人間になりたい系のオートマタという設定でして⋯⋯」


【www言い訳乙】

【雑設定が追加されたw】

【俺数年後白血病になったらアリスちゃんの骨髄貰うんだ】

【そっかそれなら安心だなw】


「はい⋯⋯将来誰かが困ったときは、今度はボクが助ける番です」


 ⋯⋯本当に最高の場所だ、この世界は。

 このやさしいこの世界に来れてボクは良かった。


 この後30分置きくらいに姉さんたちもこのコラボの告知をしたが、全て好評に終わるのだった。

 ⋯⋯あとはこのやさしさが、留美さんのお母さんに届きますように。


 そう⋯⋯祈った。

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銀色の魔法はやさしい世界でできている~このやさしい世界で最後の魔女と素敵な仲間たちの夢見る物語~
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