↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リアルで女声で無口な僕が幻想美少女に!?~美少女Vチューバー達にヴァーチャルワールドでは愛されて困っているボクのゲーム実況録~  作者: 鮎咲亜沙
第3章 流星の想い人

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

49/335

#046 燃え尽きた流星

 その日は突然やってきた。


 私とアリスケ君がボイスレッスンの為に事務所に来ていた時に『彼女』は現れた。

 彼女の名は霧島紫音。

 かつて私がVチューバーデビューするときに参考にした、大先輩のVチューバー『ネーベル・ラ・グリム・紫音』の正体だった。


 私が彼女を研究対象にした理由は単にVチューバーでもっとも再生回数の多い人、という理由だけだった。

 しかし⋯⋯。


「楽しそう」


 そう思わせるパワーを彼女の配信から感じ取ったのだった。


 私の夢は声優だ。

 しかしその時の私はVチューバーという寄り道をすることに、やや不満を感じていた。


 だけどVチューバーとしてファンと語り合うネーベルの姿は、ラジオに出演している声優のようにも思えた。

 もしも私が声優になれたら自分のラジオ番組も持ちたいとは思っていたからだ。


 そう思ってから私は真剣にネーベル様(・)の動画を研究するようになったのだ。

 自分が楽しみ、人を楽しませるその姿を⋯⋯。


 ネーベル・ラ・グリム・紫音は私が始めてチャンネル登録したVチューバーになったのだ。


 私が当初中二病キャラとしてやっていこうと思ったのは、そんなネーベルリスペクトがあったからかもしれない。

 ⋯⋯まあすぐにメッキは剥がれたけど。

 でも今では自分らしい自分になれたような気がする。


 そんな私がVチューバーとして短期間のうちに成功を収めた恩人は紛れもなくネーベル様だ。

 ⋯⋯でも、その彼女が目の前に現れて⋯⋯私は──。




「あのネーベルがシオン君だったなんて!」

「そうなんだ⋯⋯」


 私とアリスケ君の事務所からの帰り道。

 アリスケ君は興奮気味にそう語っていた。


 確かに驚くだろう、かつての親友が同じVチューバーになってて再会したなんて。

 しかも男だと思っていたのに女だった事実を知れば⋯⋯。


 霧島さんの身長はざっと見たところ150センチくらいかな?

 仮に小学生の時からまったく伸びていないのならその頃は高身長の部類だったに違いない。

 しかも髪は短くずっとズボンだったらしいから、男と勘違いしてもおかしくはないか?


 そんな親友と再会したアリスケ君は大喜びだった。

 しかしそれは私には少しだけ⋯⋯ショックだった。


 今朝、事務所へ行くときはほとんど無言だったアリスケ君が帰り道では、人目も気にせず声を出していたからだ。

 そういう存在なのだ、アリスケ君にとっての『霧島紫音』は⋯⋯。


 霧島紫音は私の尊敬するVチューバーのネーベル様で⋯⋯。

 だけどこの日から私にとって霧島さんは──。




 なにか悶々とした週末を終えて私は学校に来た。

 授業は真面目に受ける、学費を出してくれる母に感謝しているから。

 そんないつもの日常のありふれた日になる⋯⋯はずだった。




「芹沢さん! お願い! 試合に出て!」

「⋯⋯試合ってバスケの?」

「うん」


 彼女はクラスメートのバスケ部だ。

 私が中学までバスケをしていたことを知っている。


「私はバスケ辞めたの。 だから部活はしないの」


 こういうことはきっぱりと言わないと。


「バスケ部に入ってくれるならそれが一番だけど⋯⋯今週末の試合だけでいいの! お願い!」

「なんでよ?」


 とりあえず私は事情だけ聞かされることになった。

 いや⋯⋯聞く気は無かったんだけど彼女が勝手にしゃべるから⋯⋯。


「3年のキャプテンが怪我して4人になったからって⋯⋯」


 私はバスケに未練がない。

 中学でやりきって燃え尽きた流星だった。

 だからこの高校を選んだのだ、バスケ部が大して強くないこの高校を。


 まあ今は燃え尽きた元自宅のアパートから一番近かった、というのもあったけど⋯⋯。


 今年のバスケ部は3年生のキャプテンが1人で、2年生が1人という廃部寸前だったらしい。

 そこに新入生で私のクラスメートのこの子⋯⋯桜田さんと、他のクラスの2名が加わってやっと5人になったらしい。


 この新1年生の3人は全員中学での経験者で、それなりの実力者だったようだ。

 わりと気楽に入ったバスケ部だったらしいが先輩たちとの関係も良好で、いい雰囲気の部活らしい。


 それでいざ試合となったら⋯⋯勝ち進んでしまったとのこと。

 今ではダークホースとして決勝リーグにまで勝ち進んだとか。


 決勝リーグでは優勝と準優勝の2チームが全国へ行けるらしい。

 そして3年のキャプテンは全国へ行くことが夢だったらしい。


 そして決勝リーグでわが校のチームは初戦を勝利で飾った。

 次の試合では優勝候補の筆頭の全国でも強いチームだったため負けたらしい。


 これがただ負けたならいいのだがキャプテンが負傷して、今週末の最終決戦の2位決定戦に出場できないという。


「それでその試合だけでも私に出てほしいと?」

「うん⋯⋯だめかな? 選手登録までしてある人、芹沢さんだけなの。 今からじゃ他に探しても間に合わないし⋯⋯」


 そういや春先の部活勧誘の時に「幽霊部員でいいから登録だけでもして」って言われてしてたっけ⋯⋯。


 ちょっとだけ悩む。

 なかなかおいしいシチュエーションだな⋯⋯と思ったからだ。

 けどそんな動機で私のような部外者が参加するのは不純な気がした。


「ブランクあるし、もう私は以前のようには動けないから」


 そういってやんわり断ることにした。

 それがいいとその時は思った。


 それは彼女たちの物語で、私の物語じゃないと思ったから。


「気が向いたらお願いね、芹沢さん!」

「⋯⋯うん、気が向いたらね」


 彼女はやっと折れてくれて⋯⋯私は解放された。

 今日は休み時間ごとに熱心に勧誘されて大変だった。

 でもこれで私は元の日々に戻れるのだ。


 だけどその日の帰りに──。

 なぜか私は体育館を覗いてしまったのだ。


「ほらみんな! 声を出して!」


 練習している4人のそばで立ってるだけの人⋯⋯あれが3年生のキャプテンなのだろう。

 それ以外の4人は真剣に練習していた。


 諦めていないのだ彼女たちは。

 バスケのルール的には試合開始時に5人いれば途中で4人以下になっても試合ができる。

 おそらくこのキャプテンは何が何でも試合に出る気なのだろう。


「私には関係ないし⋯⋯」


 私は罪悪感を感じながら見つからないうちにその場を後にした。


 今日はレッスンの無い日だ。

 だから早めに家に帰る事ができた。


 そう家だ、ここは私の。

 わがままな姉と自由な同居人と⋯⋯気になる男の子が一緒に住んでいる。

 最近私は自然にこの家に居られるようになった。


 ちょっと前までは格好に気を付けていたんだけど⋯⋯すっかり緩んでしまった。


「おかえり留美さん」

「ただいまアリスケ君」


 こういうやり取りもすっかり慣れてしまった。

 そんなアリスケ君は私に背を向けて夕飯の準備に取り掛かっている、これも見慣れた光景だった。


 正直女ばかりのこの家に男の子が居るのは不安があったけど⋯⋯今では誰よりもこの家に居ないといけない重要人物になっている、アリスケ君は。

 彼が居なければ私たちの生活水準は悲惨になっていただろう。


 男であるアリスケ君にそういった生活を支えられることに思うところはあるけど⋯⋯彼の料理が美味しすぎて、もう駄目だった。


「手伝うよ」

「ありがと留美さん」


 二人でキッチンに立つ、こういうのも楽しみを感じる。


「今日さ授業が終わってスマホみたら、シオンからラインが20件も来ててさ」

「へー、そうなんだ」

「あいつ昼間僕が学生なのを忘れてるよな絶対」

「そうね⋯⋯彼女は専業Vチューバーだもんね」


 なぜが心がチクリと痛んだ。


 アリスケ君が真樹奈さんや映子さんの話題をしていても何も感じないのに、霧島さんの事を話していると⋯⋯苦しい。

 なんでだろ?


「今日聞こえたんだけど、留美さんバスケするの?」

「え?」


 こう見えてアリスケ君はクラスでの存在感は皆無なんだけど、よく周りを観察して見ている人だ。


「いや、しないよ私は」

「そっか⋯⋯ちょっと残念、見たかったな留美さんのバスケしているところ」


「⋯⋯見たいのアリスケ君、私がバスケしているところ?」

「体育でやっているところは何度か見たけど、ちゃんとした試合じゃないし」

「まあお遊びみたいなもんだからね、授業のは」


 勝ち負けにこだわらなくていいからね、授業では。


「留美さんのシュートがかっこよくて、よく見てたんだ」

「そうなんだ」


 ドクンドクン⋯⋯。

 心臓が高鳴る。

 カッコいい? 私が?




 その日の夜、私は⋯⋯。


 監督に1週間だけレッスンを休むと伝えた。

 そして桜田さんに⋯⋯今日無理に交換したラインの連絡先にこう返事をした。


 [芹沢留美:試合までの1週間だけなら]


 送信してから私は何やってんだろうと思った。

 けど⋯⋯。


 どうしても見せたくなったのだから仕方ない。

 私がバスケをする姿をアリスケ君に!


 その想いがどこから来るのか、この時の私は知らなかった。

お読みいただき、ありがとうございます。

続きを読みたいという方はブックマークの登録を、

面白いと思って頂けたなら、↓の☆を1~5つけてください。

あなたの応援を、よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鮎咲亜沙の作品リンク
銀色の魔法はやさしい世界でできている~このやさしい世界で最後の魔女と素敵な仲間たちの夢見る物語~
こちらも応援よろしくお願いいたします。
感想もいただけると嬉しいです。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。